工程03 サブプロットによってメインプロットを駆動させる「見せ場」の作成
●概要
PP1、MP、PP2におけるメインプロットの条件を達成できる
サブプロットの組み合わせと、その展開を「シーン」としてまとめる。
●工程の趣旨
物語には「見せ場」となるシーンが必要と考えます(前工程述)。
その配置場所を「三幕構成」における三箇所のプロットポイントとし、
各プロットポイントの条件を、
キャラクター個々人のストーリーである「サブプロット」の展開で達成するようなシーンを作ることで、
キャラクター自身がストーリーを動かすような見せ場を作るための工程。
ここが作者の腕の見せ所となるでしょう。
●コツ
前工程のおさらいをしながら作り方の流れを説明します。
まず各サブプロットの流れを整理しておく必要があります。
(既にこれまでの工程で出来たものを使う場合は次の段階へ)
サブプロットにはそれぞれメインプロットにおける「主要問題(セントラルクエスチョン)」のような、題材があります。
そして、それを元にしてサブプロットには小さな三幕構成を作っておきましょう。せいぜい4展開程度で構いません。「1幕」「二幕前半」「二幕後半」「三幕」というイメージです。
分かりにくければ「起承転結」でも構いません。根幹はどちらも同じなので物語として膨らました際の結果は似てくるので。好みの問題。
では次に、各プロットポイントにおける条件を確認します。
以下の条件を穴埋めするように、メインプロットと主要問題に照らし合わせた場合、どんな条件になるのかを決めていきます。
(「※」にて、穴埋めするための考え方を説明しておきます。
例として僕が「ヒトなる」で考えていた事も載せますが、ワナビの考えですのであくまで参考として)
【PP1】
・主要問題(セントラルクエスチョン)の明示
※明示する主要問題は?
・上記を達成する事件(出来事)を起こす
※主要問題を達成しなくてはならない理由は?
・起こった出来事によって、物語の性質を変える
※「平穏」→「逃げる」や「自堕落」→「仕事」など、登場人物の「行動」もしくは「状況」をどんな風に変える?
ex.「第1章 宇宙人の少女(その5)」
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154950851/episodes/1177354054880364613
「平穏な日常」から「復讐劇」への移行。その為の事件を起こす。
但し、主要問題は「プロローグ」から「一章」の終わりまでかけて、何度も何度も繰り返し明示する事で読者へ印象付ける手法を選択。
主要問題「マサトは一体、何者なのか? 彼の正体は判明するのか?」
【MP】
・物語の性質を【大幅に】変える
※物語の方向性を「180度」変えるために、どんな事件を起こす? PP1を受けて取った行動の結果として、その事件が起こっている?
・そうして性質の変わった物語やこれまでの情報を整理できる状況や、理由を作る
※上記の事件が、主要キャラが身動き出来ない場所へ移動する、もしくは身動きしてはならない状況に陥るような事件になっている?やむおえず「説明文章」を使う場合でも、それが不自然でない状況になっている?
ex.「変貌者狩り(その6)」
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154950851/episodes/1177354054880432628
多神原から外へと移行し「復讐」→「逃亡」「守護」へ。
主人公が囚われの身となる事で、状況整理しやすくする。
特に「変貌症」に関する情報をまとめるのはここでしかない。
また、キャラクターのバックボーンについても明確に。
また、主人公のサブプロットの結果として、主人公の目的を変化させる事で物語の方向性を変える。
【PP2】
・主要問題の解決
※どんな解決を迎える? それとも解決せず、破滅するならどんな破滅?
・その解決によって、物語の方向性を変える
※「PP1」に同じ。180度変えるのは基本NGだが、逆に「PP2」でそれをやる為の構成を考えても良い
・そして「最後の対決シーン」へと繋がるようにする
※最後に誰と誰が何と対決する?
それは目で見て分かるもの? 分からないものなら、別途、それを象徴するものを入れる事を検討した?
ex「そして得たモノ(その10)」
https://kakuyomu.jp/works/4852201425154950851/episodes/1177354054880571354
主要問題である「マサトの正体」について明かす。
「逃亡」→「囚われの身」へと物語を変化。
「行って戻ると、元居た場所が別の視点で見える」というイメージを与える為に、舞台を多神原へと移行。
最後に、華弥が「自分自身と対決し、成長する」というシーンへ自然と流れるような状況を「そして得たモノ」全体を使って作る。
対決と「変化」が象徴されるように、華弥とマサトが初めて出会った場所を使い、似た状況で、映像として「対決」が見えるように「大食い婆さん」を利用する。
と、
こんな感じに条件設定をしたら、あとはサブプロットのどの展開でこの状況が作り出せるかを考えます。
基本的にはサブプロットも三幕構成にしているわけですから、PP1には「1幕」ないし「2幕前半」に相当するような展開をあてはめ、「MP」には「2幕前半」ないし「2幕後半」の展開をあてはめます。「PP2」も似たように。
2〜3のサブプロットを当てはめたら、そのサブプロットの展開が起こる順番を考えます。
各展開のうち、同時進行できるもの、展開の一部を重ね合わせやすいものを基準にして、順番を決めると良いと思います。
そして「達成条件」を意識しながら「サブプロット」の展開の詳細を詰めます。
違和感があれば、サブプロットの展開の順番を入れ替え、何度も作り直します。
何度も繰り返し「思考メモ」を利用しながら、確認します。
こうして出来た「見せ場」は複数のシーン(文庫本一冊の尺の捉え方に準拠)に跨って構いません。それらが連鎖的につながって、大きな一つのシーンになっている事が重要です。
この大きなシーンがまた「三幕構成」になっていればベストです。
(そういった大きなシーンを【シーンシークエンス】と言ったりします)
この時、基本的にプロットポイント以外のシーンは、
「プロットポイントの展開に合わせて作る」事を意識します。
読者が「見せ場」を最大限楽しめるようにするのが、他のシーンの役割。
という考え方です。
なので、整合性よりも「驚き」や「インパクト」を重視して下さい。
何故なら「見せ場」それ自体が面白い事も重要ですが、
それとは別に「プロットポイント」の役割は、
「次に何が起こるのか読者にワクワクさせる」というものだからです。
某、魔法少女アニメでは3話で
「先輩キャラが敵に頭から喰われて死ぬ」
という印象的なシーンがありましたが、あれは全体の構成で見れば「PP1」に相当します。
「見せ場」として印象付けながら、次の展開を期待させ、物語の方向性を変える。お手本のようなシーンだと個人的には思います。
(某、虚淵先生は脚本の勉強を大真面目に取り組んでいた方だったそうなので、そういった意味で基本に忠実な作品なのだと思います)
こうして三つの「見せ場」が出来ましたら、次の工程へと進みます。
●メモ
正直、もう少し才能や経験に寄らない方法としてまとめたかったのですが、
最終的には「何度もトライアンドエラーを繰り返す」という結論に至った工程です。
最も時間と労力をかける工程となってしまいました。
まあ、ほかの工程の労力をかなり削っているので、力を入れる場所が理解できただけマシとして、自分を慰めておきます。
自分が触れてきた創作物の総量が如実に現れる工程ですので、正直、自分の底が見えて辛い工程でした。
●参考元
リンダ・シガー「ハリウッド リライティングバイブル」
そのほか、執筆指南書多数。(良いとこ取りしすぎて覚えてません)
※敬称略
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