工程01 キャラクターの三次元要素作成
⚫︎概要
メインキャラクターの
「哲学と態度」「感情的気質と反応」「意思決定と行動へ至るルーチン」
の三点を決める。
⚫︎工程の趣旨
ざっくりと言えばキャラクターの性格を決める工程。
登場人物の言動に統一感を与え、かつ魅力を引き出すためのもの。
また、定型的な行動のみでキャラクターを描いてしまうと、キャラクターに人間味が薄く感じられてしまう危険があるため、それを避けるために行う。
主に「キャラクターコンセプト」工程で作成した
「キャラを応援したくなる要素」と「キャラに憧れさせる要素」の二点を成立させるように設計していく。
言い換えると「キャラの魅力に裏付けを作る」工程。
なお注意点として、
この工程では「物語開始時点」のキャラクターを構築していく。
⚫︎コツ
少し長くなります。
まず前提としてキャラクターの内面は、
1、キャラクターが持つ哲学が、ストーリー上の物事への態度へ繋がる。
2、感情的気質と反応は意思決定と行動そのものへと影響する。
3、キャラの「哲学と態度」と「感情的気質と反応」を読者が知るのは、キャラクターの意思決定の様子と行動そのものから。
4、「哲学と態度」と「感情的気質と反応」の優先度合いはキャラによって異なり、それが性格を示すことにもなる。
という考え方で、この工程を作っています。
(異論は多々あると思いますので、あくまで僕の考え方です)
よって、
まず「哲学と態度」「感情的気質と反応」を決め、
それらがどのようにキャラクターの思考や意思決定、行動に影響するのかを「意思決定から行動へ至るルーチン」としてまとめます。
キャラクターの性格の詳細はこれによって決まるので、「企画プロット」にて作成したものと齟齬が生じた場合には、こちらのプロットを優先します。
但し、
「応援したくなる要素」と「憧れる要素」をきちんと内包している事が条件です。
キャラクターの魅力に裏付けを作る工程なので。
では以下に三要素作成の具体的な手順を00〜03に分けて書きます。
・00:キャラクターの魅力について整理。
準備段階として、既に作成した「キャラコンセプト」「企画プロット」から、
「応援したくなる要素」「憧れる要素」「キャラ類型の詳細」「背景」あたりを参考にして、キャラクターの持つ魅力の根源となっているものは何か整理する。
キャラ構築の際の軸となる要素を明らかにしておいた方が無難なので。
やり方としては「応援したくなる要素」と「憧れる要素」を見比べて、それが「ある共通の要素が原因」であると定義するように進めます。
例えば、「異世界召喚もの」の主人公の魅力に、
「応援/共感要素」→「ひねくれてしまった引きこもりのオタク」
「憧れ/代行」→「死に戻りの能力によって、何度も死にながらも誰かを助けるために奔走する行動力」
が、あったとします。
この2点に無理やり共通項を見つけます。
例えば自分の命を顧みず誰かを助けたいと願い行動するのは、利他的な考え方ですからこの人は恐らく「根は善人」でしょう。ある意味で「純粋さ」があるのかもしれません。
ならば、それが原因で「引きこもり」になったのかもしれない。「純粋さ」故にまたは「善人」であるが故に、「良いことをすれば必ず報われる」とは言い難い矛盾を抱えた現実に打ちのめされてしまったのが理由ではないか。
……と、こんな感じでまとめ、これを軸にして三要素を作っていきます。
・01:キャラクターが持つ「哲学と態度」について決める。
00の内容と、キャラの「背景」「類型の詳細」を参考に作ります。
「哲学」というのは、キャラクターの人生観。
世界全体の捉え方でも良いし、ある特定の状況下での考え方でも良いです。
「キャラの目からは世界がどう見えているのか」を決めて下さい。
そして「態度」というのは周囲の状況や出来事、他人に対する見方や対応の全般を指します。「哲学」を通して世界を見た結果として、そのキャラはどういう「態度」で世界と接するのかを決めて下さい。
例えば、
幼少期に親が詐欺にあって両親を失ったキャラが、その経験から「人間は利己的な生き物である」という哲学を得たとします。
彼はその哲学故に、世間に起こる感傷的な出来事を冷笑し、小馬鹿にするよう態度をとる。
というようなものです。
ここに「00」で見出した軸を加えてみると、
「そんな感傷的な人間を嘲笑し、あえてその欠点を小馬鹿にするのは、自分のように傷ついて欲しくないという気持ちの裏返し」
なんて見て取れるかもしれませんし、逆にそんなものは欠片もないかもしれません。その差がキャラクター性になるはずです。
・02:感情的気質と反応
キャラクターの感情の起こりかたや好みなどを設定する。
この二点はざっくりと、
「気質」は、起こった出来事に対して喜怒哀楽や好き嫌いなど、どの感情が起こるのか。
「反応」は、その起こった感情の度合いはどの程度なのか。感情がどのようにキャラクターへ影響を及ぼすのか。
という解釈で良いと思います。
作成の際には主に「応援したくなる要素」と「憧れる要素」の二点を参考にします。
「応援」や「共感」、「羨望」や「代行」といった魅力は、結局キャラ本人が持つ性質によって生み出されたもののはずです。
なので、それぞれの魅力が生まれる土壌となる「感情的気質」と「感情的反応」を決めていきます。
また、「哲学と態度」と「感情的気質と反応」は相互に影響しあっています。
起こった感情が「哲学と態度」にフィルタリングされて、表へ出るのか。
そもそも「哲学と態度」が「感情的気質」によって生み出されたものなので、フィルタリングされず素直に反応として現れるのか。
思慮深く内向的なキャラであれば前者でしょうし、裏表のない直情的なキャラであれば後者でしょう。
この関係性によってもキャラクター性が表せるはずです。
・03:キャラクターの意思決定から行動へ至るルーチン
「01」と「02」で設定したものは、物語上ではすべてキャラクターのモノローグや台詞、行動そのものによって表されて読者へ伝わります。
たとえ作者が「こいつはこんなキャラです」と言い張っても、作中でそれが伝わる行動をしてなくては読者は納得しません。
なので、どうやって伝えるのかを先に決めておきます。
やり方は何でも良いですが、僕はフローチャート形式でまとめます。
ざっくりと
1「起こった出来事」
2「出来事に対してキャラが抱く感情と反応」
3「哲学と態度を通した上で、出来事の捉え方」
4「思考の方向性と、実際に起こす行動」
といった形です。
このフローチャートそのものの順番を入れ替えるだけで、キャラクターの性格が変わります。例えば「3」までいった後「2」へ戻って悩み続けるキャラや、そもそも「3」をすっ飛ばして、いきなり「4」へ至るキャラなどが描けます。
当然、これらは00〜02で決めた内容を参考にします。
直情的なキャラだとわかっていれば、モノローグを減らし実際の行動と台詞によってスピーディーに描き、内向的なキャラであれば実際に行動を起こすまでに何ページか使っても良いでしょう。
この「行動に至るまでのルーチン」を描くことは、思考の内容まで自由に書けて物語内時間を自由に操れる小説がとても強いです。なのでそうした「キャラクターの描き方」をここで決めておくと、キャラの印象を固定しやすくなるはずです。
(逆に映画やドラマではモノローグやダイアローグは最小限にするように言われるそうです。場面の変化が少ないので間がもたないわけですね)
⚫︎メモ
この工程はこれまで「キャラクターの性格」という形で3行程度でまとめていたものを「このままだと定型的なキャラしか作れなくねえか?」という判断から作ったものです。
ですが、どうも発展途上の工程だったりします。
もし「自分はこうしている」という方法論や、参考書籍、ブログ等がありましたら教えてくれると助かります。
⚫︎参考元
「ハリウッドリライティングバイブル」リンダ・シガー
※敬称略
そのほか、いくつかの執筆指南ブログから。
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