第二十七話「地獄への突入」
将一と瞬は近くの格納庫から新たに調達した装甲車に乗り込んで、ゾンビや化け物の流出源となっていた場所へと突入する。
何も変哲も無い道から地下へと続く通路があり、そこからトンネル内部へと下っていくようだ。
想像よりも量は少ないがゾンビはいた。
「退け!!」
薙ぎ払うように装甲車に搭載されたM2重機関銃を発砲する。
それだけでゾンビは殲滅されていく。
そうしながら奥へ、奥へと突入する。
そして――
「気色悪い化け物が道を塞いでやがる!」
『だけど引き返すわけにも行きません!! 押し通りましょう!!』
植物の化け物だ。
いや、植物の化け物の集合体の塊と言った方が良いだろう。
大量のゾンビが、トカゲが手を伸ばして喘いでいる。
その体積は広大な空間――戦車を並べて通行させる程の横幅と大型トラックを通せる程の高さを持つ通路が隙間無く埋まる程だ。
いわゆる第一関門と言う奴らしい。
「うぉおおおおおおおおおおおおお!!」
『ギエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!』
12.7mm弾が貫く度に奇声を挙げる。
だが構わずに攻撃を仕掛けてくる。
謎の液体(たぶん酸)やらツタやらを振るってくる。
瞬は巧に動かして交わすが、分が悪いと感じてか一度装甲車を後退させた。
「こいつ、追ってくる!!」
肉の塊となったゾンビをデタラメに吸収しながら通路を這って来る。
元行く道を逆走しながら銃弾を浴びせる。
弱点になりそうなところはとにかく攻撃した。
『一旦地上に出て戦いましょう!!』
「そうだな――」
そんなやり取りをしているウチに地上へと出た。
同時に植物怪獣も地上へと出る。
全体像がハッキリすると以前学生寮前で戦った奴とはもう別物だ。
頭部であるラフレシアの様な毒々しい花から尻尾の様になっている部分まで二十mぐらいはある。
それも四足歩行で移動し、身体の各所にあるツタで獲物を絡め取るのだ。
魔界の生物ですと言っても通用しそうな外観だ。
「クソ!? 本当に攻撃が通用しているのか!?」
血飛沫、謎の液体が飛び散ってはいる。
しかし元気よく活動を続けていた。
『グレネードかロケットランチャーで!!』
「そうだなっ――」
そして一旦装甲車に戻り、RPG-7を向ける。
この三日間ですっかり使い慣れた感があるのは気のせいだろう。
相手は全長20mの怪物、距離は百mも離れていない、余程のトーシロでも無い限りまず外さない。
「死ね!!」
ロケットランチャーが発車される。
着弾。
爆発で身体が大きく抉られる。
ボタボタと液体を撒き散らす。
しかしツタが損傷箇所を塞ぐように再生していく。
「次はこれだ!!」
リボルビンググレネードを乱射する。
弾種は何が入ってるかは分からない。
だが爆風で次々と穿かれていく。
だが化け物は咆哮を挙げながらツタを勢いよく装甲車に伸ばしていく。
『しまった』
装甲車がツタに絡め取られた。
動きが止まる。
慌ててツタを銃で蜂の巣にしようとするが――
「クソ!!」
ツタが将一の元まで伸びて来た。
慌てて銃座で迎撃する。
しかし数が多く、遂に絡め取られてしまう。
「またかチクショウ!!」
勢いよく空中に持ち上げられ、引き寄せられる。
そして相手のラフレシアの頭部の様な大きな口が見えた。
猛禽類だか肉食動物だがトゲトゲした円形の口中では涎を垂らしている。
そのうえ臭いと来た。
身体を動かせるのは左腕だけ。
しかも宙づり。
器用に動かしグレネードを口の中に放り込む。
数秒後、大爆発。
「グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
「クソ、放り投げやがって!! 丁寧に扱えよな!!」
放り出されて身体の節々が痛い。
それでも起き上がり銃を向けて発砲。
ゲーム知識頼りに相手のデカイ口の中を狙う。
「ちょっとアンタ!! 何やってんの!?」
「あ、梨子!?」
梨子が装甲車に乗ってやって来た。
戻って来たのだろう。
誰が運転しているかひじょうに気になるが。
銃を乱射しながら此方に駆け寄る。
「よく俺のピンチが分かったな。狙ってた?」
「広い学園内でもこんなデカイ化け物と戦ってりゃ誰でも驚くわよ!! それよりもアイツ何なの!?」
「こっちが聞きたいよ。それよりも武器貸してくれ。あのグロテスクな口の中にロケットランチャー叩き込んでやる」
「OK、とにかく口が弱点なのね。メグミ、武器を将一に渡して!!」
そう言うと装甲車のハッチが開き、メグミが武器を渡してくれた。
それもRPG-7やらリボルビンググレネードやらを慌てて押しつける様にである。
取りあえずリボルビンググレネードを拾い上げて口目掛けて発車した。
必死に口元をツタで防ぐが梨子の銃撃で切断されて言っている。
その隙を狙ってリボルビンググレネードを口の中目掛けて発射した。
「ギェアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」
身体中から液体を蒔き散らし、ボロボロと中に取り込んでミイラ化した遺体がこぼれ落ちていく。
逃げようとするが構わずに攻撃を続ける。
☆
勝利を飾った。
確かにそれは良いことだ。
にも関わらず特別校舎の昇降口前で正座させられていた。隣では瞬も正座させられている。
眼前にはメグミ、梨子、真清が立っていた。
洗いざらい色々と白状させられて今に至る。
「私達を置いて最終決戦に乗り込もうとしてたんだ。ふーん。どうしようかメグミ?」
恐い笑みを浮かべんながら梨子はメグミに尋ねる。
「えーと、その、気持ちは分からないでもないし。どうしよっか真清ちゃん?」
「この埋め合わせは後でして貰うわ。ともかく行かなきゃならないんでしょ?」
と真清は冷静に回答した。
その埋め合わせが何なのか将一としてはとても気になったが。
「ともかく最後なんだから皆で一緒に行くわよ」
と、梨子が締めくくる。
「そういや装甲車運転してたのって一体・・・・・・」
「私が」
真清が手をあげる。
「・・・・・・運転出来たの?」
「さっき(特別校舎で)救出した人に車の免許持ってる人がいたから、アクセルとブレーキのやり方教えて貰ったら出来たの」
「そ、そう・・・・・・」
それ以上将一は何も言わなかった。
「ともかくもうそろそろ正座やめていい?」
「そうね。じゃあこれで許してあげる」
そう言って梨子は将一の口元を奪った。
そのまま押し倒された。
大人のキスだ。
「ちょ、ちょっと梨子さん!?」(←メグミ)
「大胆ね」(←真清)
「はあ・・・・・・何だか一人だけ蚊帳の外で死にたくなって来ました」(←瞬)
それぞれ違った反応を見せる。
こうして5人纏めて乗り込む事になったのであった。
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