10.青き光の矢(1)
10.青き光の矢
地下シェルターのモニターには、
次から次へと襲いくる群衆に苦戦している猫兵士たちを見つめながら、異形のものとは何かに感染してしまった猫たちのことなのだろうかとコウは考えていた。
「問題解決のためのお力添えいただきたく」自分はこちらの世界に呼び込まれたというシュウやにゃんこ先生との今朝の会話を思い出す。「問題」というのがもしこの異形のものの存在のことを指すのであれば、自分なんかに一体何ができるというのだろう。
そして、先ほどすんでのところでトワイライトを救った銀色の猫は、大きな蜂のような猫と対峙している。
「マルキーニャス様です!」
興奮を抑えられぬ様子でピッチが教えてくれたその猫は、“月割りのマルキーニャス”という異名を持ち、武術の達人であるらしい。
確かに大鎌の黒猫との一瞬のやりとりを見ても、いまこの蜂型の可愛らしい(と自分は思うが決して言えない)猫を吹き飛ばした身のこなしと力を見ても、異常な程に強い猫だということがうかがい知れる。
マルキーニャスの登場から隣にいるブエナ、ピッチを含め、地下シェルター内は異様な程の歓声と熱気に包まれた。コウも自然と両の手をきつく結び、肩に力が入っていた。
「マルキーニャス様ぁー」
「マルキーニャス様が帰ってきてくれた!」
「これで大丈夫だ」
などと口々に叫んだりしていた。
しかし、蜂猫が登場し黒猫が姿を消すと、アイドルのライブ会場よろしく騒いでいた猫たちの様子は一変、不穏なムードに包まれた。
裏拳を食らって吹き飛ばされた蜂猫は、再び起きあがり立ち向かってくる。地上に亀裂を入れるほどの銀猫の打撃を受けても、すぐに立ち向かってくるとは、どうやら一筋縄ではいかないらしい。
気が付くと橋の上にいたトワイライトの姿もなくなっていた。
「トワイライト?・・・」
まさかあの黒猫を追いかけるのか?ついさっき死ぬ思いをしたはずなのに。
知らず知らずのうちにコウは、白猫の身を案じ、いたたまれない気持ちになっていた―。
「魔断砲に異常はなしじゃ。バッキバキのビッキビキじゃ。ふぉほほほ」
シェルストレーム所長は屋上にあるエーテル砲の点検を終え、再び研究所内に戻ってきた。
「うーむ、どうやら猫兵士たちも苦戦しておるようじゃの。準備はどうじゃ、キュウ?」
壁一面のモニターを確認しながらキュウに問う。
「はい、もう1,2分です」
「うむ、そうか。よし首尾よくゆくとよいがの。トワイライトの様子はどうじゃ、シュウ?」
「トワは・・・、危ないところでした。黒猫に命を奪われる寸前でした。ぎりぎりのところでマルキーニャス様が現れて救ってくださいました」
「マルキーニャスとな⁉」
「はい、マルキーニャス様が来てくれていなければ今頃トワは・・・」
話しながら涙があふれてくるただならぬ様子のシュウを見て、どうやら自分が席を外している間にとんでもない一幕があったに違いないことを察するシェルストレーム。
「ふむふむ、してその黒猫はどこじゃ?マルキーが相手をしているのは異形のもののようじゃが」
シュウが黒猫と言った者の姿は、画面を眺めまわしても見当たらない。
「どこへ向かったのかはわかりません。にゃんこセンターなのかどうか、いずれにしてもマルキーニャス様がいま戦っている蜂の猫を召喚したあと、すぐに飛び去ってしまいました」
「うーむ、、なにやら嫌な予感がするの」
マルキーニャスがいくら強いとはいえ、敵将と思しき黒猫がそれをパスして消えるということはこの国の壊滅が目的なのであれば行動として不自然だ。猫兵士たちは苦戦しているとはいえ、異形のものの数も少ないと感じる。
「何か企んでいる?何か本当の目的が別にある?」
シェルストレームはひとりごちた。
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