第十二話「学食ウォー」


 地下のゲートを少し降りていくとモノレールがあり、それを使用して一気に降りていく。


 道中見たが道の幅はとても広い。乗用車四台分以上の幅はある下り坂だ。 

 ゾンビや新手の生命体も何も感じない。

 モノレールが辿り着くと天井がとても高く、体育館の何倍もある幅広い陸上兵器の格納庫だった。


「すげえな……装甲車に戦車まである――だけど何で明らかに第二次大戦の戦車とかまであるんだ?」


「さあ? ここの責任者の趣味か何かじゃないでしょうか?」


 最新鋭兵器と第二次大戦頃の兵器は明らかにシルエットが違うので見分けるのは容易だった。

 とにかくズラリとありとあらゆる陸上兵器が綺麗に並んでおり、自衛隊の兵器まで置いてあった。

 他にも軍用の工作車両やら何やら――責任者は何を考えてるのだろう。


「凄いなこいつは――」


「ええ。まさかこれ程の規模とは――」


「車運転出来る?」


「勿論ですよ。ヘリからセスナまで行けます。戦車はちょっと自信無いですが何とかなるでしょう」


「そうか、じゃ問題はどれにするかだな――」


 何しろ種類があり過ぎる。

 どれを選べばいいのか分からない。


「言っときますが、戦車で学園を覆っている壁を破壊何て事は考えないで下さいね」


「あ、その手が……え? ああ、ダメなの?」


「最終手段です。念の為、真田先生に相談した方が良いでしょう。強引に破壊して何らかの警備システムが作動して何て事になったら大変ですから」


「確かに……無人兵器とかわんさか出て来そうだよな。分かった。本当に最終手段だなそれは」


 となると戦車は除外すべきかとも考えたが、リザードやあの植物人の様な化け物がまだいる可能性を考えると戦車の破壊力は有効に考えられる。

 だが戦車は最低でも3人ぐらいで操縦するのを前提にしており、その辺り大変そうだとも思う。

 それにあんまりやたらめったら建造物を破壊する訳にも行かない。

 まだ生存者がいる可能性を考えると建物の壁を貫通する50口径弾を乱射するのも危ないのだ。


「無難にここは装甲車辺りを選びましょう」


「装甲車か……んじゃあこれはどうだ?」


 指指した方には黒塗りの八輪装甲車があった。

 座席は車体右側にあってガラス張り、銃座が搭載されていて、後部にアンテナらしき物まである。


「自衛隊の装甲車ですね。正式名称は96式装甲装輪車」


「これが? 自衛隊カラーじゃないのはミーミル仕様ってところか?」


「でしょうね。ミーミルは様々な場所に勢力を広げています。今回の事件もミーミルの一勢力が世界中で同時多発的に引き起こしたとしか……」


(確かに世界規模での同時にゾンビのウイルスが漏れ出したなんて聞いた事も無いしな……いや、待てよ)


 そう言えばこの事件の核心については後回しにしていた事に気付く。

 ゾンビになる原因は昨今のゲームでも様々で古典的なのがウイルス、最近は寄生虫とかもある。

 植物人の時、瞬は「ウイルスを過剰に摂取して~」とか言っていたが、その辺り急に気になり始めた。


「今いるゾンビってミーミルが何かしらの形でウイルスを流出させたのが問題なのか?」


「え? 突然どうしたんですか?」


「いや急に気になり始めたんで……」


「まあいいでしょう。実はと言うと事情は良く分からないんです。組織でも末端の方でしたし、何年も掛けて慎重に調査を進めていました。ただ何らかのウイルス兵器を開発していたのは間違いありませんが……まさかあんな物だったとは想像もつきませんでした」


「……俺達が目にしたゾンビやあの植物の事か?」


「そうですが、どうも気になります。同じウイルスの感染者を襲ったりするでしょうか?」


「確かにな――」


 トカゲや植物人もそうだった。

 だがゾンビ同士が食べ合ったり、他の生態兵器を襲ったりしたのは見た事がない。


「そして貴方が話した南 静香さんの事も気になります――」


「……支配能力はゾンビだけでなく生態兵器にまで及んでいたしな。今思うと分からん事だらけだな――」


「真相は闇の中になるのでしょうかね――」


「まあ、確かに真相暴いたところで状況が好転するとは思えんしな――ところで装甲車で何処に行く?」


「そうですね。まだ時間はあります。学生寮とかを見て回りましょう。まだ生存者がいるかも知れません」


「了解――」


 こうして生存者を探しがスタートした。

 木下や武装勢力の反省点を活かして、カードキーを使い、一旦格納庫への道を閉じて置く。

 奪われて暴れ回れでもされたら収集がつかなくなる。   


「なあ次の目的地だけどさ――」


「うん?」


 運転席の隣の座席に座り、瞬に対して目的地の行き先を告げる。


「食堂か武道館にしてくれないか?」


「どうしてですか?」


「武装勢力や木下とカタを付ける」


「場所に心当たりが?」


「木下はともかく武装勢力はな――武装勢力は体育館の西側から現れた。その先に立て籠もれそうな施設は食堂か武道館ぐらいしかない」


「私としては学生寮の現状確認をしたいんですが」


「――どうする? 二手に別れるか?」


「いえ、付いて行きましょう」


「悪いな――真田先生には?」


「真田先生と合流すると生存者とのイザコザで後手に回ってしまう可能性があります。ここはある程度独断で行動した方がいいでしょう」


「そうか」


 こうして装甲車を走らせた。

 車内の中ではあるが外を自由に動き回れると言うのは気持ちいい物だと思った。

 荷物も楽に運べるのも大きい。


「ゾンビを引き飛ばすと運転に支障が出ますから出来うる限り避ける方向で行きますよ」


「了解」


 ゾンビの数も少なく静かな物だった。

 体育館北側のの傍を横切り、そして回り込んで食堂から離れた所に停車させる。


「相手はロケットランチャーで武装している可能性がありますから此処から徒歩で行きましょう」


「了解――」


 体育館のさらに西側にある比良坂学園の食堂は巨大なレストランみたいな規模だ。

 昼時になれば人込みでごった返す事になる。


「ゾンビが倒れていますね――」


 木々の茂みに隠れながらスコープを除きながら周辺を偵察する。

 勿論周囲の状況確認を忘れない。


「こっちも見えた――玄関前はシャッターを降ろしてるな――」


「裏口の搬入口からでしょうか?」


 大規模な食堂ともなれば運び込む食材の量もそれ相応の規模となる。

 食材を積んだトラックを丸ごと、直接食堂へと搬入する為の裏口がある筈だ。

 後ろへと回る。


 その道中でゾンビの亡骸を目にした。


「頭部が射抜かれていますね。胴体にも数発――」


「試し撃ちしたんだろう。弾薬はタップリと持ち出してあったからな。それにしても下手くそにも程があるな。胴体がハチの巣状態の奴が何体もいるぞ?」


「正直言いますと将一さんの腕が異常なんですよ」


「え? 俺ってそんなおかしい?」


「ええ」


 そうかな? と思いつつ食堂へと向かう。

 やがて木の茂みに隠れながら 食堂の搬入口に視界を収められる場所にまで来た。食堂の職員様の裏口とトラックとその積み荷を降ろすための搬入口が見える。

 そこでは見張りらしい二人の男子生徒が二人程談笑している。制服も着崩してアクセサリーを身に着けている。手にはゴツイ銃を持っていた。仕事熱心と言う感じではない。


「見張りか?」


「落第点ですね。ペットの犬の方が役に立ちますよ」


 酷い言われようだ。

 だが瞬が言うのだからそうなのだろうと将一は思った。


「で? どうする?」


「取り合えず私が接触してみましょう」


「大丈夫か?」


「これでも馴れてますから」


 そう言って手持ちの武器のXM-8アサルトライフルを預けて来た。

 床に黒のベストを落とし、リュックサックも降ろす。

 完全に丸腰に近い状態になった。


「あの、お二方、少々よろしいですか?」


「何だお前?」


「ここは立ち入り禁止だ」


「え~とそれはどう言う理由でしょうか?」


「テメェこれは玩具じゃねえんだ。本物の銃なんだぜ? それにゾンビも一体や二体じゃない。普通の人間も殺してる」


「そ、それはどう言う事でしょうか?」


 銃口を突き付ける様に脅すが瞬は悪魔で偶然立ち寄った一般人のフリをしている。

 第三者から見れば、瞬に対して不自然な点は思い浮かぶが二人は気付いてない様子だった。


「ギャーギャーやかましい食堂のババアがいたんだ。運転手もいた。皆で助け合おうとか良い子ぶっている奴もいたな」


「それを殺したと?」


「ああ。今は力ある奴が法だ。だから何をしても許される。昨日は女とハメまくって楽しいパーティーをしたよ」


(清々しい程の屑だなこいつら――)


 ご丁寧に大声で自慢げに話すもんだから将一の耳にも届く。鉛球をぶち込んでも罪悪感は沸かなそうだと笑みを零した。


「だがもっと俺達は力がいる。銃も、食料も、人数もだ。お前も来るか? 下っ端の席なら空いてるぜ?」


「悪いですが、私達は校舎や体育館でどうにか立て籠もっているグループに所属していまして――」


 二人は顔を見合わせた後、笑い始めた。


「運がいいな兄ちゃん。今俺達の仲間がそちらに向かっている」


 将一の顔が青冷めてる。


「何が目的ですか」


「食料とか女とか――まあ幾ら生存者がいても銃でビビラせりゃ黙って従うだろう。まあ逆らったら殺すがな――」


「私をどうするつもりで?」


「どうすると思う?」


 そう言って二人は銃口を向けた。

 そして乾いた音が鳴り響く。

 胴体から赤い鮮血が流れ出た。


「い、いてぇえええええええええ!!」


「な、なんだ!!」


「選手交代だ。瞬、装備を整えてこい」


 銃を構えた将一が現れる。


「おやおや、私だけでも大丈夫でしたのに?」


「俺も、ちょっとこいつらに聞きたい事があってな」


「分かりました」


 瞬は装備を取りに戻っていく。

 代わりに倒れ伏した二人に銃口を向ける。

 両者とも軍用の5.56mm弾を胴体に三発受けたのだ。運が良くても止血しなければ長くは持たないだろう。


「テメェら、南 静香って名前に聞き覚えは?」


「ウルセェ、早く救急――ぐほぉ!?」


 傷を抉るように思いっきり腹を踏んづける。


「救急車は呼んでもこねえよ。それよりも南 静香って名前に心当たりは?」


「あ、ああ、あの女か――まだ生きてるのか? へへへへ、暗くてブサイクな女なのに男を選り好みしやがって。抱いてやってのをぐほぉ!!」


 将一は無言でもう一発思いっきり踏んづける。


「テメェ何なんだ!? 正気か? 俺達にケンカを売るつもりか!?」


 もう片方が喚き散らす。


「お前達のリーダーの名は?」


「だ、誰が言うもんか――」


「そうかい」


 もう一発踏み付ける。


「ぎゃあああああああああああああああ!! わ、わかったや、やめろ!! いてぇいてぇええええええ!!」


「そんだけ叫ぶ元気がありゃまだ大丈夫そうだな――」


 そこでドアが開かれる。

 金髪で顔の肌を焼いた、アクセサリーを身に着け捲ったケバケバシイ女生徒だ。

 手には銃を持っている。


「な、なによこれ――」


「お前もこいつ達の仲間か?」


「あんた何なの!?」


「質問に答えろ」


「グホォ!」


 相手を踏み付けながらアサルトライフルの銃口を向ける。


「ちょっと待って。女の私に銃を向けるつもり? 冗談でしょ?」


「助けてくれミヨ! こいつ頭がイカれてやがる!」


「成程ね――仲間か」


「わ、私関係ないもん! ミヨは悪くない! ただ従わなきゃ、昴に殺されてたもん!」


「昴――そいつがお前達のリーダーか」


「そ、そうよ! こんな事してタダじゃすまないわ! 貴方も昴に殺されるわよ!!」


 とは言われるが将一は微塵も恐怖が沸かなかった。

 数々の修羅場、木下や南 静香との本気の殺し合い、トカゲや植物人との戦い。

 今更銃火器で武装したチンピラが出張ったところで恐くない。

 どちらかと言うと、瞬や真田先生、あとアンナとかが敵に回る事の方が恐ろしいぐらいだ。


「で? この食堂にいるのはお前達3人だけか?」 


「え?」


「質問に答えろ!」


 アサルトライフルを置いて、ショットガンを上空に向けて発砲する。

 勿論当たらない。何しろ脅しの為だ。


「な、中に二人、二人よ!! ねえ、これでいいでしょ!?」


 これが効いたのかスグに答えてくれた。


「本当だな!?」


「嘘は付いてないわ! 二手に別れて行動してる!」


「んじゃあそこをどけ――」


「ちょ、ちょっとどうする気?」


「自分の頭で考えてみな」


「右です!!」


 瞬の声がした。すると右方向、食料の搬入口から現れたのだろう、武装した生徒が現れた。手持ち武器はアサルトライフルだ。


「ちっ!!」


 出鱈目に発射してくる。

 流れ弾で地面に倒れていた味方に止めの一撃が入ったが特に気にする事はなかった。

 遮蔽物がある木々に向かう途中に何回かショットガンを発射した。 

 更にケバい女生徒が現れた食堂の裏口から更に一名現れ、女生徒は中に退避する。


「どうする?」


 身を屈めながら将一は瞬に合流する。

 瞬は特に撃ち返さず、相手の様子を観察している様子だった。 


「トリガーハッピーになって銃を乱射していますね」


「言ってる場合か。ゾンビがやって来るぞ」


 アイドルのコンサート顔負けの大音量が鳴り響いたのだ。

 待っていればここもゾンビだらけになる。 


「その前にケリを付けましょう」



 弾が尽きたのもあって三人は一旦退却した。


「クソ、クソ!! どうなってやがる!!」


 心堂 昴に居残りを命じられ、その鬱憤を拘束した女相手にぶつけるつもりだった。

 遊び相手の激しくレイプされた女達は先程まで皆一言も言葉を発さなかったが今は異常を感じ取って口々に小声で話し合っている。

 中にはまだ瞳をキツく睨みつけている女の子もいた。


「お、落ち着け! パニックになるな!」


「これが落ち着いてられるか!? 何なんだあいつら!? 殺された!! タツヤとリュウヤが殺されたんたぞ!?」


「そうよ!! あいつら私に銃をぶっ放したのよ! 放置すれば殺されるわ!!」


 残った三人はパニック状態だった。

 先程の銃声でゾンビがやって来ているし、謎の襲撃者が本気で殺しに来ている。

 それらの事実がマトモな思考を奪い去っていた。


「誰か心堂さんに伝えに行ってこい!!」


「誰が行くのよ!?」


「いっそここから逃げようぜ! このままいたら殺されちまう!!」


 中々話が纏まらない。

 その時、食堂の玄関の窓ガラスが破られる。

 そこから降り注がれた銃弾のシャワーで一人が死んだ。


「いやあああああああああああああ!! もういやああああああああああああああ!!」


「クソ!! ケンジまで!! こうなったら自棄だ!! 殺してやる!! 殺してやる!!」


 食堂の玄関口目掛けて銃をフルオートで乱射する。

 囚われの身となっている女の子達も悲鳴を挙げていた。

 物凄い大音量が鳴り響いたがやがて弾も付き、ゼエゼエと肩で息をする。


「ギャアアアア!!」


 しかし予想外の方向から放たれた銃弾が男の肩を射抜いた。

 続いて腕を射抜き、足を射抜く。


「正直サバゲーマーの方が手強かったですね」


 サイレンサーの拳銃を向けながら呟く瞬。

 表情は相変わらず笑みの状態を保っている。


「終わったか~?」


「ええ、終わりました。ちょっと刺激が強い光景が広がってますんでその辺覚悟しといてください」


「刺激?」


「ここで連中何してたか忘れたんですか?」


「ああ、そっちの意味か。了解。何か着るもんでも探してみる。瞬は装甲車の方に戻って来れ」


「分かりました。あと一人生き残りがいるんで気をつけて」


「了解」と返して将一はぶち破ったガラスの窓から中へと這いずる様に侵入する。

 何時もは清潔感が漂う食堂ではあるが、飲み食いした物が散乱していて酷い汚部屋に成り果てていた。

 血痕はあるが遺体は無い所を見ると誰かが持ち運んだのだろう。


「さてと――後はカタを付けるだけか……」


「ひいい……」


「このまま殺すのも後味が悪いし――だけど放っておくと何をしでかすかわからねえ」


「何もしない!! 私もう何もしない!!」


 必死に泣き喚いて顔面がグシャグシャになっている。

 こんな状況下でもメイクはしてたのだろうか。メイクが取れて変な顔になっている。大した根性だなと思いつつもカウンターの奥に目をやる。

 そこには瞬の言う通り刺激が強過ぎる光景が広がっていた。

 興奮するよりも怒りが覚える。


「助けに……来てくれたの?」


 レイプされたと思わしき一人の女生徒が上体を起こした。

 ショートカットの気の強そうな女の子だ。レイプされたにも関わらずまだ瞳に強い意志を宿しているのを感じる。


「いいや、自分の尻拭いをしに来ただけ」


「尻拭い?」


「――――ああ尻拭いだ」


 そう言って将一は彼女にサイレンサーの拳銃を渡した。


「お前の運命は彼女に委ねる事にする」


「ちょ、ちょっと待って! 私殺される!」


「俺もお前も高校生だろ。善悪の基準ぐらいは出来る歳だろ。大人しくジャッジを受け入れろ」


「いや!!」


 拳銃を渡された女生徒は銃を構えた。

 手は震えている。

 初めての人殺しになるのだろう。

 映画とかの真似してやったが少々酷だったか? と将一は今更後悔した。


 やがて少女は拳銃を降ろす。


「出来ない――殺せない――」


「そうか――」


 内心銃を降ろして将一はホッとしていた。

 その瞬間、銃口を突き付けられていたギャル女が拳銃を持った女生徒に飛び掛かった。


「きゃあ!?」 


「私は死なない! 死なないんだ!」


 拳銃を奪い去った。

 それよりも早く腹にヤクザキックをかまして壁に叩き付け、突撃銃を顔面に向ける。

 屋上で将一が見せた対ゾンビ用の必勝パターンだ。


「ちょ、ちょっと、じょ、冗談よ――」


「お前にはもう何も言う事はねえ……」


 銃声が響いた。

 ギャル女の手から将一の拳銃が零れ落ちる。





 食堂に装甲車を停車させ、捕まっていた人々を回収する。

 後部にはプロの軍人数人を収容するスペースがあるのだ。


「貴方達何者なの?」


 あの気の強そうな女の子が服を着替えていた。と言っても男性物の制服を羽織る感じでセクシーな感じになってしまっているが。

 そんな彼女は捕まっていた女の子達の疑問を代弁するかのような当然な質問を投げかけて来る。

 そりゃ行き成り完全フル武装した高校生が装甲車で助けに来たのだ。

 疑問が出るのは無理もないのだが――


「遂先日までは普通の高校生だったんだよ。遂先日まではな」


 としか将一は返せなかった。


「奴達の動きが気になる。このまま一度体育館に向かう」


「私はどうすれば?」


「武道館とか見て回ってくれ。そして体育館での出来事にケリを付けたら学生寮に乗り込む」


「分かりました。徒歩ですか?」


「ああ。相手の様子を探りたい」


「待って。私も行くわー―」


 後部座席から声がした。

 あの気の強そうな女の子だ。


「私もって――その格好で? てか大丈夫か? その――」


「私の名前は朝倉 梨子(あさくら りこ)よ。梨子って呼んでもいいわ」


「俺は荒木 将一。将一でいい」


「私は加々美 瞬。瞬と呼んで貰って結構です」


「で、梨子? お前も来るの?」


「勿論――こう見えてタフ何だから」


「人とか撃てるの?」


「今度こそ撃つわ」


「はあ――装甲車に回収した銃器放り込んであるから好きなの選んで。派手にブチかますぞ」


「分かったわ」


 敵が持っていた銃器は予備弾薬含めて全て鹵獲して装甲車に放り込んである。

 それから自分に合いそうなのを彼女は見繕い始めていた。 


「良いんですか?」


「この学園の女子はタフな奴が多いみたいだからな――それにあの様子だと目に届く範囲に置いといた方が心労が少なくて済む」  


「そんなもんですか?」


「そんなもんです――さて、体育館に戻るか――」


 話が本当ならば体育館は今頃占拠されているか、真田先生辺りが皆殺しにしている筈だ。


 それを確かめに行かねばなるまい。


(しかし、南 静香の仇を討つ形になるとはな――)


 ふとチンピラ達から聞きだした情報を統合する。

 南 静香は心堂 昴のグループに性的な暴行を受けていたのだろう。

 嘘は付いている様子は無かったし、先ず間違いはないだろう。


 そして今後の方針であるが――心堂 昴のグループは自分達と同じグループの人間を回収して戦力の増強を図る。逆らう奴は殺すか玩具にする。


 木下の動きが掴めないのが不気味だが心堂のグループと口論していたのを見る限り、何かしらの接点はあるに違いない。

 つまり心堂を追えば木下の手掛かりにもなる筈だ。


(さて二日目のサバイバル、どうなる事やら――)


 取り合えず近寄って来たゾンビの頭を突撃銃で吹き飛ばしながらそんな事を考えていた。

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