中二病でも異能少女まじかる☆ミキは色々したい 前編
私を
その
忘れはしない。 忘れはしない。
何時かまた、悠久の時を経て巡り合えるだろうか……。
・
「成る程。『外界と
「ミキ、何言ってるのか全然解らないぞ。三◯堂の『当て字・当て読み漢字表現辞典』でも読んだのか?」
「ごめんなさい。直ぐに『
ゆっくりと起き上がり身体に違和感が無いかを確かめた後、『グーター』を肩に乗せて部屋から出た。
グーターは以前の威圧的な巨体から小指程のサイズになってしまったが、それでも私を高みに導いてくれた彼が消滅しなかった事には愉悦しか覚えない。
消滅してもおかしくないくらいに力を使ったのだが、結果的にギリギリ持ち堪えてくれて良かった。
意識の底で交わした彼とのやり取りは、全て覚えている。
彼が消滅寸前まで縮小してしまったのは私のせいだ。
しばらく力を使わずに蓄えて欲しいと思う。
居間の時計に目をやると丁度午後7時になるところだった。
両親はまだ帰っておらず、この家全体が静寂に包まれていた。
直ぐにでもたっくんを見つけに行きたいが、私の覚醒した『視る能力』は
感情だけで夜に外出するのは女の身として得策だとは思えない。
今、私に何かあればたっくんの救出が遅れてしまう。
だから居場所だけは今日中に把握して、明日の朝一から行動しよう。
リモコンのスイッチを入れてテレビをつけた。
毎週この時間は実写ドラマの『デュラれもん』を欠かさず見ている。
1万年後の未来からやって来た対戦車凡用猫型決戦兵器、コードネーム『デュラれもん』と、そのマスターであるラビ太が人類を浄化して行く物語だ。
オープニングテーマが流れている間に、カップ麺用のお湯を沸かしておこう。
えーと、ケトル、ケトル……あった。
グーターのおかげで私は、自分の中に眠っていた可能性という名の力を把握できた。それまで偶発的にしか使えなかった力をコントロール出来るようになったのだ。
『君は実に愚かだな……。
しかしそれが、ラビ太くんの選択と言うのなら仕方がない。
望み通り道具を出してやろう。ほら、裂波黒竜魑魅魍魎剣だ、受け取れ』
『グハッ、右目がっ! これが奇跡の代償と言う事か』
しかしそれは期限付きの能力。
2日もしないうちに私は元の状態へと戻るだろう。
不確定要素を排除して後30時間。
それまでに、何とかたっくんを助け出さなければならない。
『くっ……こんな時に耳の古傷が疼きやがるぜ』
『デュラれもん、大丈夫か!』
『おっと余計な心配をさせちまったようだな。問題無い、来るぞっ!』
私の力でたっくんを探す事は出来る。
でも、それからどうすれば……。
日頃から信頼のない私の言葉を、ママ達や警察の人が信じてくれるとは到底思えない。
『フフッ、1万年もの時を
『デュ、デュラめろーん!』
私だけでやれるのか?
犯人の目星はついている。
奴に私は立ち向かえるのか。
『メロンではない、れもんだ』
『良かった! 生きてたんだな』
過去の記憶を手繰り、奴の動きを覚え込めば或いは……。
しかし私の身体能力だと動きを覚えたところで到底敵うとは思えない。
一体どうすれば……。
『――ッサエロイデの提供でお送り致しました』
悩むんじゃない私!
たっくんを助けないといけないんだ!
無理でも何でも、やるしかないんだ!
・
簡単に夕御飯を済ませてから、部屋へと戻ってベッドの縁に座る。
意識を集中させ、そして徐々に徐々に広げて行く。
犯人がこの街の人間であるのは間違いない。
薄く広く街全体を覆うように意識を広げれば、きっと探し出せるはず。
この星に漂う数多の情報達よ。
私の願いに答え、天からの視点で像を結び給え。
願わくば、彼の者の在り処を視る者たる私に示せ。
そして
天の俯瞰から見た街は、沢山の小さな宝石に彩られた箱庭のようだった。
そこから徐々に下って行く。
一点ではなく全体を同時に見ているため、頭の中は映像情報でショート寸前だ。
激しい痛みが、ひっきりなしに脳を襲う。
更に下って行く。
米粒だった人々がだんだんと大きくなって行く。
頭が痛い。映像の奔流に焼き切れてしまいそう。
脳を酷使し、建物を透過し、全ての情報を整理して行く。
鼻血が垂れている、毛細血管がブチ切れて左の
正直演算が追いつかない、正直身体がもう持たない、正直精神が破錠する。
もう駄目だ、本当にこれ以上は――
限界を感じて気が遠のきそうになった時、やっと彼を見つけた。
頭から流れ出た血が固まって後頭部に張り付いている。
床に転がされて意識もなく、ぐったりとしているその姿。
私が逢いたくて逢いたくて逢いたくて、どうしようもなく愛しいと思える唯一の男性。
見つけた。
やっとたっくんを見つけた!
私の家からたっくんの居場所までの道をトレースする。
時間にして30分も掛からない距離だ。
「見つけたわ……」
「うむ。よくやったな、ミキ」
「ええ、ありがと……」
初めての大規模な能力行使に脳も身体も限界だったらしく、私の意識はそのまま落ちていった。
落ちる瞬間、血を流しピクリとも動かなかった彼の姿が脳裏をかすめた。
たっくん、待ってて。きっと私が助けてあげる……。
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