あなたは笑うのか。

佐月詩さんの紡ぎだす言葉にはきっと魔法がかかっている。
読者はハーメルンの笛を聞いた子供のように、ついて行かずにはいられなくなるのです。

豊饒な語彙を駆使して生みだされる陽気なフレーズ。
しかし作品世界の底知れぬ深さに息を飲みます。

文章も構成も完成された美しさ。
この連作はまぎれもなく文学です。

そして、どこか宇宙の高いところから人間達の営みを、輝くような無垢な魂で覗いているような、作者の透徹した視線を恐ろしいと思いました。

作者はきっと人間に絶望している。
それでいてこの救いがたい愚かな生き物を愛してやまないのだと感じました。

佐月さんはこんな感想を笑い飛ばすのでしょうが。

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