5.疾走

  5.疾走



「けっ、はるばる北の大地までようこそおいで下さったてなもんだぜ」


 先ほどから、「えい」とか「やあ」とか言いながら、ただ一匹戦場を全力で駆けている者があった。その手には青白く輝く光の刃、エーテルブレードが握られている。

 トワイライトは数百体の異形いぎょうのものたちが成す隊列の左脇を一心不乱に駆けていた。時折、襲い掛かってくるものをなぎ払う。


「まとめてぶった切ってやってもいいんだけどよ!」


 (まあ、今は先生の言うようにまずは親玉の足止めだ)


 先生が指令を出す前に、先生の選び得る選択肢は脳裏にあった、というよりも今はこれしかない。

 自分が恐らく強敵であろう敵将の足止めをする。その間にシュウとキュウで魔弾砲を放つ準備をする。異形いぎょうのものたちも、そいつらのボスも魔弾砲で一掃する。雑魚はエーテルブレードさえあれば衛兵たちでもあしらえるかもしれないが、この閃光やらなにやら派手にやらかしてくれてる奴が、早々にエーテル研究所やにゃんこセンターに近づいてもらっちゃ厄介だ。恐らくそう判断した先生は、危険だがやむを得ない選択として自分を送り出した。


 ややためらいながら命じたセンター長の姿と、シュウの心配そうな視線を思い浮かべる。そして、不安と恐怖で青白い表情をしたコウを。


「せっかく、救世主様と楽しい冒険の始まりだったってのに邪魔すんじゃねぇ!」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る