工程06 読者が憧れる要素を決める

⚫︎概要

キャラクターの類型に合う形で、読者が憧れる要素を決める。



⚫︎工程の趣旨

前工程とは逆に、読者がキャラに近づきたいと思わせることで、

読者とのコネクション(繋がり)を確立させるための工程。

つまり読者がキャラクターが立つ位置まで「上がる」かたち。

キャラクター類型によって、設定できる範囲がかなり限られるため、

それに沿った形で設計することになる。


登場人物は魅力的でなければ、読者は好きにはならない。

という当たり前の話の部分。



⚫︎コツ

読者が「憧れる」というのは、

読者にとっての「理想」をキャラクターが持っているということになる。


「理想」と言うだけでは、判断基準として曖昧なので、

この工程表では

「キャラが読者がやりたいと思っていても出来ないことを代行するかどうか」

「読者がそのキャラに成り代わりたいと思えるかどうか」

を判断基準とする。

例えば、


・むかつく悪党をぶっ飛ばして、罪を償わせる

・惚れた女のために、全てを投げ出して戦う

・大企業のオーナーでありながら、強化外骨格を纏って悪と戦う


というものが当てはまる。

これらは「代行するかどうか」という部分。


また「成り代わりたい」という意味ならば、


・自分以外美少女の変な部活に所属するハーレム的状況(状況)

・あらゆる超能力を無効化する幻想殺しの能力を持つ(能力)

・凄惨な過去を背負った巨大人型兵器のエースパイロット(経験)


といった例があげられるだろう。

この「代行するかどうか」と「成り代わりたいと思うかどうか」の2点を一つずつ設定しておくのが無難。それ以上でも構わないが、それは作者の技量による。


とある幻想殺しは、

あらゆる能力者に(ある意味)優位に立てる能力を持ち、(成り代わり)

やりきれない現実を「そんな幻想」と切り捨て、(代行)

恵まれない状況に置かれた美少女を助け出し、(代行)

彼女らに愛されるハーレムを構築する。(成り代わり)

という設計がなされている。



また、前工程で少し触れた

「読者が理解できない夢や目的を抱いているキャラ」を描く場合には、

こちらの工程で設計することができる。


要は、読者の「代行」ないし「成り代わりたい」と思わせれば良いので、

読者が中々やりたくてもできない

「夢をひたむきに追う姿勢(代行)」

「誰かに一途に尽くす態度(代行)」

に憧れさせることでコネクションを確立することになる。

その夢や目的に読者が共感する必要はない。

そもそも他人の夢など共有できるものでもないので。

(ゆえに夢を共有できる仲間がいるキャラは理想像となる)


ちなみに関係性に萌えさせる場合も、これを応用してできる。


「誰かに一途に尽くされる」という状況には「成り代わりたい」し、

そうした相手をどんなに裏切られたと思えるような状況でも、

「心から信頼する」ことを「代行」してくれるキャラは魅力的だろう。

(この辺りは、新城カズマ「物語工学論」を読んでもよいかも)



ただ、どの方法を採るにしろ忘れてはいけないのは「対象読者層」。

「物語コンセプト作成工程」で決めた2つのジャンル(ネタ)と、

それをつなぐキーアイディア。

それによって読者層が確定し、彼らの好き嫌いについてまとめているはず。

ゆえに、それに沿う形で決定していくことが望ましい。



このような形で、読者がキャラに「近づきたい」と思わせることでコネクションを確立する。



⚫︎メモ

ここで決めるのはあくまで「憧れさせる方法」のみに留めておく。

その表現方法は「キャラクター基本プロット」や「キャラ行動管理表」などで作りあげていくことになる。

【「思考・行動・感情」の三つを伴った「成長(変化)」するキャラクター】の作成工程に関わる部分なので、あえて決めずに冗長性を持たせておく。


「憧れる要素」と「応援したくなる要素」はどちらもあった方が良い。

そのキャラが読者へ近づき、読者もキャラへ近づきたいと感じる。

それによって読者とキャラが強固に繋がりを持つことができるはずなので。


ぶっちゃけこの辺りも、作者自身の「萌え」ないし「燃え」要素を基準に考えるしかないところがある。

突き詰めるとこの部分は「何がウケるのか」を問う工程なので、

「経験」か「才能」のいずれかが無いと、正直厳しい。

凡才は素直に「経験」を積むしかないですね!



⚫︎参考

リンダ・シガー「ハリウッド リライティングバイブル」(※敬称略)

そのほか創作指南書多数




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る