2.星流湖(1)
2.星流湖
重たい空気のままにゃんこ会議は続く。
「また急な侵攻がいつあるかもわかりません。しばらくは私もこの国にとどまることにいたしましょう」
「それは心強い」
マルキーニャスの発言に応えたのは兵団長メロウだった。
マルキーニャスは自責の念に駆られていた。
(私があの場に居合わせていながら、キュウは・・・)
「数年前に南方での異変の噂を耳にし、スピカ・ゼニス・ラマラウ様に進言して情報収集のため世界各地を視察する旅に出ました。メテオ海峡を越えセントラルアルプへ、コスモ海峡を越えサウスアルプへ。実際に南方のブレーメン共和国などは
センター長はマルキーニャスの話を受け、
「うむ、わしも違和感を覚えておった。我がマタタビスタがあるノースアルプにおいて異形のものの存在はパラパラと見受ける程度で、シェルストレーム、キュウの浄化エーテルの研究対象としては十分という程度の数でしかなかったのじゃ。さまよい歩く亡霊のような存在であったといえよう。国民はもとより兵団の中にもその存在を確認したことがない者がおるほどの個体数であったのじゃ」
コウはピッチに地下シェルターに誘導されたときの会話を思い出していた。真剣なまなざしでセンター長の話を聞くピッチをちらと見る。
老猫は続ける。
「ところが、ここ数週の間に星流湖エリアまで異形のものの目撃情報が入るようになった。不穏な足音が目と鼻の先にまで迫ってきておったのじゃ。ここにおるシェルストレーム、そして誘拐されてしまったキュウには、昼夜を問わず厳戒態勢で任務についてもらっていた。しかしながら、奴らの目論見はエーテル技術そのものの強奪であった。バル・カンが居なければシェルストレームの身は危なかった。命を脅かす危険な状況じゃった。キュウについても同様、ただ奴らの一連の言動から受ける印象として、キュウの身にただちに絶命的危機が及ぶことは考えにくい。だからといって安心できる状況ではないのじゃがな。奴らの狙いはエーテルであった。技術を得ようとせんがための誘拐。エーテルをもって何をしようと企んでいるのかはわからぬが一刻も早くキュウを救出しなければならぬ」
センター長は、シェルストレーム所長のほうを見て合図を送るように頷いてみせた。
「シェルストレーム所長、シリウスについての説明をお願いしたい」
「はい」
眼鏡に帽子、いかにも学者然とした猫がシェルストレームという名で、シュウの姉キュウとエーテル研究を進めてきたということをコウはこの場で初めて知ったのだが、彼がこの後語りだした内容はにわかに受け入れがたいものだった。
「まずはシュウに詫びなくてはならぬ。この度の不手際、すべて私の責任である。キュウのことは本当に申し訳なかった」
シュウは小さな声で、
「そんな不手際だなんて・・・」
とだけつぶやいた。
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