第27話「相川 タツヤとアニメ鑑賞」
Side 木里 翔太郎
俺の家、より精確には俺の部屋に相川 タツヤと手毬 サエが集まった。
勿論一緒にアニメ見るためだ。
「正直男二人に女一人って言う組み合わせも中々ねえぞ・・・・・・」
中々レアな組み合わせだと思う。
早瀬の様なクラスカーストトップの奴はどうだったかは知らないが、自分の部屋に学校のクラスメイトなら分かるが高校生で男女を連れ込むのも中々ないと思ったが、既にサエ含めて女三人連れ込んだりしてるので今更なんだろうなとか思った。
「すいません。無理言って」
「まあ事前に言ってくれてるから大丈夫なんだけどね」
相川が軽く頭下げるが事前に言ってくれてるので特に問題はない。
どちらかと言うとサエと一緒に見る作品をレンタル屋で選ぶのに苦慮した。
特に最近はロボットアニメ続きだったのでその辺も考慮した上でのチョイス。
更に自分達らしさを押し出すとなると、自ずと見れる作品も限られてくる。これは手毬の案だ。
映画と言う選択肢もあるが、OVAと言う選択肢もあった。
アニメの第一話を進めて見たりとか総集編とかでもありじゃねーの? と言うのもあった。
そうしてあーでもない、こーでもないと議論を重ねた結果、有名なラノベの序盤部分を見て貰う形となった。
「俺の妹が●んなに可愛い●けがない」
略称、俺妹であり、大ヒット作品の一つだ。
後半の展開で色々と批判があるが十分に面白い部類のラノベだ。
人の好みとかもあるだろうが、これが駄目な部類のラノベであるならばラノベ業界はクソだらけになる。
どんな作品かと言うと中学生にして完全に垢抜けて読モとかもやってる、何でも出来る妹と平凡な兄である主人公がとあるキッカケで妹の趣味を知り、兄が妹のために奔走すると言う内容の作品だ。
それを今回は一巻分だけを見て終わる事にする。
「一巻分と言うと相当な量になるのでは?」
「いや、大体のラノベアニメは一巻に使う話数は三話ぐらいなんだわ」
そうねと解説を手毬が引き継ぐ。
「基本深夜アニメは1クール、つまり十二話前後が基本。2クールで二十四話前後で余程の大ヒット作とかじゃない限り深夜で2クールは作られないわ。特に昨今のアニメ事情だと特にね」
「それはどう言う理由で?」
相川は当然の疑問を手毬にぶつけた。
「話は長くなるから省くけど、業界の構造事態の問題ね。オフィスワークの連中が制作者サイドにちゃんと金を払ってないとか、制作者サイドも放送枠を確保するために無理してでもアニメ化乱発してアニメ制作会社が悲鳴を挙げてたりとか・・・・・・まあそんな感じかしら」
「何やらかなり闇が深い業界ですね」
「そうね。屋台骨のアニメーターの給料なんか出来高制で高校生のアルバイトより賃金が低いからね。ブラック企業よりもブラックな業界かもしれないわ。未だにアニメ業界が存続しているのが奇跡なぐらいよ」
手毬の言う通りである。
日本のアニメは世界的に評価されていながらこの体たらくだ。
本当によく保っているもんである。
ともかく高校生風情がアニメ業界に愚痴を並べても仕方ないので取り合えず俺妹を見る事にした。
夢のシーンから日常シーンの解説。
そしてそこから重要な、妹の隠された趣味が露見される。
「女性でもああ言うのが好きな方がいるんですか?」
妹の隠された趣味。
中学生なのにギャルゲー、しかも重度の妹萌えである事が明かされるシーンでタツヤは困惑しながらそう尋ねた。
「女性の私が言うのも何だけど答えはYESよ。男性に比べればそりゃ少ないかもしれないけど、女性でギャルゲーやってるユーザーは確かにいるもの。特に今は通販とかじゃなくてネットのDL販売とかある時代だから、親に隠れてこっそりギャルゲーに手を出してる中学生がいたとしても別におかしくはないわ」
「成る程・・・・・・」
などと感心していた。
どんな胸中でこの作品を見ているのか自分としては気になる。
こうしている間にも話は進んでいき、妹と同じ趣味を共有できる相手を探す事になった。
「そう言えば妹いるみたいだけど、関係どんな感じなの?」
「そこでその話題ふるんですか手毬さん」
しかし相川は考え込んだ末にこう口にした。
「他の兄妹仲は知りませんが、自分の場合は結構話とかする方ですね」
「そういやあの時、一緒に出かけてたもんな」
高校生の兄と中学生の妹がお出かけ。
漫画ぐらいでしかお目に掛かれない2ショットだと思っていたが相川のところでは普通らしい。
仲は悪くはないようだ。
ちなみにあの時とは相川 タツヤと一緒にいた大和撫子然とした相川の妹を悪漢から助けた時の話だ。(25話でも少し語っている)
兄の容姿といい、妹の容姿といい、益々あの魔法学校の劣等生と共通点が多い奴だ。
これで妹がブラコンで優等生だったらますますあの劣等生らしさが増してくる。
ストーリーも進んでいき、新たな個性が強すぎるキャラクターと知り合いになったりしたがここでアクシデントが起きる。
物語の基礎で言うなら起承転結の転の部分だろう。
妹の趣味が父親にばれたのだ。
それで大騒ぎになった。
そこで兄が一肌脱いで父親と話し、盛大な無理がありすぎる強引な嘘で話を納めて妹を守りきったのである。
ざっくんばらに解説したが第一巻の内容はこんな感じでアニメでは基本一巻の内容は原作に沿って変更無く放送されている。
ラノベがアニメ化する場合、尺の都合などで話の展開が変更したりする。酷い時は最終話辺りが総集編みたいになって一気に物語を一段落させてしまうケースもある。
そう言う事があるため、ラノベ原作アニメを見て、そのアニメの原作となったラノベを見て困惑する事は多々ある。
ソースは俺。
相川はと言うと、面白いのかつまらないのか熱心に物語を見ていた。
「今は一巻分を上映したと言いましたが全部で何話あるんですか?」
「二期もあるから三十話近くある筈だから結構大変だぞ」
「二期ですか? いわゆる続編の事ですよね? 二期が作られるのは人気の他に何が条件なんですか?」
あーその話題を振るか。
これもアニメ業界の闇の部分なんだよな。
「二期が作られる理由はアニメの面白さも、まあ関係するが――基本は円盤、発売されるDVDなどの売り上げだ。どう言うわけかな」
「DVDの売り上げですか?」
意外そうな声色で疑問を投げかける。
「ああ、運とかもあるが基本はDVD、オタク用語で円盤な――の売り上げで決まる。だけど昨今は難しいんだよなこれ」
「どうしてですか?」
「アニメのDVDは新品で大体六千円ぐらい。二話、もしくは三話で六十分収録で超すか超さないかのぐらいだ。その傍ら映画のDVDとかブルーレイはその半額近く、つまりそっちのがコスト的にお得なんだよね。それに今回はレンタルで借りてきたけど、インターネットで無料配信――違法だが、消しても増えるイタチごっこだから制作者サイドも黙認している状態だ。大体のユーザーはこれを利用しているのが現状だ」
「つまり余程熱心なファンでもないと購入しないと?」
「そう言う事だな。だから制作者サイドもDVD特典とか付けて頑張ってるんだが、それでもDVDの売り上げは余程凄いアニメでないと難しいんだわ。その点で言えばこの作品は凄いんだろうな」
DVDの売り上げだけが条件ではないが、厳しい条件下でありながらちゃんと結果を出して二期を作って貰えるのは凄いと思う。
「まあ、ともかくアニメ業界も大変なんだわ」
そう言えばガーリッシュ●ンバーと言うアニメの裏側あるある的な作品とかあったが・・・・・・その作品は声優やアニメ業界を結構エグく描いていて、それゆえに出演者が釈明していたが、実際今のサブカル業界ってあんな感じかそれ以上に酷かったりするのかもしれないな。
「で、そこまで分かっているなら「仕事を探したくないから当然ラノベ作家を目指す」とか言う妄言は吐かないわよね?」
「唐突に何を言い出すんですか手毬さん・・・・・・てか本当にラノベ業界に何か恨みでもあるんですか?」
「別に。それと補足するけど、今のラノベ業界もブラック化が進んでいて酷いレベルだと勝手に作者の許諾もなく、勝手に改稿して出版するらしいわよ」
「ああ・・・・・・そう言う事件あったな・・・・・・」(*作者の妄想ではなく、実際にあった話です)
やっぱり手毬の奴、何かラノベ業界に恨みでもあるんだろうか・・・・・・
「手毬さんラノベに対して厳しいですね」
相川は当然の疑問を投げかける。
「ラノベだけで食っていけるのは禁書の作者レベルじゃないと無理よ」
「あの人はおかしいから比較対象にはならんだろう」
あの作者はラノベを書くためだけに稼働している機械みたいな人だ。
比較対象にしちゃいかん。
だが手毬の言う通りあのぐらいのレベルを目指さないとラノベで食ってくなんて無理なんだろうな。
それ基準でダメだし食らってる牛島さんとか苦労してるんだろうな。
とまあ、色々と脱線したがこうしてアニメの鑑賞会は終わった。
タツヤに感想を聞いたところ。
「一口にアニメにも色々あるんですね。深夜アニメ初めて見ましたが、少々色眼鏡を掛けて見ていたのかもしれません。それとアニメ業界について色々と勉強させて頂きました」
と、簡潔かつ真面目な感想が返って来た。
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