てまりデイズ

第１４話「早瀬 ミナトと言う男」

＊今回は早瀬　ミナト視点で物語が進行します。

　Ｓｉｄｅ　早瀬　ミナト

　僕とアイツ――木里　翔太郎とは何が違うのだろうか。

　僕は昔から友達や異性――女には困らなかった。

　ある程度分を弁えれば何もかもが思い通りになった。

　だがしかし、それが何時しか苦痛になった。

　周りに群がるのは馬鹿ばっか。

　自分のお零れの女を目当てに群がってくる。

　そんな事で女達は見向きもしないのに。当然だ。女達はどう言う理由かは分からないは俺を目当てに集まって来てるのだから。

　まあ中にはスクールカーストの頂点とか言う肩書きが欲しくて傍にいる奴とか男子と同じようにいい男と巡り会うために俺の周りに自然と形成されたグループに入った女子もいるだろう。

　僕以外の他の連中は漠然と日々を過ごすか、夢中になる何かを見付けて青春を捧げている。

　前者の中にも様々なグループがいる。

　Ｂグループとかクラスカーストの最底辺だとかそう言うのだ。

　後者はある意味では羨ましい。

　自分には無い物だからだ。

　ある意味自分何かよりかはマシな人生を送っているだろう。

　今の自分の人生は変わるのが恐くて、周囲の自分に対するイメージが変わるのが恐くてご機嫌取りをしている。

　豊穣院　ミホさんに近付いたのもその一つだ。

　友人達が豊穣院　ミサさんに興味があるらしく、一度遊びに誘おうと言う感じだ。

　その結果は最悪の形に終わった。

　自分自身はオタクに対して偏見を持っているわけではないが、周囲に合わせて行くウチに自分も「オタクを馬鹿にしないといけない」と言う見方を持つ様になった。

　それに自分達は教師以外には何もかもが許される状態だった。

　自分達は生徒達の王様だった。

　だがその道理が通じなかった。

　あの豊穣院　ミホに対しては。

　初めての経験だった。

　世間知らずのお嬢様だと聞いていたが噂はアテにはならないらしい。

　だからこそより興味を持った。

「友達は自分で選べますってホント、生意気だよな」

「どうするんだミナト？」

　自分の取り巻き達は怒りを隠そうともしなかった。

「でも豊穣院にはあの手毬がいるし、あの木里とか言う奴も中学時代相当ヤバイって聞いたぜ」

　ふと興味深い話になった。

「木里もそんなヤバイ奴なのか？」

　僕は木里について尋ねた。

　手毬がヤバイと言う話は良く聞くが木里がヤバイと言う話はあまり聞かないからだ。

「ああ。手毬の影に隠れがちだけど、手毬と同じく手段は選ばない奴で、一回自転車で思いっきり轢き飛ばした後、自転車を凶器にして相手を病院送りにしたとか聞いた事あるぜ」

　話盛り過ぎだろうと思ったが警戒するに超した事はないらしい。

「木里　翔太郎か･･････」

　オタク少年。

　手毬の相棒。

　などのせいで総合的な評価は低いが容姿、成績、スポーツも悪くないと思っている。

　それでいてケンカも強いと来た。

　僕の経験則だが、ケンカの強さは隠れた評価基準だ。

　モテ要素の一つである。

「どうする？　人数集めて潰すか？」

「手毬ちゃんも木里も相当恨みかってそうだしね」

　ふと周囲に聞く耳立てると何だか二人を潰す流れに話が進行していた。

　こいつらの悪いクセだ。

　僕の意志など関係なく自由気ままに勝手に話を進行する。

　イザとなったら平然と僕に責任を擦り付けるだろう。

「勝手な事しない。豊穣院さんには嫌われたけど、まあそう言う時もあるさ」

　こんな具合で良いだろう。

「おー、ミナト懐広いね」

「流石ミナトだ」

「俺、憧れちゃう！」　　　

　と、口々に言う。

　こいつらの手綱を握るのは本当に疲れる。