第15話「密会」
Side 木里 翔太郎
「で? 何の用だ?」
俺の眼前には早瀬 ミナトがいた。
取り巻きはいない。
放課後、突然呼び出されて校舎内の人気が少ない廊下にまで来た。
「こうでもしないと落ち着いて話が出来ないからね」
「取り巻き連中が引っ付いて来るからか」
「そうだ」
「・・・・・・他人の事情には出来る限り口出ししたくないが、友達はちゃんと選んだ方がいいぞ」
遠回しに俺は、勝手に友人が暴走してトラブルに巻き込まれる事を忠告しておく。
「・・・・・・それは君にも言える事じゃないのか?」
確かに手毬の事を考えればブーメランだろう。
手毬自身も分かっているが手毬の第三者からの評価は狂犬みたいなもんだ。
だがここはキチンと反論する。
「手毬は暴力を好きで振るってるワケじゃない。出なければ今頃高校じゃなくて少年院にいるよ」
「そうか」
「で、用件はこれじゃないだろう?」
「ああ・・・・・・友人が暴走するかもしれない」
「あの程度のやり取りで暴走するってどんだけ沸点が低いんだよ、お前の友人」
よくこの高校受かったな。
まあ不良と言っても色々と種類があるし、大方こいつの取り巻きは不良になりきれなかった不良なんだろう。
ヤクザ崩れのカタギ、不良崩れの生徒と言う矛盾しているような存在。
高校生になってルール内でハメを外して生きて来たせいでそんな風になったと。
いるんだよな、そう言うタイプの不良。ある意味普通の不良よりも陰湿で性質が悪いんだ。
「俺もそうだが、手毬も警戒してる。万が一手を出せば、停学上等の範囲で暴れる覚悟は出来てるからな」
「手毬さんと一緒に暴れたと言うのは噂通りなんだな」
「ストッパー役だからな。それにそうしなければ大切なもん守れなかったし」
「・・・・・・正直、君が羨ましい」
「は?」
突然何を言い出すんだこいつは?
「僕はずっと何不自由なく生きて来たつもりだ。勿論相応の努力もしてきた。友人だって作って相応の地位にいる」
「そっから先の言葉を言ってやろうか? 要するに周りの目線気にして生きて行くのに疲れたんだろう?」
「・・・・・・」
図星だったのか目線を逸らして黙り込んだ。
「話は終わりなら俺はここで帰るぜ。手毬達を待たせるのもアレだしな」
俺は早瀬を放置して帰る事にした。
長々と話す事はないだろうしな。
☆
手毬と校門で合流した。
どうやら待ってくれていたらしい。
「で? 何の用だったの?」
「早瀬の愚痴に付き合ってた」
「そう」
「何か言わないのか?」
「例え戦争中であっても交渉チャンネルぐらいは確保しておくもんよ」
「もうお前本当に臨戦態勢なんだな・・・・・・」
「そうね・・・・・・中学時代と違って暴力沙汰に対する罰則が厳しいのが辛いところかしら」
「心配するところそこかい・・・・・・」
まあ手毬の言いたい事も分かる。
高校は中学と違って罰則は厳しい。
停学や退学制度があるなしが大きな違いだ。
正直この退学制度、小中学校に導入すれば、全国のイジメ問題はある程度片付くと思うのは自分だけだろうか。
「ともかくアンタも臨戦態勢は整えときなさい」
「了解・・・・・・」
手毬の言う通り用心はしておくに超した事はない。
早瀬と接した感じ、自分達の友人を掌握し切れてない様子が見て取れた。
勝手に暴走して何かやらかすかもしれない。
(本当は何も起きない方が良いんだけどな・・・・・・)
だが無情にもその想いは裏切られる事となる。
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