第25話「相川 タツヤ」

 Side 木里 翔太郎


 相川 タツヤ。

  

 俺と同じクラスの人間だ。


 ルックスも良くて顔もいい。

 勉強も出来る。

 スポーツも出来る。

 モデルとしてもやっていけそうだ。


 正直自分と同じ高校なのが不思議なぐらいの存在だ。

 豊穣院 ミホとかと同じく何かしらのワケでも抱えているのだろうか。

 

 話は逸れたが、問題は性格だ。

 

 あの大騒動の遠因となった早瀬 ミナトを思わせる部分を節々に感じられるが。

 何処となく「手毬 サエ」と同じニオイがする。

 当たり障りの無い言葉を使うが、時折言葉に鋭さが混じる時があるのだ。


(どうしてか最近つるむようになって来たんだよなぁ・・・・・・) 

 

 キッカケは新島 ハルヤと藤沢 クルミの大騒動から少し経過した後だ。

 

 相川 タツヤと一緒に居る長い黒髪と大和撫子然とした、目鼻立ち整って肌も綺麗な少女――相川の妹を悪漢達の魔の手から助けたのだがキッカケだ。


 それが縁を結ぶキッカケとなった。


「何度も思うけど魔法科高校の○等生の主人公みたいな容姿しているよな・・・・・・」


「お言葉ですが、木里さんのようにサブカルチャーに明るい方で無い相手でない場合、「劣等生」と言う単語を使わない方がよろしかと。たぶん褒めているのは分かりますが、相手によっては馬鹿にされているように受け止められかねません」


「うん・・・・・・分かった。それとやっぱり何か似てるわ」


 口調まで何か似てる。

 今俺と相川は教室で二人で駄弁っていた。

 手毬は女性グループで何やら盛り上がっている。 


「それにしても木里さんといい、手毬さんといい、何か体術の心得でも?」


「いや、そんな物特に――ただ中学時代とか生き残るのでも必死だったからな・・・・・・」


「成る程。つまり、実戦経験の積み重ねで得た力と言うわけですが」


「まあな・・・・・・」


 本当に得たくて得た力ではないが未だに役に立ってしまっている。

 将来ちゃんとカタギになれるのだろうか少し不安になって来てしまった。


「てか、俺以外に話する相手はいないのか?」


「ミキ(*タツヤの妹)からどうも、もう少し他の人との交流を持ちなさいとか言われていて・・・・・・」

 

「おたくの妹さん、兄の君をどんな風に見てるんだ?」


「一度携帯のメアド欄を見せた事がありまして・・・・・・それから度々・・・・・・」


「OK、これ以上は聞かないし、聞かなかった事にしよう」


「はあ・・・・・・気を遣わせてすいません」


 携帯のメアド欄と他人に交流関係を持ちなさいと言う妹の発言でタツヤの交友関係は把握出来た。

 あんまり聞かないでおこう。


「しかし友達と言うのは何処までが友達なんでしょうね」


「それ友達がいない奴が使うセリフだからな?」


 ソースは有名なラノベ。

 友達が多くいる奴は一々そんな定義で悩まないし問題にすらしないだろう。

 早瀬は違っていたようだが・・・・・・アレは最初は特に問題は無かったのだろうが、新島 ハルヤや、藤沢 クルミのせいで疑問を持つようになったのだろう。

 あの二人がいなければ早瀬 ミナトは今もきっとクラスカーストの頂点でリア充だったに違いない。


「そうですか・・・・・・」


「昔からそんな感じなのか? 物の考え方とか口調とか・・・・・・」

 

 手毬と同じく、転生者容疑がある少年時代とかじゃないだろうな?


「教師からは良く年齢の割に大人びている。物の考え方が他の子と違うとは言われてましたが・・・・・・」


「手毬と同じタイプか」


「手毬さんもそうだったのですか?」


「ああ。アイツ何度かそれで悩んでた事があったしな」


 この辺りは手毬は転生者とかじゃない事の証明だ。

 自分の異常さをアイツは自覚していた。

 だから時折、悩んだりしていた。

 自分の考えが戦いを引き寄せている要因の一つだったのだから尚更だ。


「この話は手毬には内緒な?」


「分かりました。ところで――」


「ん?」


「お薦めの小説とかありますか?」


「お薦めの小説?」


 唐突だなと思った。


「そう言うのが好きだと聞きましたが」


「ああ。ラノベの事か」


「ラノベですか?」


「うん・・・・・・漫画と比べるとあんま認知度高く無いんだよな・・・・・・」


 同年代でも、ラノベのターゲット層でもある「ラノベ? 何ソレ?」と言う奴はいる。すっかり市民権を得ているものとばかりと思っていたがそうでは無いらしい。

 こう言う場合は「漫画の表紙と挿絵が付いている小説」と説明してやれば大体は「ああ、アレか」と納得してくれたりする。それでも分からない人はいるのだ。

 手毬の言う通りまだまだラノベは漫画に並ぶコンテンツになるには険しく遠い道程があるようだ。


「ほら? 書店とかで漫画のコーナーの近くにある奴。漫画の表紙と挿絵があって・・・・・・図書室にも何冊が置いてあったと思うぞ?」


「ふむ・・・・・・」


「しかしどうして急にラノベを?」


「いえ、これも友達作りに必要だと思いまして。幸い文章を読むのには馴れてますから」

 

「あー成る程ね」


 てか友達作りに必要とか真顔で言われるとちょっと照れるなおい・・・・・・


「しかしラノベはなぁ・・・・・・」


「どうしたんですか?」


「一応お薦めのタイトルは幾つかあるんだけど、合う合わないはどうしてもあるからな」


「まあ確かにそれは避けては通れない話題になるかと」


「んでまあお薦めした小説が面白くなかったって言われると、「自分小説見る目無いのかな」と思ったりするわけだ」


「想像以上に難しい問題だったようですね」


「まあな・・・・・・普通の小説と違って、ラノベの場合は文章よりもキャラクターを前面に押し出す部分があるからその点でも戸惑うと思う。それに想定している読者の年齢層は俺達ぐらいだからそれを狙った、少年誌の漫画的描写とか展開とかもあるわけだ」


「何となく言いたい事は分かりましたが、今の時代サブカルチャーの経済効果や社会現象は無視出来ない物があります。その点でも知っておいて悪くはないかと」


「まあそこまで言うんなら・・・・・・リスト作ってそっちの携帯に送るわ」


「分かりました」


 そして好みに合いそうなタイトルとか意外性とかありそうなタイトルを選んだ。

 書店とかで手に入りそうな奴とかも吟味する。


「最近は出版社のサイトで試し読みとか出来るし、他にも漫画喫茶とか行けば読めるからそこで読んで見て気に入れば書店行くなり、電子書籍で購入したりすればいいと思う。学校の図書室にも置いてあるタイトルもあるけど図書館とかにも置いてあるタイトルとかもあるから」


「詳しいですね」


「後、表紙のイラストとかで衝動買いするジャケ買いはお薦め出来ないな。特にタイトルで小説の内容を説明してるような奴とか長ったらしいタイトルとか出オチしている奴は危険だ・・・・・・後、WEB小説から書籍化した奴にも地雷がある。何万PV得ましたとかランキングトップになりましたとかでもな」


「WEB小説から書籍化した物はそんなに悪いんですか?」


「言い方が悪かったな。どちらかと言うと安易に選ばない方がいいと思って欲しい。WEB小説にも面白い奴は沢山あるからな。WEB小説は元々掲載されていたサイトの雰囲気とかとマッチして人気が出たのもあるからな。それがプロの舞台に引き上げられると、サイトの雰囲気などで目を瞑られていた悪い点が一気に出てしまうんだ」


「それがWEB小説を安易にお薦め出来ない理由ですか?」


「ラノベ編集部や担当も売れるかどうかも分からない作品より、ある程度実績がある作品を売り出した方がある一定のヒットが見込めるからな。それにWEB小説は言い方が悪いが書籍化出来そうな作品の変わりは幾らでもあるし、作家側も自分の書いた作品が書籍化出来たら、プロの仲間入り出来たらと思う作家は沢山いる。このWEB小説の書籍化ラッシュは何時か衰えると思うけどネットが無くならない限り、途絶える事はないだろうな」

 

 ラノベ編集部も担当もそんな悪徳芸能事務所みたいな真似はしないとは信じたいが、彼達も人間である。

 これはラノベ業界だけで無くサブカル業界全体にも言える事でサブカル業界に身を置く人間全員が善良な人間ではないのだ。


「サブカル業界も闇が深いと言う事ですか」


「まあな・・・・・・」


 何か手毬みたいな事言ってたな俺。

「話を戻して」と前置きして・・・・・・


「とにかくラノベに関するレクチャーはこれで終わりだ」


「分かりました。参考にさせて頂きます」


 相川に送ったリストには考えられる限りのタイトルを送信した。

 中にはライトノベルとは違う、いわゆる大人向けのライトノベルであるライト文芸も混ざっていてそれに関する注釈も入れてある。

 

 出来るだけの事はやった。


 相川はどんなタイトルを読むのだろうか・・・・・・

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