第35話「情報屋」
Side 木里 翔太郎
和泉 ツカサ先生から必要な事を聞き出した俺は手毬と別れて部屋にたどり着く。
まるで中学時代に戻ったかのような濃い一日だった。
早瀬 ミナト絡みの一件といい、何度も言うが自分と手毬は呪われてるかもしれない。
(悪魔の世代か……あながち間違いじゃねえかもしんねえな)
悪魔の世代。
手毬と過ごした中学で自分達生徒を指す呪いの言葉。
今あの中学はどうなってるのだろうか。
まあ何か変わった事があるならリュージか手毬から何か知らせてくるだろう。
問題は今の状況だ。
鑑 ほのか。
そしてカラーギャング、レッドスター。
正直かなりきなクサい状況になりつつある。
それに鑑 ほのかの行動が読めない。
実はあまり後先考えずに動いてるとしたらそれはそれでタチが悪い。
だからと言って出来る事は少ない。
やれる事はやった。
後は――正直、牛島さん達や自分に被害が出ないように上手く立ち回るしかないだろう。
☆
Side 手毬 サエ
私は中学時代のある知人の元へ尋ねていた。
知人と言う表現を使うのはそんなに仲が良いわけではないからだ。
そんな奴に態々夜更けに呼び出して会いに行くのは「背に腹は代えられない」と言う奴だ。
名を渡 マトメ(わたり まとめ)。
マトメは同じ中学でその時から、いわゆる情報屋の真似事をしている奴で私の知る限り、一番厄介な相手で一番上手くあの荒れ果てた中学の学園生活を上手に過ごしていた奴だ。
「いや~まさか手毬さんから連絡が来るとは――」
「そうね。自分でもそう思うわ」
私はそいつとネットカフェのワンルームに同席していた。
どうやら高校生になっても情報屋やっているらしい。
と言うか情報屋と言う肩書きを本格化させたような印象だ。
ニット帽にショートカットの年相応な小柄な少女。
ファッションセンスもちょっと男っぽいところがある。
人を食ったような笑みを浮かべて馴れ馴れしい口調を並べているがこいつは例えるなら「ギャンブルに参加するよりも、ギャンブルする人を眺め楽しむタイプ」だ。
マトメは座り心地の良さそうな黒塗りのソファーに座り、PCと睨めっこしながら情報を収集していく。
「タイミングからして、やはりラノベの盗作騒動関連ですか?」
「耳が早いわね」
油断はならないが腕は鈍っていないようだ。「これでも情報屋名乗ってるもんでして・・・・・・」と返して本題に切り出した。
「取り合えず貴方は今、このヤマの最前線の近くにいます。知ってる情報とのトレードと行きませんか?」
「情報のトレードね。貴方が知ってる以上の情報なんて知らないと思うけど」
「いえいえ。どう足掻いても私は傍観者な物でして。実際に居合わせた人々が得た情報がとんでもない値打ちになる可能性があるのです」
「そう・・・・・・相変わらず芝居掛かった口調ね」
「直そうと思いましたけどこれがどうも難しくて・・・・・・」
ハハハと笑い声をあげる。
本当に直すつもりがあるのかどうかは置いといて知ってる限りの情報を渡した。
「成る程、成る程・・・・・・そう言う接点でしたか・・・・・・」
「念の為聞くけど私達の情報ってどんぐらいの額で売り捌いているワケ?」
「そう言うところ嫌いじゃありませんよ。私も同じ悪魔の世代や「女帝」とかと少しでも敵対する可能性は潰しておきたい物でして、自分が信頼出来る客にしか提供してませんよ」
「私はその信頼出来る客ってわけね」
「手毬さん、本当に同い年かと思えるぐらいシッカリしたところがありますからね。その辺り油断ならないと同時に信頼出来ると言うワケでして」
「アンタも相当なモンよ」
「褒め言葉として受け取っておきましょう」
そう言いつつPCをカタカタと動かす。
「ご所望の情報はレッドスターと今回の一件に関わるキッカケとなった鑑 ほのかと言う女性ですね」
「まあね。今のカラーギャング事情なんて知らないし・・・・・・この業界ヤンキー漫画みたいに半年もしたら勢力がガラリと変わるなんて珍しい話でもないし。それに鑑 ほのかも正直行動に謎が多いと言うか行動が読めないというか・・・・・・正直どうなろうが知ったこっちゃないけど、巻き添えだけは勘弁だわ」
「ははは、やはり変わりありませんね。それ、チョチョイのチョイと」
そしてモニターにほのかの顔が映し出された。
見た感じ履歴書の一部をクローズアップした感じだ。
「ウチの学園にでもハッキングしたの?」
「まあそんなところですね。それにしてもどうして貴方の学園に通っているのか不思議な経歴ですよ」
「やはり良いところのお嬢様なわけ?」
「ええ。推測交じりの情報ですが彼女はその容姿から女性にも嫌われていたようです。中学時代の話ですね。まあこの容姿でしかもお金持ち――素直に私立のお嬢様中学にでも行けば話は違ったかも知れませんが、公立の普通の中学校に通ったそうです。親の教育方針だったのかもしれません」
ふと私はクラスメイトの豊穣院 ミホを思い出したが今は関係ないので頭から閉め出す。
「親の職業は?」
「病院の院長。月に少なくとも数十万円以上の物を平然と買えるぐらいの小遣いは渡されていたようですね」
「益々分からなくなるわね。ラノベ盗作騒動の動機がよく分からないわ・・・・・・金銭目的じゃないのかしら?」
「お、いいところ突きますね」
「いいところ?」
「もう真実は見えて来ていますよ」
「・・・・・・まさか」
私はハッとなった。
☆
Side 木里 翔太郎
「そうか・・・・・・そう言う事だったのか・・・・・・」
「ええ。まだ確証は取れてないけど、まず間違いないわ。和泉先生まだ危ないわよ」
突然部屋にやって来た手毬から真相に近いと思われる情報を話された。
てかマトメの奴、本格的に情報屋を始めてたとはな・・・・・・それよりも問題がある。
「確かに手毬の言う通りなら全ての辻褄が合う。どうして盗作したのか。どうして和泉先生なのか。どうしてカラーギャングが出張って来たのか・・・・・・」
創作物の世界と違って現実で起こる犯罪の理由は何時もくだらない理由ばっかりだ。
だがそれを嘆くよりも、後はウラを取ってカラーギャングをどうにかすれば後は一先ず事件解決になるだろう。
イヤな予感はするがな・・・・・・
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