第30話「手毬の盗作騒動推理」
*今回は手毬 サエの視点で物語が進みます。
Side 手毬 サエ
今回の盗作騒動。
話題になってるし、牛島さんも豊穣院さんも興味あるみたいだからある程度調べてみた。
クラスメイトの和泉 ツカサ。
一人で黙々とスマフォを弄っていて、クラスから浮いていてメガネを掛けた影の薄い存在だったけど、ラノベを書いていたらしい。
部活は入ってない。
帰宅部所属だ。
ペンネームまでは分からない。
もう一人は盗作犯の疑いを掛けられている少女。
鑑 ほのか。
首元まで伸びた後ろ髪m横髪の髪の毛と左サイドポニーの茶色い髪の毛で体は出ている所は出ている女の子だ。
あざとい部分があるが可愛らしい女の子でクラスカースト最上位。
ゆるふわなキャラクターで男子からは人気がある。
つい先日までは。
盗作騒動、そして和泉からの暴力沙汰などで評判はガタ落ちだ。
勝手に探偵ごっこまでやっている連中まで出ている始末。
更に女子からは反感を買っていたらしく――嫉妬の類いと思うけど、叩き始める女の子が出ている。
こう言う時、男子よりも女子が恐い。
元々鑑 ほのかは天然なのか計算尽くなのかオタサーの姫・・・・・・魔性の女みたいな振る舞いをしていた。
和泉 ツカサと鑑 ほのかの接点は幾らでも考えられる。
(まあ・・・・・・私達には関係ないんだけど・・・・・・)
今回の一件は正直無関係。
私達に飛び火しなければどうでもいい。
相薗先生には悪いけど時間が解決してくれる。
最悪二人に続きを書かせればそれでしまいなのだから。
審判役は編集部様。
それで決着がつく。
(それにしても意外だったのは鑑 ほのかが、そんな事をした事よね)
正直小説を書くイメージが湧かない。
盗作に走る人間は大抵、創作の心得があるのだが。
何かしらの方法で原本を取得し、冗談半分で投稿したとしても態々ペンネームまで用意し偽装する意味が分からない。その点が余計に疑いを深めてしまう。
ならばもう片方が、和泉 ツカサが言い掛かりを付けているのか?
だがその可能性はある程度あるように私は思えた。
盗作すると言うのも考えてみれば大変な労力を使う。
まず原本の入手。
本文のチェック。
それから投稿規定に合わせるために編集ソフトを導入。
そして印刷。
印刷した原稿をチェックし、パンチで穴を開けて必要事項を記入して投稿する。
このようにかなり手間が掛かる。
何を言いたいのかと言うと、プロ志望とか創作の心得がない奴にこれだけの手間は出来るだろうかと言う事だ。
逆にこの二つの両方かどちらかを鑑 ほのかが持ち合わせていればグレーに近くなる。
ちなみにWEB小説サイトに投稿してからの書籍化デビューではなく、雑誌からの投稿らしい。そうだったらとっくに事件は解決しているだろう。
それに出版社はその道のプロ集団だ。盗作対策ぐらいバッチリしている・・・・・・にも関わらずこう言う事件が起きたのは運が悪かったとしか言いようがない。
無名の新人の原稿をパクッたなどと見ただけで分かるならその人は優秀とかではなくて予言者か何かだろう。
とんだ災難だ。
損害賠償を請求されて一生を棒に振るかもしれない。
出版社サイドも最悪責任取らされて良くて左遷、最悪クビになった奴とか出てるかもしれない。
そんな事を考えながらポチポチと小説を進める。
今回も魔法少女物。
勇気と愛が勝つ物語。
今私達は小説の創作中。
そんな時に盗作騒動など良い迷惑である。
先に語ったがこの問題はぶっちゃけ放置しても解決する問題だ。
容疑者の二人に続きなり新作を書かせるなりすれば解決するのだから。
良い迷惑である。
「手毬さんならもうちょっとバイオレンスな感じの魔法少女物とか書けそうだよね」
牛島さんが唐突にそう言う。
「ええ。失礼なのは承知ですが、そう言う作風が意外と合ってる様な気がします」
それに続いて豊穣院さんもそんな事を言った。
まあ普段の言動からしてそう言うイメージを持つのは無理からぬ事よね。
「・・・・・・考えておくわ」
マキャベリズムとか熱心に語る魔法少女とか面白いのだろうか。
とか考えながら今の物語に集中する。
作品作りは自由に、楽しくやってなんぼなんだから。
自分のイメージとかそう言うのなんて関係ない。
私は私の好きな作品を書くの。
それが作品作りの醍醐味でしょ、木里。
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