すみません、感動が深すぎて、ちゃんとしたレビューに多分なりません。
また改めて書くかも知れません。
この小説は、創作の世界に足を踏み入れた私に、非常に重要な教え、ちがう、最大級の財産、そうじゃない、創作とは何か?という問いに対するひとつの大きな回答をもたらしてくれた作品となりました。なぜ物語を紡ぎたいのか?
この作品を通じて私が常に感じ続けていたのは「登場人物たちへの作者のまなざし」、その暖かさと愛情です。これは私の小説に完全に欠けていたものであり、或いは、私の人生そのものに欠けていた要素だったかも知れない、なんてオーバーなことを考えたりもしました。
この作中に登場する少年たちと少女は、みんな個性的で、未完成で、魅力のあるキャラクターです。「月の王」が公園でヒロトの頭を撫でますが、私はそこに作者の手と、愛情とを感じずにはいられません。
その作者の興味と愛情は、青春や友情のアンチテーゼとして登場した筈の、ヤクザの「黒澤」さんや、その使いっ走りの舎弟「木崎」にまで及びます。すごくないですか?
愛情を以って大切に描かれているから、その運命の残酷さと荒々しさが、読者の胸に迫ってくるのだと思います。
「だけど僕たちはお前のためにスピードを落としてやるつもりはない。全速力でこの人生を駆け抜ける。」
「だから、ついて来いよ。一緒に走ろうぜ。」
カッコよかったです。
そして、全編を通じて、少年たちの未完成さが醸し出す魅力、とでも言うべきものを強く感じました。
誤解を怖れずに言うと「かわいい」という印象です。ものすごく、です。
こういうの、今まで見たことも読んだこともありません。
ホント凄まじいほどの魅力で、ニヤニヤしながら読んでました。
ウソです、ウットリ、が本当です。
あらすじを読んだ時点で、確信致しました。絶対に面白いと。
そして読みました。予感の通りでした。
RPGみたく、姫と、戦士と、武闘家と、魔法使いと、盗賊。
それぞれのキャラクターが、本当に個性的なのです。
それもただテンプレをなぞっただけのような「個性」ではなくて、その人がその人だとしっかり確立してある、本物の個性なのです。見ていて飽きなくて、ずっとこの人達の姿を見ていたいなと思う程。
そんな姫と騎士団が織りなす物語。面白くないわけがありません。
でもこの騎士団。
本物の騎士団にあるような、いわゆる騎士道精神みたいなものが備わった「THE・光の人」みたいなのはおりません。皆、どこかしらアウトローです。
風俗嬢の息子、ヤ○ザの息子、中国人、キラキラネーム。
団員は、社会や世間が言う「はぐれ者」ばかり。
でも…はぐれ者?上等だ!
だからこそ、姫と騎士団が巡り会えたし、姫を守る騎士団が結成されたのだと思います。それにはみだし者じゃなきゃ、この格好良さは表せられないでしょう!
騎士団は言わずもがな、月の姫も負けずに良い味を出してます…!
姫がいなかったら、何一つ始まらなかった。生まれなかった。
個人的な意見になりますが、姫大好きです。
中二病?上等だ!
だって、だって、こんなにも格好いいのだから!!!
痺れる程格好いいんです。皆。
青臭いとか泥臭いとか、大人の目に映るかもしれません。
でも、本当に格好いい。
子どもの純粋さと、大人の狡猾さ。中間にいるからこそ、両方を併せ持っている中学生達。格好いい。もう、馬鹿みたいに格好いいしか言えなくなります。
小学生だと少し違う、高校生でも、やっぱり違う。
この小説は、中学生だからこそより栄えて、輝いたのではないかと思います。
子どもと大人の中間地点である中学生。その「中学生でなければならない」魅力を、この小説は描いています。
アウトローとはいえ、やはり中学生。思春期なんていう輩が存在します。
皆それぞれ何かしらを抱えている。けれどそれを乗り越え、成長する。
これが等身大で描かれているので、伝わってくるし刺さるのですよ。
で、です。あらすじを読んだ時点で、なんとなく予想していました。きっとこれは、最後泣くのだろうなと。実際にそうでした。
ラスト。構えていたのに、涙が滲みました。胸がじんと染み、心臓が震えました。
ここまで皆の物語を追っていただけに、尚更でした。
ああ続編が読みたい。前日談でもいいし後日談でもいい、また会いたい。
見ていて全然飽きない姫と騎士団。アウトギリギリのラインを責めちゃうことに対するハラハラさ。一人一人が成長していく熱さ。絆。感動。
これだけ言っておきます。読みましょう。
読めば私の言いたいことが伝わるはずです。
さあ、読みましょう!読まなければ損です!これは本当に損します!
一度読めば、どっぷり浸かります。
読む際は、その点だけに、ご注意下さい。
「この国には何でもある。だが、『希望』だけがない。」
って昔読んだ小説にあった。
僕たちはいまいる場所で、躍起になっている。希望がないからだ。
では希望とはなんだろう。
三年後の自分を夢見る力じゃないだろうか。
将来の夢を「高校生」と書くことじゃないだろうか。
譲れないものを発見したり、一緒に走る仲間がいるときに、出現するのではないだろうか。
好きな人ができたとき、好きな人になにかをしようと動いたときに。
希望と期待は違う。
でも、期待しよう。
叶う叶わないは関係ない。
希望はあるってことをだ。
ぐんと世界が広がる瞬間を、僕たちは求めている。
高校生では遅すぎる。小学生にはちと早い。早熟で幼い、だからこそ無敵な中学三年生たち。
希望が出現する瞬間を描く。小説の役割のひとつだと思う。
どこまでもカッコ悪くて、ただひたすらにカッコいい、5人の中学生の物語。
もうね、全部好き。何もかもが好き。
ある日突然、月の姫と名乗る少女に逆ナンされ、御徒町カグヤナイツなどという中二病まっしぐらのグループを作ってしまう展開も。普通の中学生にはないような重荷を背負った彼らの、普通の中学生らしい会話も。
何をしでかすかわからないカグヤナイツの、スリルのある日常も。ひねくれながらも全力で、今を生きる人間の強さも。
そして、一歩間違えてしまえば壊れてしまうほどに危ういバランスの彼らをまとめ上げ、これ以上ないほどに一つの物語として完成された『御徒町カグヤナイツ』が、ものすごく好き。
キレたソンくんがツボでした。あと、カトウくんの名前がすごく気になる……。
「中二病」というと、封印された右腕が疼くとか、邪気眼の覚醒がどうとか、私は風使いなんだとか、自分に特別な設定を付けて勘違いしていた黒歴史が思い出されます。過ぎ去った中二時代を揶揄する風潮もあります。それでも当時は全力で自分に後付けした設定を信じていました。「本当はそうじゃない」と知っていたからこそ。
中学生のヒロトが月の姫を名乗る少女にナンパされるところから始まる『カグヤナイツ』。とても中二的なネーミングセンス。
ヒロトを始めとするメンバーの特性をRPGの職業に当てはめて、彼らは仲間の前に立ちはだかるそれぞれの苦難を力を合わせて乗り越えようと奮闘します。
それは邪気眼を覚醒して自己陶酔するような無邪気な中二病ではありません。複雑なバックボーンやコンプレックスもあり人とは違う彼らは、若さゆえに無謀な全能感に全力で振り切った行動を取ります。屋上の扉はピッキングで開けるし、ヤクザの事務所に殴り込むし、基本的にアウトローギリギリ。文字通り命がけで、一挙手一投足に力を込めて生きています。特に、力を合わせて立ち向かってもどうにもできない事態に直面した彼らが取った行動に心を打たれました。一貫して描かれた心の成長には胸が熱くなります。とても魅力的です。
随所で描かれるそれぞれの親子の形やブルーハーツの曲名などの要素も浅原ナオトさんらしく、とても好きです。特別編や続編を期待しています。
中2から中3に上がる春休み、変な美少女に逆ナンされた。
自称「月のプリンセス」の彼女はまもなく月に還るから、
その日が来る前にカレシがほしいしデートしてみたいし、
自分を守るナイトもほしいし、とにかく楽しみたいのだ。
主人公は風俗嬢の息子で、担任は天敵。その仲間たちも、
ヤクザの息子、日本育ちの中国人、童顔キラキラネーム、
という「はぐれ者こそカッコいい」を共感できる奴らだ。
等身大に尖っていて繊細で夢見勝ちな感性が描かれていく。
自分たちをRPGのキャラクターに例えて騎士団を名乗り、
団長である戦士を筆頭に、武闘家と魔法使いと盗賊が、
特技と個性を活かして、彼らと月姫に降りかかる問題に
真正面から向き合っては、つまらない現実をぶちのめす。
あらすじだけ書くと、よくあるシンプルな青春物ですが、
浅原ナオトという感性と筆力は、やはり圧倒的な存在感。
おもしろくて、ひりひりする。みずみずしくて、熱い。
広くいろんな人に読んでもらいたい作品です。オススメ。