工程02 用意した二つのジャンルを一つにする

●概要

用意した方向性の異なる二つのジャンルの「組み合わせ方」を考える。

物語の根幹を成すアイディア。

これを作成したら「世界観コンセプト」の工程01まで進める。



●工程の趣旨

用意した二つのネタを一つのコンセプトに昇華させるための工程。

オリジナリティは素材の扱い方から生まれるという考え方から。


このままだとネタがバラバラで、物語に統一感がなくなるどころか、

片方のネタだけで物語を描くようなプロットが出来上がる可能性が高い。

「とってつけたような設定」を防ぐためにも必要な工程。


また、2つのジャンルを組み合わせるという事は、「2つのジャンルの客層を取り込む」という狙いがある。

しかし、相反するジャンルであった場合、このキーアイディアが無ければ、どちらの客層からも嫌われる作品に仕上がる危険がある。


つまり、

「2つの相反するジャンルの客層を不満なく取り込む為の作業」

とも言える。



●コツ

主に「根幹となる世界設定」や「構成技法」「テーマ」に当てはまる。

オリジナリティを仕込むとしたら、この部分。

考え方としては「この素材をどんな料理として提供するのか」というイメージ。

卵と鶏肉を合わせて親子丼とするのか、卵は煮卵にして鶏肉と一緒に煮物にするのか、冷やし中華の具として用意するのか、オムレツの中に鶏肉を入れるのか、チキン南蛮のタルタルソースに卵を使うのか、あるいはetc……

次の段階でコンセプトにまとめるので、直感的にコンセプトが頭に浮かんだのならば、それを分解して「この作品の根幹は何か」「そこからはオリジナリティを感じ取れるか」という部分を判断してもよい。


また、相反するジャンルを組み合わせた際に起こる問題を減らすために、それぞれのジャンルの客層が何を好み、何を嫌うのかを知る事が必要。

それぞれの客層が最も好きなものを活用し、最も嫌いなものを排除する。その上で、カバーしきれない部分は早いうちに見せておく事でそれが許せない読者を足切りする。

という事を意識しておくべき。


●参考例(あくまで個人の考察です)

例えば、「ミリタリー」と「女子高生の日常もの」を組み合わせた場合を考える。


ミリタリーファンは血湧き肉躍る戦闘シーンを求め、また演出として悲壮感や流血などを好む事が多い。リアリティレベルの高いものを要求してくる。


女子高生の日常ものを見たい層は、そんな血湧き肉躍る悲壮感漂う流血を伴った戦闘シーンなど見たくないだろう。可愛い女子高生が等身大の悩みを抱えながら奮闘するのを見たり、もしくは単に毎日面白おかしく過ごしてる様子を眺めていたいだろう。

けれども、刺激の強いものが欲しいミリタリーファンからすれば物足りないかもしれない。


この両者の客層に不満を抱かせず、両者の強みを生かす為にキーアイディアが必要となる。



成功実例としては「戦車道」。

いわゆる「ガル◯ン」。

タイトルからして「ガールズ」と「パンツァー」の2つを組み合わせた事が分かるし、

その2つを繋ぐのは「戦車道」だ。



ミリタリーファンが楽しめるようにガチの戦車戦を描き、戦車の描写も史実に基づいたもの。

女子高生日常ものファンがストレスに感じないように、「特殊なカーボン」によって人間同士の流血や暴力は一切排除。


リアリティレベルを下げている事をミリタリーファンに教える為に冒頭から「学園艦」というデカブツを見せてくる。(この時点で許せないミリタリーファンはここで観るのをやめるので問題にならない)

そうする事で「戦車のキャラクター化」とも言える、戦車の特徴を誇張した表現をしても嫌われる事がなくなる(そんな事言い出したら学園艦の方が設定としてぶっ飛んでるので気にならない)。

戦車をキャラ化したことでミリタリーに疎い層も戦車を好きになれる。


それでいて戦う理由は、「廃校を避ける為」「モテたい」「出席日数が欲しい」「バレー部復活」etc……と、等身大のもの。

スポ根部活ものの体裁を取っているものの、精神論を含むバイオレンス要素を取り除いた「綺麗な部活もの」にまとめている。


けれど展開に起伏がないわけではない。

部活ものとしてまとめた事で次々と敵が現れ、作戦を練り、時にはピンチに陥りながらも知恵と勇気ある決断で切り抜ける。

この辺りは戦争映画や仮想戦記ものに近い構成を取っているように思える。


結果として、

「両者が最も嫌うものを排除」

「両者が最も好きなものを活用」

「カバーしきれない部分は冒頭に提示して、観客に伝えておく」

という部分がしっかり行われている。



●メモ

アイディア帳にはこの「組み合わせるための設定」が貯まりやすい。

なので、逆に「この方法に向いたネタを探す」という方法でも可。


伊都先生は「キーアイディア」と呼んでいた。

この「キーアイディア」は、とても広い意味があるようなので、設定を生み出す発想方法が「キーアイディア」になることもありそう。


そもそも「ヒトになるまで待ちましょう」では「メビウスの輪」から考えて主人公の設定と構成を作ったはず。(螺旋構造だったかな)


料理本から探すのも良いけどめっちゃ腹減る。



●参考元

伊都工平:ブログ「Scratch Line」(※敬称略)

ガールズ&パンツァー 劇場版 パンフレット

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