工程03 ストーリー(梗概)

●概要

企画プロット上の記入項目「ストーリー」を記入する。



⚫︎工程の趣旨

ストーリー、つまりあらすじや梗概と呼ばれるものを記入する部分。

これまでの記入項目で、この企画書を読む人間への事前説明は完了しているはずなので、「これらの材料を使ってこんな料理を作ります」と説明する。

また、改めて自分が書こうとしているストーリーを確認するために必要な工程でもある。


新人賞でよく使われる規定「800文字以内」であらすじを書く訓練にもなるので、繰り返し書くことをオススメする。



⚫︎コツ

……と、ここでいきなり「あらすじ」書ける人は才能があります。

何故なら「三種のコンセプト作成」のどの工程にも、あらすじを作るための工程が無いので。


書ける人はそのまま書いていただいても問題ありません。

ですが、そうでない方は僕のやり方を参考にしてみてください。




まず、「物語コンセプト」の設計段階で作った

「メインプロット」と「サブプロット」のそれぞれの展開表を用意します。

それぞれの展開表には大雑把な展開が書いてあるとおもいますので、

先にこれらを3行程度の文章にまで膨らませます。

以下、例文です。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

例:

「メインプロット展開表」

・セントラルクエスチョン「首都圏全域へのバイオテロは防げるのか?」

 その答え「イエス」

・展開

1、犯人からの犯行予告「細菌兵器を都内各所に隠した」

2、隠し場所の手がかり1

3、隠し場所の手がかり2

4、細菌兵器の発見。事件の解決。


これを


1、テロ組織憂国騎士同盟から「獄中の仲間を解放しろ、さもなくば都内全域に日本政府が極秘裏に所有する細菌兵器をばらまく」という犯行予告があった。

警視庁公安部の刑事である主人公は細菌兵器の捜索を行うことになる。


2、外事課からの情報提供によって、彼らが手に入れたのは米国主導で研究していた新型の細菌兵器と判明。主人公は米軍筋からテロ組織の入手経路を辿り、手がかりを掴む。


3、細菌兵器の発見と同時に行われた、テロには屈しないという政府の声明。しかし発見された兵器はダミーだった。タイムリミットが近づく中、主人公はダミーの兵器を収めていた容器が、最後の手がかりだと気づく。


4、タイムリミット1時間前。主人公たちは犯人たちのアジトと、隠された細菌兵器を発見する。犯人は自身の体内に細菌兵器を取り込んでおり渋谷で自殺しようとする。だが主人公は、かつて親友だった彼を殺すことで犯行を止めた。


というような感じに膨らませます。

ここにはサブプロットは記入していないため、ところどころ展開が不自然ですが、問題ありません。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



同様にサブプロットも、

それぞれの物語の目的を鑑みて、展開の詳細を書き出します。

またコツとしてはパソコン上ではなく、展開ごとに付箋や単語帳に記入しても良いです。


ここに加えて「セットアップ」と「エピローグ」の展開を別途用意します。


「セットアップ」には、世界設定の「核となる要素」の説明を記入します。どのようにして現在の世界になったのかを、1〜2行にまとめます。


「エピローグ」は、文字通り物語のオチ。これも1〜2行。

どんな読後感を読者に与えるつもりなのかを念頭に置いて考えます。

……が、これは後から記入しても良いです。どんな読後感を与えるのかどうかは、作っていくうちに自分の中に出来上がったりするので、最初はスルーしても良いと思います。



と、ここまできたら手元には3行で説明された展開が16個に、セットアップとエピローグがあると思います。


次はこれらを書く順番を決めていきます。

付箋や単語帳に書いた場合には、実際に並べてやると分かりやすいです。




まず「セットアップ」を冒頭に、「エピローグ」を最後に置きます。


次に「メインプロット」を時系列順に、展開と展開のあいだを少し空けて置いていきます。


次に「サブプロット」のうち「オチ」に相当する部分を配置していきます。

配置する際には「どれが一番盛り上がるのか」「この順番は徐々に盛り上がるような流れかどうか」を意識して配置します。


次に残った「サブプロット」の展開を矛盾が発生しにくいように配置していきます。


この結果として、

大雑把にですが16展開+2展開のストーリーが出来上がっているはずです。



……ですが、このままだと800文字に収まりません。3行×16+4行で52行

なので、ここから文章を再構成します。

メインプロットにサブプロットの文章を組み込むような形で、新たに文章を書き起こすようなイメージです。

以下例文。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

例:

「メインプロット3」

細菌兵器の発見と同時に行われた、テロには屈しないという政府の声明。しかし発見された兵器はダミーだった。タイムリミットが近づく中、主人公はダミーの兵器を収めていた容器が、最後の手がかりだと気づく。


に、


「サブプロット1」

幼少期。主人公は親友と正義の味方ごっこをしていた。悪の総帥役だった親友は主人公の宝物をある場所に隠したと言う。ヒントは特撮ヒーローの隊員証。しかし主人公は未だにそれを見つけられずにいた。


を合わせると、


細菌兵器の発見と同時に行われた、テロには屈しないという政府の声明。しかし発見された兵器はダミーだった。タイムリミットが近づく中、主人公はダミー兵器を収めていた容器に記された特撮ヒーローのマークを見て思い出す。かつて親友とやったヒーローごっこ。その時に隠された宝物の在り処がどこだったのかを。


という感じになります。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


これを繰り返して、互いに関連性のある文章を合成していきます。

ある展開は回想シーンとして、ある手がかりは提示する順番を入れ替えます。


また、

これらの展開の合成と文章の再構成を行う際には「三幕八場」を参考にした方が無難です。「三幕八場」は「どこでどんな展開をすれば良いか」が明確に記されていますので、全体を整理する時には重宝します。



これで、最終的には「あらすじ」が1000文字程度で出来上がるでしょう。


2枚verの時には、サブプロットの一つを削るか、必要性のない展開を削って、メインプロットのみに絞ったあらすじにする事で800文字に抑えます。


4枚verの時には、このまま1000文字のあらすじを記入します。




⚫︎メモ

付箋や単語帳を使って展開を入れ替えるというのは、実際にプロがよく使う手法らしいです。

しょっちゅう聞くので、誰が使っていたとかまでは覚えていません。申し訳ありません。


あと、このあたりは伊都工平先生のブログをチェックしてみると良いと思います。

三つのストーリーを用意してその順番を組み替えて物語を作るという辺りは、かの先生のブログを参考にしたものなので。


僕の場合は「メインプロットという主軸上にサブプロットを配置する」という考え方でやってます。一本、なにか軸が無いとどうしても物語が行方不明になりがちなので。



⚫︎参考元

伊都工平:ブログ「Scratch Line」(※敬称略)

そのほか。

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