第5話「過去と未来の繋がり」
Side 木里 翔太郎
手毬 サエと俺の仲は幼稚園の頃以前から遡る。
その頃から俺達はもう腐れ縁でよく一緒に遊ぶ仲だった。
今にして思えば幼稚園ぐらいにはもう既に今の手毬の片鱗は見え隠れしていた。
とにかくシッカリしていて、周囲の人間を纏め上げていた。
ある意味では彼女は天才少女と言われる少女なのだろう。
産まれる国が違えば今頃飛び級しまくって今頃はとっくに大学を卒業とかしていたのかもしれない。
そんな彼女と幸か不幸か、ずっと長続きしている。
中学時代に終わるかと思ったら何だかんだで高校になっても続いていた。
普通幼馴染みとか言う関係は長続きしても中学には消滅する物らしい。
にも関わらず未だに続いている。
だからある時、俺はその事を手毬に話した。
教室での休み時間の時だ。
「俺達何だかんだで付き合い長いよな?」
「どうしたのよ急に」
「いや、何となく――」
「何度も聞いたわね。なに? 私との付き合いにウンザリしてきたの?」
俺は顔を右手で覆ってため息をついた。
まあ確かに大分前にも聞いたかも知れないけどもな。
その返し方はないだろう。
「あのなぁ・・・・・・手毬とは確かに十年以上も関わりがある人生過ごしたけど、だからって付き合いの長さ尋ねただけで、どうして第一声が「嫌いになったか?」なんだ? 流石に傷付くぞ?」
「確かにそうね。けど客観的に見ればウンザリしそうな要素は沢山あると思うけど。逆の立場だったらとっくの昔に縁切ってるわよ」
「自分で分かってるのならちょっとは治す努力しようぜ。自覚してる分、タチ悪いぞ」
何でこいつはこうも自分の評価までドライなんだ。
「治そうと思ったけど駄目だったわ。戦場帰りの兵士の気分って私みたいなのかしら」
「荒れてたとは言え、自分の中学時代と、本当に死が隣り合わせの戦場とを比べるのは兵士に失礼だろ」
「それもそうね。じゃあゴル●13かしら」
「唐突に何でゴル●13が出て来るんだ」
「なんとなく。アイツ用心深さは半端ないわよ。休日過ごす別荘に核シェルター持ってるし」
「何でお前ゴル●13に詳しいんだ」
そんな用心深いのかゴル●13。
「中古の本屋で立ち読みに熱中してたら遂ね」
「ああ、それは分かるわ」
俺も色んな中古本屋で昔の漫画とか立ち読みしたわ。
流石にラノベとか小説媒体ではやらなかったけど。
「話戻すけど、本当に付き合い長いわよね。こんな私にどうしてここまで手を差しのばしてくれるのかしらと思った事はあるわ」
「・・・・・・」
「どうしたの?」
「いや、何でも無い」
改めて言われると照れるなと思った。
こうして普段の手毬を見る分には普通の美少女なんだがなぁ・・・・・・
(本当にどうしてだろうな)
自分でも分からない。
一緒にいるのがもう当たり前だったから?
手毬の事を手毬の親から頼まれたから?
手毬を放っておけなかったから?
手毬と一緒にいるのが楽しいから?
手毬の事が好きだから?
手毬の事をあいし―――
そこまで考えて思考を打ち切った。
「何笑ってるのよ気色悪い」
「いや、何でも無い」
「変な事聞いて悪かったな」と言って俺は話題を打ち切って手毬の前から離れた。
手毬は言っていた。
「結婚ってのはね、その場の衝動でやったらいけないのよ」
「結婚して不幸になるぐらいならいっそ別れた方がいいわ。その方がお互いのためよ」
「結婚は人生のゴールじゃ無くて新しい始まりでしかないのよ。そりゃ楽しい事もあるだろうけど、辛い事ばっか。国はそれを分かっていながら益々国民の生活を苦しくする。だから少子化は止まらないのよ」
手毬の厳しい意見が脳内に流れ込む。
「だけど、それを全て分かった上で愛してくれる人に出会えたら私はその人を祝福するわ」
そして手毬らしくない、手毬の素顔が見える言葉で脳内の意見は締め括られた。
きっとそれが手毬が求めている人に求めている事なのだろう。
「・・・・・・勉強頑張ってみるか」
大切な事は漫画が教えてくれた。
異世界で勇者に敗れてバーガーチェーン店で働く魔王の上司が新人のアルバイトの女の子に語っていた。
理想の将来を目指すと言う事は未来のために今何をするかだと言う。
だからもう少し勉強頑張ってみようと思った。
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