第11話「お嬢様、オタク文化に興味を持つ」

*今回は豊穣院 ミホ視点で物語が進行します。


 Side 豊穣院 ミホ


 放課後。

 私は手毬さんにふと、「オタク文化」について尋ねました。

 気に障ったのか、「少々場所を変えるわよ」と言って図書室の人気が少ない場所にへ来ました。

 人の視線は本棚で全く感じません。


「そんなに聞いちゃいけない話だったんでしょうか?」

 

 私は恐る恐る尋ねました。


「豊穣院さんの場合、私がダメなら他の奴に聞くでしょ。ただでさえ世間知らず何だから変な男に変な知識植え込まれたら逆に厄介になるわ。だからどっかで苦労しても、こうして教え込んだ方がいいと思ったの」


「だからと言ってどうして場所を変える必要が?」


「放課後の教室に居座ると不自然よ。それに誰に話を聞かれるか分かったもんじゃないわ。それに、アンタただでさえ男達に人気なんだからそう言う話題に興味があると知れたら変な男が寄ってきて大変な事になりそうだし・・・・・・」


「は、はあ・・・・・・」


「はあって何よ。はあって。自分の立場認識してるかどうかも怪しいわね」


 手毬さんは何時も辛辣ですが、悪意の様な物は感じません。

 厳しいけどいい人だと思っています。何だかんだで何度も助けられてますし。

 

 手毬さんが言うには私はとても殿方にもてる女性らしく、その関係であらぬ諍いが起きかねないとの事ですが・・・・・・その辺りまだ良く分かりません。


 ですが無知は罪だと言います。だからこそ勉強しなくてはならないのです。


「つかどうして突然オタク文化なわけ?」


「手毬さんや牛島さん、そして木里さんもそう言うのに詳しいと思って・・・・・・自分でもある程度調べましたけど逆に分からなくなってしまいまして」


「貴方、ネットフル活用してオタクの起源とかまで遡って調べてウチにワケが分からなくなるタイプよね」


「わ、分かるんですか?」


「分からないからこうして尋ねてるんでしょうか」


 確かに手毬さんの言う通りですね。

 流石手毬さんです。


「まあこれは木里の意見だけど、大体オタクって言っても色々と種類があるわ」


「しゅ、種類ですか?」


「そう。人によって認識は様々だけど基本はアイドルオタクとアニメオタク、メイドオタとか美少女フィギュアとかギャルゲーオタクとかがごっちゃになったのが世間で言うオタクよ。ただ単に二次元の美少女が好きなだけど言う認識でキモオタとか言われる場合もあるわね」


「一般のオタクの定義はともかくキモオタの定義はそんなアッサリしたものなのですか?」


「だから人によるって言ってるでしょうか。キモオタと言っても段階があって、犯罪行為に片足突っ込んでるか、生理的に気持ち悪いかとか・・・・・・まあそんなレベルよ」


「思った以上に奥が深いんですね・・・・・・」


 私まだまだ勉強不足のようです。


「木里さんはどうなんですか?」


「そうね。今は一般人とオタクの境界線も曖昧になって来てるし・・・・・・木里は幅広く、深くはないけどある程度の知識は持ってるタイプのオタクかしら。殆どのオタクはそんなもんよ」


「つまり漫画とかアニメとかに詳しい人と言う感じですか?」


 オタクとはそんな物なのでしょうか?


「そんなもんね。一般人とオタクの判別の仕方には色々とあるけど――」


「あ、それ知りたいです」


 とても興味があります。


「まあ例として――ガンダ●って知ってる?」


「ええ、名前だけなら聞いた事があります」


 とても有名なロボット物ですけど何が何だか・・・・・・


「ガンダ●のシリーズとか、MSとか、ガンダ●シリーズの作品の解説が出来るかどうかで分かるわ。十分にガンオタよ。ガンダ●センチネルとか知ってたらもうカタギじゃないわ」


「ちょっとこんがらがって来ました・・・・・・」


 えーとガンダ●オタクとはアニメオタクとはまた違うんでしょうか?

 ややこしくなって来ました。


「何考えてるか想像は付くけど、アニメオタクとガンダ●オタクは――別物であって別物ではない、たぶんオタク達でも上手く議論出来るかどうか分からないわ・・・・・・念の為に解説するとガンダ●と言う作品のシリーズに詳しいのがガンダ●オタク、他のロボット作品とかに詳しいのがロボッ●オタクとか言うワケね、更に他のアニメとか作品に詳しいのがアニメオタクよ」


「はあ・・・・・・」


 正直、分かったような、分からないようなと言う感じです。


「他にも色んなオタク、マニアとかいるけど、オタクとかマニアとか言う言葉は、特定のジャンルに興味を持って好きになって一般人よりも興味を持って専門的知識を持つに至った趣味人って言うのが正解かもしれないわね」


「じゃあ、ファッションやメイクが好きな人もいわゆるその道のオタクと言う事になるんですか?」

 

 クラスメイトにもそう言う人はいますし、彼達もオタクなんでしょうか?

 手毬さんは困った様にハァとため息をついて目をそらしました。


「難しい質問ね。一般的にオタクとそうじゃない人間についての分類は大雑把にアニメや漫画とかが好きな人なのよ。音楽が好きで昔の音楽とか知っていて演奏できても音楽オタとか言われないようにね」


「そんな単純な物なんですか?」


「一般人の認識なんてそんなもんなのよ。それと人気週刊誌の漫画や晩や夕方にやってるアニメに詳しくても例外的にオタクのカテゴリーからは外れるわ。最近だとニチアサの特撮とかにも詳しくてもオタクのカテゴリーからは外れると言う考え方もあるわね」 


「やはり難しいですね」


「正直豊穣院さんは難しく考え過ぎよ。感覚的な物なんだから」


「は、はい」


「取り合えずこれぐらいにして帰りましょうか。アイツ(木里)も待たせている事だし」

 

 そう言って手毬さんは去って行きました。


 オタク文化。

 何とも奥深い世界なんでしょうか。

 友人の事を知るためにももっと詳しく知る必要がありますね。

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