Epilogue

エピローグ

『フフッ、終ったと思ったか。寧ろこれが始まりだという事が解らないのか』

『デュラれもん、もう充分だ。静かに終わらせてくれ!』



 誰かがテレビをけたようだ



『良い雰囲気なんてクソ食らえだ。感動的な幕引き? ハンッ、反吐へどが出るぜ』

『もう限界なんだ。もうこれ以上……』



 これは確か、ミキが好きなドラマだったはず。

 それにしてもドラマのくせに長寿番組だなぁ。



『ラビ太くんはそれで良いのか。それが君の本心なのか』

『それは……、しかしもう差し出せる物は何も無いんだ』



 僕が誘拐されてから、二度目の夏を迎えた。

 普通なら高校生になっているところだが、僕は視覚特別支援学校しかくとくべつしえんがっこうに通っている。


 聞き慣れない名称だと思うが、要するに盲学校もうがっこうだ。



『あるだろう。君の胸で鼓動を繰り返すパンドラの箱は飾りなのか』

『……!』



 中学3年生の頃は何かと面倒が多く、特別支援学級だったミキの気持ちが少しだけ解ったとだけ伝えておく。しかし視覚特別支援学校に入学してからは平和そのものだ。



『ラビ太、待って!』

『ママン、止めるな。これは奴等と俺との戦いだ』



 視覚特別支援学校では闇の中で授業を受けて、闇の中で友達と会話をする。

 そう、友達が出来たのだ。


 今までプライドが邪魔をして仲の良い友達は出来なかったが、盲学校に通う様になってからは何故だかプライドを気にせず意思疎通が上手く出来た。



『そんなのラビ太じゃない! 私の好きなラビ太は――ウグッ』

『煩い女は嫌いだぜ。俺が好きなら黙って見てな』



 同じ仲間だという認識が僕のちっぽけな価値観を取り払ったのか、あるいは大切なから教わった重さに気付いたからか。


キスで黙らせるなんて卑怯よ! バカバカ、ラビ太の大バカ!』

『すまない。これがお前に贈れる精一杯だ。俺のことは忘れてくれ』



 ミキも高校には進学せず、職業訓練学校に通っている。

 彼女は将来『唐揚からあげ』になりたいらしく、その為の技術を学んでいるのだ。


 唐揚げでは意味不明だが、要するに調理スタッフになりたいらしい。



『嫌よ! どうしてもと言うなら私を抱いてから行って!』

『ママン、お前……』



 僕と彼女は毎日一緒に家を出て、帰りも待ち合わせをして一緒に帰る。

 ミキは僕と手を繋ぐのが自分の役割だと言わんばかりに、会うと直ぐに手を握ってくる。



『ふう~、カスピ海を帆船はんせん彷徨さまよってる気分だったわ~』

『ラビ太は帆船じゃなくて、笹舟ささぶね並みだったけどね』



 学校では闇の中で活動している僕だが、彼女が一緒だと世界が一気に色付き始めるのだ。


 それは気持ちの面でも、実質的な面でも。



『未練を断ち切ったかラビ太くん。ならば聖戦を終わらせてこい!』

『デュラれもん、ママンの事は頼んだぞ』



 何時の頃からかミキと手を繋げば、彼女の見た景色が僕の頭に流れ込んでくるようになった。



『安心しな。ママンなら毎晩俺の隣で寝てるぜ』



 それはとても幻想的な世界だった。

 妖精や精霊、そう呼んでも過言ではない存在が沢山漂っていた。



『――メッサエロイデの提供でお送り致しました』



 但しフィードバックに限界があるのか、それとも僕の脳がそれを見るように出来ていないのか、大体はぼやけているのだが。


 そしてまれに未来もえた。


 だから僕達は明日、その未来を確かめに行くつもりだ。



 ・



 公園の脇に1本だけ生えている向日葵ひまわりがある。


 僕達が植えたそれは、雄々しくりんと咲き誇っている。


 まるであの日の陽炎かげろうを見ているようだった。


 揺れる木漏れ日が絶え間なく、モザイクに反射してキラキラと輝いている。


 大切な重さを教えてくれた心友しんゆうとの再会だ。


 僕とミキは嬉しくて、ギュッと手をつなぎながら駆け寄った。




 そして同じ言葉を紡いだのだ――










Story end



Thank you very much Let's meet again somewhere



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フェアリーウェイト 佐月 詩 @mokimoki1

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