8.じゃらし橋
8.じゃらし橋
「お前があいつらの親玉だな⁉」
「キキキ、威勢のいいガキだな。たった一匹で現れるとは大した度胸だ。お前は誰だ?」
「お前は誰だじゃねぇ!俺はこのマタタビスタ共和国の最強剣士トワイライト様だ!お前こそ何者だ⁉」
異形のものの隊列が切れると、最後方に居たのは一匹の黒猫だった。その手には、自身の倍以上はあろうかというほどの大きな鎌。漆黒の身体をオレンジ色に輝くマントで包み、怪しく光る赤い眼でこちらを見据え、不敵な笑みを浮かべている。額には三日月マークの紋様があった。身体は宙に浮いている。
ピッチは「三百体以上」と言っていたが、魔物の群れはトワイライトの感覚では五百体以上。
ただし、その群衆とまともにやり合うことはせず、敵将の足止めをするというのがスピカ・ゼニス・ラマラウの令で、いままさにこのじゃらし橋の上で、それらしき者と対峙している。
「キキキ、我が名はシャドー。《死神》クロ様に使える者」
「仕える者?ってことはお前は《死神》じゃないのか?」
「キキ、クロ様
「けぇっ、なめやがって!お前らの目的は何だか知らねぇが、俺たちの国で好き勝手させてたまるか!」
と言いながらトワイライトは、自分の身体がかすかに震えているのを感じた。
それは武者震いなのか、怯えによる震えなのかは判然としないが、眼前のシャドーという漆黒の猫は、おおよそこれまで自分が対峙したことのない桁違いの威圧感を放っている。
「勝てない」と本能が言っている。また一方で「ここを通すわけには」と勇者の心が脈を打つ。
「キキ、うるさいガキだ。自分なぞちっぽけだと気付いているだろうに。心が震えているのが見えるぞ。恐怖にな。キキキキキ、少し遊んでやりたいが、あいにくお前のような雑魚にかまっている暇はない」
「誰が雑魚だ!黙れ!」
間合いを詰め、切りかかるトワイライト。
その刹那、シャドーの左目がまばゆく光った。
すると、なんとトワイライトの身体はエーテルブレードを振り上げた態勢のまま止まってしまった。「まぶしい」と思う間もなく身体の自由を失った。まるで石になってしまったかのようにピクリとも動かせない。口も動かせない。話すこともできない。
黒猫シャドーは、「キキキ」と笑うと右手に持っていた大きな鎌を
涙を流すこともできない白猫の「やめろ!」という心の中の叫び声は誰にも聞こえない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます