鮮度のよい情感と繊細なバランス感覚。騙されたと思って読んでごらんなさい

一言では言い表せられない、むずかしい読後感です。
でも、複雑なアロマと、しっかりとした余韻を感じることができます。きっと、読み終えた方の多くが感じることでしょう。

世界の美しさも醜さも、両方描けているから、こう感じてしまうのでしょう。物語という限られた枠内にも関わらず、奇跡的なバランスで共存しています。見事に表現されています。

そんな複雑な物語なのですが、読み進めることが難しいか? というと、そんなことは全く無く。むしろ、スルスルと読み進めることができるから不思議です。

序盤は思春期オーバーキル的コメディ。……でも、それはオブラート。なにかだいじなテーマを包み込んでいるオブラートなのですが、そのオブラート自体が美味しいという感じでしょうか。

「おまえオブラートにどんだけこだわっているんだよ?」と、ツッコまざるを得ない。でも「……いい仕事だったぜ」と、作者に向けてサムズアップをキメます。

フェアリーウェイトは、個人的には、押切蓮介をイメージさせる雰囲気を纏った作品だと感じています。もし画を充てるなら押切蓮介で決まりです。そのまんまです(笑)

このような物語を表現する場があったということ。このような希有な物語を読むことができたということに、感謝をせずにはいられません。そして、これが『カクヨム』という場の可能性だと思います。

この作品を読めば、きっと『さつきまる』という、カクヨム作家のファンになるはず。これからの活動に期待します。

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