概要
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!あなたは笑うのか。
佐月詩さんの紡ぎだす言葉にはきっと魔法がかかっている。
読者はハーメルンの笛を聞いた子供のように、ついて行かずにはいられなくなるのです。
豊饒な語彙を駆使して生みだされる陽気なフレーズ。
しかし作品世界の底知れぬ深さに息を飲みます。
文章も構成も完成された美しさ。
この連作はまぎれもなく文学です。
そして、どこか宇宙の高いところから人間達の営みを、輝くような無垢な魂で覗いているような、作者の透徹した視線を恐ろしいと思いました。
作者はきっと人間に絶望している。
それでいてこの救いがたい愚かな生き物を愛してやまないのだと感じました。
佐月さんはこんな感想を笑い飛ばすのでしょうが。 - ★★★ Excellent!!!どんどんと作品の魅力に引き込まれていきます。
まずはじめに、作者様の作品構成力の高さに驚きます。
ちょっとエッチな作品で、コメディやファンタジー要素が多い中で、本当に描きたい深いテーマをしっかりと描いており、こんなにもコメディ要素と深い内容が共存できるだなんて、とビックリしました。
思春期のタクミくん(たっくん)を中心にストーリーが展開されていきますので、男の子特有の妄想(あんなこと)や興味(こんなこと)がたくさん散りばめられています。
そこにミキちゃん、そして「妖精」が登場してきて……。
笑ってしまいそうな展開や、続きが気になる展開で、ぐいぐいのめり込んでいきます。
また、本編一気読みも良いですが、応援コメントを書きながら読むのも…続きを読む - ★★★ Excellent!!!『個性的』という言葉では足りない、数多の魅力が絡みあった物語
読みやすい語り口だとか、魅力的な登場人物だとか、先の読めない展開だとか。
この作品の魅力はたくさんあるのですが、どれも本質ではないように思います。あるいはそのすべてが、本質へと読者を近づけるための目くらましなのかもしれません。
行き先のわからないバス――否、ジェットコースターのような、奇想天外な物語なのですが、決して難解ではなく、むしろとても読みやすいです。
ラストシーンにたどり着いた後は、不思議な読後感に包まれ、そして、誰かに薦めたいと強く思います。
そこで気づくのです。「これ、どう言って薦めればいいんだ?」と。
思春期の中学生のエロス溢れる一人称や、作中にちりばめられた中二ネタ、ギ…続きを読む - ★★★ Excellent!!!本当の幸せって、苦しんで手探りしなきゃ掴めない。
とてもよくいる(と思う)思春期の妄想全開の主人公たっくん。幼馴染で、いつも彼にくっついているミキ。
よくある腐れ縁的な雰囲気から始まるこの物語は、少しずつ「不思議な色」を帯びていく。
現実世界に僅かずつ起こり始める、小さな違和感。現実の中に入り込んでくる違和感の絶妙な絡み具合は、読み手を否応無くその世界の奥深くへ引きずり込む。
やがて目の前に全開となる、作者にしか描けない瑞々しく鮮烈な世界。そこに私たちは存分に遊び、笑い、憤り、泣くことになる。
そして、この物語の最後に、たっくんが手にしたものは——。
人間は、自分の欲求の向く場所を常に手探りしながら人生を歩く。その中で、いつ、どこで、ど…続きを読む - ★★★ Excellent!!!根底にあるのはいつでも、純粋な想い
障害を抱える女の子ミキと、思春期に差し掛かり、そんな女の子をちょっと疎ましく思い始めた男の子タクミ。
そんな二人の関係が、ある日現れた妖精により変化していくことで、物語は少しずつ動き始めます。
と言っても前半は……リビドー全開、青春全開なたっくんの暴走(と言ってしまいたいくらい私には衝撃でした)が半端なくて、物語がどう進むのか全然読めない(笑)
ですが中盤で迎える急展開を境に、妖精であるグーターの、そしてどこまでも純粋なミキちゃんの想いが一つの終着点へと帰結していきます。
ラスト、開花したミキちゃんの能力がとても素敵な結末へと導いてくれました。
爽やかな読後感。
根底にある純粋な“想い…続きを読む - ★★★ Excellent!!!鮮度のよい情感と繊細なバランス感覚。騙されたと思って読んでごらんなさい
一言では言い表せられない、むずかしい読後感です。
でも、複雑なアロマと、しっかりとした余韻を感じることができます。きっと、読み終えた方の多くが感じることでしょう。
世界の美しさも醜さも、両方描けているから、こう感じてしまうのでしょう。物語という限られた枠内にも関わらず、奇跡的なバランスで共存しています。見事に表現されています。
そんな複雑な物語なのですが、読み進めることが難しいか? というと、そんなことは全く無く。むしろ、スルスルと読み進めることができるから不思議です。
序盤は思春期オーバーキル的コメディ。……でも、それはオブラート。なにかだいじなテーマを包み込んでいるオブラートなので…続きを読む