工程04 キャラクターの「動機」「行動」「結末」の三展開を考える

●概要

キャラクターの個人に焦点をあてた「三展開」をつくる。

どのような「動機」を持ち、

どんな「行動」で目的を達成しようとし、

その果てにどんな「結末」へ至るのか。

それらを考える。



●工程の趣旨

キャラクター個人の物語を三展開にまとめる工程。

キャラ個人の三幕構成と捉えても良い。


読者がキャラクターと繋がりを確立する為には、その行動から内面を想像し、動機や目的を察して、その行く末に興味を持つ事が必要。

……という考え方の下、作る工程。


これが上手く出来ていないと

「キャラクターが何をしたいのか分からない」

「ストーリーの都合でキャラが馬鹿になってて作者の意図が透けて見えて冷める」

「キャラクターに愛着が持てない」

という印象を読者に与えかねない。


逆にここがしっかりしていて、これまでの工程も上手く噛み合っていれば、ストーリーなんか無くてもキャラクターだけで面白くする事ができる。

(某「このすば」なんかは、動機と行動がしっかり出来ていて参考になる)



●コツ

すみません、少し長いです。


書き方としては箇条書きで良い。

例としては、


・「動機」

◯◯という理由で、△△を手に入れなくては(守らなくては)ならなくなった

・「行動」

その為に◻︎◻︎という行動を取った

・「結末」

行動によって△△を手に入れた(守り通した)


という感じ。

工程01〜03を参考にしながら決めていく。


作る際にはまず主人公の「結末」から決めるとやりやすいかも。

(※なぜ主人公からなのかは後述)

「結末」で手に入れる何かは、

つまりキャラクターの終着点で手に入れるもの。

(※終着点そのものでは無いです。終着点はキャラクターの魅力を引き出す為に決めたので)


終着点に至るために必要なものは既に工程03で列挙しているので、そこを参考に手に入れるもの等を決める。


ただし、ここで重要なのは

「これを手に入れなければ、

主人公が大切にする何かが喪われる」

という条件に当てはまること。


大切にする何かは、パニック映画の主人公であれば「命」であるし、ミステリー小説の探偵役であれば「事件の真相」だったりする。

キャラクターの3次元要素における「哲学と態度」「応援したくなる要素」「憧れる要素」あたりを参考にして、読者がキャラとの繋がり(コネクション)を持てるものを設定する。


「結末」が決まったら、「動機」を決める。

つまり

「キャラクターの大切な何かが、危機に晒されるキッカケ」

を考えれば良い。

もしくは、キャラクターが何かを手に入れたい、守りたいと思うキッカケと考えても良い。


そして「行動」は、大切な何かを守る為、手に入れるために何をするのか。

その具体例を列挙していく。


……と、こうして「主人公」の動機と行動と結末が出来たならば、

次に他のメインキャラクターの三展開を作ります。


ここで重要なのが、

他のキャラクターの「動機」に含まれている「大切な何か」には、

主人公のソレと相反するものを当てはめるということ。

つまり

「主人公が大切な何かを手に入れると、とあるキャラクターの大切なモノが喪われる」

という構図を作ります。


これは

「キャラクターに葛藤をつくる」

という部分です。

この「葛藤」はキャラクターが悩むように演出する事が多いですが、実際に悩むのは【読者】です。


……ここまでの工程で、ひたすらキャラクターと読者に繋がり(コネクション)を持たせてきました。

上手くいっていれば、読者はメインキャラクターみんなに愛着を持っているはずです。

主人公にも、魅力的な敵役にも、ヒロインにも興味を持って貰えてます。


つまり「憧れて」「応援して」いるわけです。


ところが、

応援しているキャラ同士の目的が相反し合っており、どちらか一方の目的しか達成されないような状況になった場合に読者は、

「どちらを応援すべきか葛藤する」

わけです。

そして読者は葛藤する苦しみから逃れる為に、

どっちの目的が達成されるのか、それとも第3の結論があるのかを求めて結末まで読み進めてしまいます。

「後半の怒涛の展開に引き込まれる」

という感想はこうして生まれます。

(もちろん一例ですが)


簡単な例として、

探偵と犯人であれば、事件の真相を巡った奪い合いが起きますし、

恋のライバル同士なら、お互いに牽制し合う関係が出来ます。


また、それが主人公と敵対者でなく、味方同士でも構図が作れます。

「主人公は相棒の命を守る為に行動していたが、相棒は敵を打ち倒すために行動している」

とした場合、相棒は他の人間の命を犠牲にしても敵を倒そうとしますが、主人公は皆の命を守りたいから敵を倒すという行動をとっているにすぎません。ここで2人の目的が相反します。

また、クライマックスで相棒は自分を犠牲にして敵を倒そうとし、主人公は相棒の命と敵を倒すことのどちらを選ぶべきか葛藤します。


でも、この時に葛藤しているのは読者なのです。

相棒キャラに死んで欲しくないけど敵を倒すという目的も達成して欲しいし、主人公キャラにはみんなの命を守って欲しいけれど敵を放置すればそれは叶わない。どうしよう。……と。

そして次には「さて主人公はどんな事をしてくれるのだろうか?」と期待します。




……とまあ、

こんな風に他のキャラクターの動機、行動、結末を決めていくと、より面白くなるはずです。

また、キャラクター同士の目的が相対すると物語が生まれます。

それが「サブプロット」です。

なので「コンセプトプロット」から「サブプロット」の項目を参考にして埋めていくと楽になると思います。




●メモ

ここまで来ると、コンセプトプロットや企画プロットで決めた内容との差が生まれてきたりします。

基本的には後から作ったプロットを優先しますが、コンセプトプロットで決めてきた作品の売り出し方「作品を売り込む戦略」からはズレないようにして下さい。


今は時間が無いので省きますが、後日に閑話という形で「葛藤の主な種類」や「人気作の分析」辺りも載せようと思います。



●参考元

リンダ・シガー「ハリウッド リライティングバイブル」

他、いくつかの小説指南書

※敬称略


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