第42話「真相をさぐれ」
Side 木里 翔太郎
昨日の格闘技部での騒動から翌日。
早速だがまたトラブルが舞い込んできた。
真剣に神社にでも行って厄払いでもしてもらおうかな。
サエも頭を抱えていた。
投稿したら教室で待ち伏せされ、件の格闘技部の女子達三人に勝負を申し込まれたのだ。
「夏目先輩はこの事を知っているの?」
「私達の独断よ」
それを聞いて俺と手毬はハァと溜息をついた。
「話になんないわ。帰りなさい」
「そうだな――」
「恐いの? いくら夏目先輩とどう言う関係か知らないけど――」
その言葉が引き金だった。
サエの目つきが変わる。
「正直言うと、これ以上夏目先輩に迷惑をかけたくないし、顔に泥を塗るような真似をしたくないの」
「五月蠅いわね。あんたらみたいな奴のせいで他の部活にも迷惑が言ってるのよ」
「勝手に論点すり替えてんじゃないわよ!! あなた、詐欺で騙された方が悪いって詐欺の被害者に平然と言うタイプ!? 私達を悪者に仕立てあげて潰そうって腹!? それが格闘技部のやり方なの!? 人を陥れる暇があるなら格闘に打ち込みなさい!!」
ピシャリといいつけた。
この手毬 サエの捲し立てるような言い方は一見乱暴に見えるが、ここで引いてしまうと悪者だと印象づけられてしまう。
伊達に三年間、中学で修羅場は潜ってはいない。
「そう言うアンタはキモオタ小説に夢中じゃないの」
「さっきから変な方向に論点すり替えて――こんな事言いたかないけど他人の趣味嗜好に難癖つけたら果ての無い論争になるわよ? 少なくとも私はアンタの言うキモオタ小説で人様に迷惑をかけてない。てかそもそもどうして私達に絡んでくるわけ?」
「それは――」
「どんな思惑で動いているのか知らないけどこれだけは言わせてもらうわ。もしも人様に危害を加えるなら例え夏目先輩に泥を塗る結果になったとしても叩き潰す――」
「――ッ」
その迫力に圧されたのか格闘技部の女子達は去って行った。
☆
「大丈夫か? あいつら?」
「知らないわ」
まあ手毬らしいと言えばそうなのだが絡み方がちいと異常だ。
「俺達、何か知らないところで恨みを買ってんのかな」
「その線も考えられるわね――」
俺と手毬はけっこう恨みを買っている生き方をしている。
何かしらの事件で思わぬ因縁ができている可能性は否定出来ない。
「あの、手毬さん――」
「アンタは――」
茶髪のポニーテールの少女。
藤代 アンナ。
格闘技部の少女だ。
「すみません。ウチの部の人達が迷惑を――」
普通の人間ならここで「別にいいわ」とか「苦労してるのね」とか言うのだろうが手毬は――
「ならどうして絡んでくるのか話してもらうわよ?」
と、突っ込んでいく。
藤代 アンナは「ここでは人が多いですから」と話の場所を変えることにした。
☆
話の場所は殺風景で人気のない廊下を俺が提案した。
早瀬 ミナト――随分昔のように感じるがそいつと密会した場所だ。
あいつは悪い奴ではなかったんだが、友達選びが出来なかったことや指導者としての能力が欠如していたのが不幸でヤンデレ女に刺されて転校することになった。
(*詳しくはシーズン1の13話からシーズン1のラストまで見てみよう)
話を戻そう。
そこで俺は手毬と藤代さんと話を聞くことになった。
「なるほど。周囲の噂に耐えかねてたのね」
「はい――」
手毬の纏めに藤代さんが頷く。
藤代さんが言うには格闘技部のメンバーは実は弱いのでは? と言う風潮が流れていた。
実際は大会での成績は優秀らしいのだが――俺達が過去の事件で派手に暴れ回ったせいで何時しか「格闘技部とあの二人(俺と手毬)、どちらが強い?」と言う噂が囁かれるようになった。
正直俺はこの手の話題は禁句だと思った。
永遠に決着がつかない――いや、つかせてはならない。
決着がついたら最後、取り返しのつかないことになる。
手毬が格闘技部の部員を殴り倒したら不良如きに負ける空手部みたいなレッテルが貼られる。
格闘技部が手毬達より強くて殴り倒しても「格闘技部はおっかなくて大人げない連中」と言うレッテルを貼られる。
どっちにしろ夏目先輩の顔に泥を塗ることになる。
因縁つけてきた連中はそこまで考えているかどうかは知らないが、ある意味最悪な状況だと言って良い。
しかもついさっき公衆の面前(教室)で罵倒したおしたばかりだ。
ますます相手も引っ込みがつかなくなるだろう。
「成る程、私達を部に勧誘したのはいっそ同じ格闘技部に所属と言うことにすれば話は丸く収まるからと思ったからなのね」
手毬の推理に「はい。概ねその通りです。夏目部長とアレだけ仲が良かったのは意外でしたが・・・・・・」と藤代さんは返した。
「それに――これは噂なんですが――」
「噂?」
藤代さんが話し辛そうに話題を切り出す。
俺はまだ何かあるのかとその話に食いついた。
「はい。実は――」
そして語られたのは俺達にとって忘れられない事件の一端だった。
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