本当の幸せって、苦しんで手探りしなきゃ掴めない。

とてもよくいる(と思う)思春期の妄想全開の主人公たっくん。幼馴染で、いつも彼にくっついているミキ。
よくある腐れ縁的な雰囲気から始まるこの物語は、少しずつ「不思議な色」を帯びていく。
現実世界に僅かずつ起こり始める、小さな違和感。現実の中に入り込んでくる違和感の絶妙な絡み具合は、読み手を否応無くその世界の奥深くへ引きずり込む。
やがて目の前に全開となる、作者にしか描けない瑞々しく鮮烈な世界。そこに私たちは存分に遊び、笑い、憤り、泣くことになる。

そして、この物語の最後に、たっくんが手にしたものは——。

人間は、自分の欲求の向く場所を常に手探りしながら人生を歩く。その中で、いつ、どこで、どんな風に「幸せ」というものを掴むのか。それはきっと、誰にもわからない。
けれど——少なくとも、ふわふわ漠然と時間を過ごすだけでは、きっと本当の幸せにはたどり着けない。本当の幸せって、苦しんで手探りしなきゃ掴めない。

そんなことを最後にほんのりと感じさせてくれる、とてつもない広さと深さを持った物語。
ぜひ、多くの方に楽しんで欲しい作品だ。

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