第18話「裏の事情」

 Side 木里 翔太郎


 俺は久し振りに中学時代の友人と顔を合わせた。

 安藤 リュージ。

 自分と同じ同類の人間だ。

 格好良くて髪の毛がツンツンしていて女にモテそうな野性味ある顔をしている。実際中学時代でも女子から人気のある方だった。男子からも男気に惚れて憧れの的だった。

 

「厄介事に巻き込まれているようだな」


 そう言って下校途中、ふと俺の前に姿を現した。

 舎弟か何かだろうか。

 ガタイの良い人相の悪い男が二人控えていた。その二人も席を空けた。


 何かを察したのか手毬は席を外してくれた。

 俺とリュージは近所のファミレスに入り、適当な席につく。


「もう俺達の世界からは足を洗ったんじゃないのか?」


「そうしたかったんだけどな・・・・・・それにしても耳が早いじゃねーか」


「ちょくちょく様子見がてら探らしてたんだよ。お前達二人何だかんだでそれなりに暴れてるらしいじゃねーか」


 ご丁寧な事だ。

 確かに言われてみるとそんな気がする。


「で、世間話でもしに来たのか?」


「新島 ハルヤと藤沢 クルミ・・・・・・早瀬 ミナトの取り巻きだったか? そいつに泣かされた奴が多くてな。もうそろそろケジメ取らせようと思ってたんだ」


「・・・・・・手毬の奴は知ってか知らないかあんまり詳しくは教えてくれなかったが、その二人は一体何者なんだ? その二人退学処分になったばっかりだぞ」


「新島 ハルヤ事態はインテリヤンキー気取りの小物だ。藤沢 クルミは・・・・・・まあ一種の精神異常者だな」


「詳しく聞こう。また仕掛けてくる可能性があるからな」


「ああ。用心深さも変わらないようで何よりだ」


 俺達のテーブルにジュースなどが運ばれてくる。


「まず新島 ハルヤだが・・・・・・さっきも言った通り、インテリヤンキー気取りの小物だ。不良にもなりきれず、かといって普通にも生きられず、早瀬のお零れに手を出して、分け与えてそれなりの地位を得ていたらしい」


「そうしてある程度自分の思い通りの人生を歩んでいくウチにただのチンピラになったわけか」


「ああ。学校ではそれなりに用心深く生活していたが、ハメの外し方を覚えて学校外じゃ随分好き勝手に暴れてたらしいな。だが知恵はある程度回るらしい。早瀬と言う優等生の下に付く事でそれを隠れ蓑にする事で、上手い事やっていたそうだ」


「それが新島 ハルヤと言う事か」


「そう言う事だが・・・・・・藤沢 クルミには頭が上がらなかったみたいだな」


「藤沢 クルミって何物なんだ? 結局手毬が瞬殺したみたいだが・・・・・・精神異常者とか言ってたな?」


 俺はそう言ってジュースを口に含む。

 冷えたジュースが口の中に広がり、渇いた喉を潤していく。


「手毬は気付いているだろうが、藤沢 クルミは早瀬 ミナトにホの字だ。だが早瀬は藤沢に見向きもしなかった。だがドンドン早瀬には女が群がってくる。それに藤沢は危機感を覚え、新島と組んで取り巻き連中に女子を斡旋する様な事をし始めた。時には凶行にも走ったみたいだな・・・・・・」


「だからか・・・・・・」


 豊穣院さんへの凶行にも納得がいった。

 藤沢 クルミは想像以上のヤンデレ地雷女だったのだ。


「学校外でもそんな感じだ。他校にも被害者がいる。髪をバリカンで禿頭にしたとか、顔にタバコの火を押し付けたとか、新島 ハルヤを嗾けてマワしただとか聞いたな」


 噂だろうからいくらリュージ話でも真に受けるワケではないが、手毬の直感は当たっていたようだ。


 実際藤沢 クルミは新島 ハルヤと一緒に凶行に及んだからな。


「それを知らせるために来たってわけじゃないんだろ?」


「ああ。正直この一件、どうしようか俺も扱いかねている。早瀬 ミナトに関しても制裁をするべきだって話も出てるからな」


「かなりヤバイ方向に話が転がっているみたいだな・・・・・・」


 想像以上に根が深い話らしい。

 どうやら何処かの拍子で不良グループの女に手を出したとかそんなとこだろう。

 こうなってしまうともう、どうなるか想像も出来ない。

 いっそ今回の件から一切手を引くと言うのもアリだろう。



 Side 安藤 リュージ


 相変わらずだったな、翔太郎の奴も。

 気付いてるかどうか知らないが二人の悪行伝えた時、目があの頃に戻ってやがった。 


「それにしても安藤さん。あの人とどう言うご関係で?」


「あの木里って人何物なんですか?」


 ファミレスで翔太郎を見送った後、連れの二人がそう尋ねて来た。


「昔の中学時代、一緒に暴れ回った仲だ。念押しするが下手に手を出すんじゃねえぞ。手毬もヤバイが翔太郎もヤバイんだよ。特に翔太郎は手毬絡みになると見境が無くなって何しでかすかわからねえ。正直、中学時代に院少ぶち込まれなかったのが不思議なぐらいだからな」


「そんなヤバイ奴なんですか?」


「ああ。二人とも俺達みたいに不良の本懐みたいなモンは全く持ち合わせちゃいねえ。ある意味で不良よりも不良なんだよあの二人は」


 いや、もしかすると不良よりもギャングとかに向いてるかもしれねえな、あの二人は。


「もしも俺達の世界に入って来たら勢力図が間違いなく今と大幅に書き換わって俺はあの二人と肩を並べるか、もしくは下についていただろうな」


 実際それぐらいの事を中学時代にしでかした。

 そうでなきゃもっと良い高校に通ってただろう。

 

「正直安藤さんの言う事が信じられません・・・・・・」


「それ程の人なんですか?」


「ああ――正真正銘の怪物だよ」

 

 と、愚痴が過ぎたな。


「ともかく新島と藤沢の二人を張るぞ。今回の一件はどう転がるにしろ、何かしらの形であの二人が関わってくる。動くかどうかは事態を見極めてからだ」


「へい」


「分かりました」


 さて、どうなるか――漫画のように盛り上がるか、それとも下らない結末になるか。

 翔太郎や手毬にとっては後者の方が幸せなんだろうがな。

 

 何にせよ戦いは始まったんだ。


 俺達も行動を起こすとしよう。

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