Summer vacation [C] part
僕達の現在
回想を再開しよう。
と言っても、もう
僕の時間は止まっていて、そこをグルグルと廻っている。
ミキとの
僕は『誰か』もしくは『何か』に後ろから殴られた。
その感覚は覚えている。
しかし『誰に』『何処で』『何のために』殴られたのかが解らない。
解らないが、殴られてからは深海にいる事だけは確かだ。
・
気が付くと、まるで圧力と重力に誘われるように海の中を落ちていた。
さっぱり意味不明だった。
浮上しようと
身体中に水が張り付いて動きが鈍っている感覚はあるが、呼吸が苦しくなる事はないし水圧で押し潰される事もなかった。
だから落ちるに任せていたら、何故か『くぱぁ(BOYS BE 自主規制)』のお姉さん達に囲まれていた……。
・
何時の間にか竜宮城にいた。
ここに辿り着いた経緯は
僕とお姉さん達は龍宮城に着くと直ぐに、狂おしいくらいに求め合った。
何度も何度も、時を忘れて求めあった。
脱童貞の喜びを噛みしめる暇もなく求めあった。
僕は初体験の相手が誰だか解らなかった。
そしてその日から、暗く深い神秘的な場所で快楽に
・
お姉さん達は入れ代わり立ち代わり、僕を
僕もお姉さん達を
50人もいるので大変だった。
51Pとか正気の沙汰じゃないと思った。
何時の頃からか、その生活にミキが加わっていた。
ミキとのファーストキスは汚い神社の境内だったけれど、そのあとはロマンチックなシチュエーションに恵まれて本当に良かった。
ミキも合わせて52Pを毎日毎日、ルーチンワークのように
初心者は3Pからだろ! という甘えは許されなかった。
僕はもう煙しか出なかった。
龍宮城だけに煙とか、
・
僕はミキの事が好きだ。
お姉さん達の事も好きだが、それは何だか別の感情だった。
お姉さん達からは愛が感じられないし、僕も彼女達を愛しているとは言えなかった。
例えればそう、アニメのキャラクターに恋をして『嫁』とか言っても、全然生産性が無いのと似ていた。
自分の画像を上げたTwitter IDでアイドルにフォローを入れ、フォロバと返信待ちするのと似てい――いや、これは
何が言いたいのか解らなくなった。
とにかく、ミキといる時だけ暖かさや愛しさを感じた。
・
ミキは何時も僕を見ていてくれる。
僕も何時もミキを見ている。
お互い惹かれ合っているのが解るので、ミキの事が何より愛しかった。
だから僕とミキは、何度も何度も抱き合った。
彼女の豊満な胸を揉みしだき、そのアヘ顔に飽きること無く興奮し続けた。
何度も何度も『愛してる』と
何時しか僕の周りにいたお姉さん達が一人また一人と居なくなり、最後にはミキだけが
僕にはミキがいて、ミキだけがいて、ミキしかいない。
それで充分幸せだった。
・
ミキと竜宮城で暮らすようになってから、どれだけ時間が経過したのか解らない。
僕は毎日ミキと愛を確かめ合い絆を深め続けた。
いつの間にか僕達の間には子供が出来ていた。
子供が出来た事が
愛について色々と考えるようになり、以前の僕は口先だけのエロガキだったと気付いた。
セックスを重ねて心に余裕が出来たせいもあるが、なにより子供に恵まれて自分以外の人生を考える立場になったからこそ気付けた事だ。
キスをしながらデカルトの言葉を思い出し、彼女を抱きしめながらニーチェの言葉を反芻した。
愛とは自分を大事にしながら相手の事もしっかり大事にしなければいけないのだと思った。
その愛を、変わらぬ大きさで子供に向けなければならないのだと思った。
そしてより多くの人に偏見無く愛を向けなければならないのだと思った。
僕の両親とミキの両親の関係が、あんな感じなのはこういう事かと思った。
その境地に立った両親を尊敬した。
僕も彼等のようになりたいと思った。
それは嘘です。
・
さて僕の回想はここまでで、これから先は現在進行形になる。
といっても僕とミキと子供しかいない竜宮城で、
こんな3人しかいない
この龍宮城に何時までも何時までも囚われてしまっている。
実は薄々
ここは竜宮城などではないことに。
でもここが
怖くて仕方ないから回想に
怖くてどうしようもないから、深く考える事を先送りにしたのだ。
怖くて怖くて、本当にどうし――
「……クミ」
「タクミ、聞こえるか」
誰だ? この藤岡ひ◯しみたいな腹に響くバリトンボイスは。
「タクミ、聞こえているんだろ? 答えてくれないか」
僕の事をタクミと呼ぶのは誰がいたっけ。
父親、母親、クラスメイト……どれもバリトンボイスではない。
でも何処かで一度聞いた事があるような。
「タクミ……うーむ、完全に沈黙してしまっているのか」
それも最近ではなく、竜宮城へ来る前に……
…… …… …… グーター?
そうだ、グーターだ!
あまりにもその姿が僕の想像と掛け離れていたので、記憶の最底辺に追いやっていた。
プロレスラーの様な巨体で、ボディビルダーの様な筋肉で、それでいて消しゴムくらいの重さしかなくて、餌にあぶれたライオンみたいな髪型で、全裸で、眉毛だけキリッとしてて、下腹部がモザイクのグーターだ!
「グーター?」
「おお! 目覚めていたか」
グーターと会話を始めた途端、子供達が消え、そしてミキが消えた。
「ミキっ! ミキミキミキミキッ!」
「落ち着けタクミ。大丈夫、ミキはちゃんと存在している」
「でもミキが消えた! まるで泡が弾けるみたいにミキが!」
「それはミキじゃない。タクミが創り出した幻想だ」
幻想……。
時の止まった非現実的な世界、
幻想……。
そう言われればしっくりくる。
それにミキは……彼女は何か違った。
考えないようにしていたが、今ならハッキリと解る。
あれはミキじゃない。
彼女が語る言葉は『愛してる』だけだった。
僕がいくら『もう貴方から離れられない。言ってみて』とお願いしても『愛してる』としか囁いてくれなかった。
それに僕の脳内にはミキのAボタンとその周辺パーツがエッジループ的に構成されている。何時でも何処でも360°回転させて正確に知覚する事が出来る。その精密さはアメリカからの依頼で宇宙船の部品を請け負う日本メーカーが有する技術力を
だから何か違うと感じたのだ。
考えるのを放棄していても
だってミキのオッパイは『あんなにデカくなかった』のだから。
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