22 廃屋の実験室

 日が暮れた後、ミアたちは寮から抜け出した。

 そして廃墟へと向かう。ミアたちは昼間と同じく塀を伝って扉を探したが、やがて途方に暮れた。なぜか扉が見つからなかったのだ。


「どういうこと? 寮と薬草園の間にあったよね!?」


 ミアは考え込んだが、どう考えても昼間のことは夢ではなかったと思う。未だルナにつけられた傷もあるのだ。

 マティアスをなにげなく見てはっとする。彼はいつもルナを連れ歩いていたけれど、存在をあまり感じなかった。それは彼が魔法をつかっていたからで。


「マティアス! そういえばウサギの姿を見えなくするのってどうやってた!?」


 ヘンリックとフェリックスも同時にマティアスを見た。

 マティアスは「あぁ!」と驚いた声を出す。


「風属性の魔法だ。陽炎というか、像を上からかぶせるんだ」


 マティアスは真剣な顔で呟く。


「我を取り巻く風の精霊よ、隠されたものを暴け。ヴォカーレ・スケープトス・セクレートム、ヴェントス・フルーメ!」


 突風がどこからか吹き荒れ、壁に張り付いていた像が歪むのがわかった。まるで壁紙が剥がれるかのように昼間に見た蔦に隠された扉が現れる。

 風属性の魔法を久々に目にして、改めてすごいなと思う。普段が魔法使いというよりは武人といった様子なので余計にだ。 

 やがて風が止み、陽炎が消えた。

 扉に近き手をかけるが、それは固く閉ざされていた。魔法をかけるのと同時に鍵までかけていったらしい。

 一体誰が? そんな疑問が湧き上がる。ミアたちをここから追い出したのはバール准教授だったが。まさかあの人が? なぜ?


「どうする?」


 四人、顔を見合わせる。


「任せて」


 フェリックスが軽々と塀の上によじ登る。そして内側からかかっている扉の鍵をあっさりと外した。軽やかな身のこなしはいつ見ても人間離れしていて驚いてしまう。


(前も確かわたしの部屋から飛び降りたんだよね)


 思い出しかけたミアは、それが一つの記憶と結びついていることに気がついて、慌てて思い出すのを止めようとする。だが一瞬それは遅かった。

 フェリックスはあのとき、ミアに薬を飲ませようとした。しかも口移しで。


(うわああああ!)


 ミアが真っ赤になっていると、ヘンリックが訝しげにする。


「ミア? 顔赤いけど、熱ない?」

「な、ないないない! 大丈夫、ちょっと暑いなって思っただけで!」

「この寒いのに? さっきの怪我で熱が出てるとかは?」


 ヘンリックの眼光は鋭いけれど確かに心配の色があった。ミアはどきりとする。フェリックスの帰還のせいで忘れていたけれど、ヘンリックはあの時――フェリックスがチームを離脱した時、ミアを抱きしめた。


『僕がいる』


 ミアには彼の行為を深く考えることができなかった。けれど、彼の目の色と同じカエルの髪飾りのことを思えば、あれはきっと単なるハグではない。

 ミアは急に怖くなった。ミアはこのところこんなふうに、母のことを忘れかけてそうになっている。二人の少年の前で、心が目標とは別の方向へ揺れてしまっている。


(わたし、わたしじゃないみたい。お母さんのこと、一番に考えないといけないのに)


 フェリックスの言葉で動揺し、ヘンリックの眼差しで動揺する自分が恐ろしかった。

 強烈な嫌悪感が体を覆う。


(そんなのはわたしじゃない……わたしじゃない!)


「大丈夫、だから」


 と言って駆け出したとたん、転がっていたレンガに足をつまづかせて転ける。


「ミア!?」


 フェリックスが大袈裟な声を上げてマティアスが「しいいいい!」と咎めた。誰も彼も侵入していることを忘れかけている。


「大丈夫だから。ほんとうに」


 ミアはうつむき、憂い顔を隠した。

 そして一つ大きく深呼吸して、自分に言い聞かせる。しっかりして、ミアと。このままだときっと後悔するわよ、と。

 そっと顔を上げると微笑んだ。笑顔を浮かべられることにほっとした。

 三人はそれぞれなにか言いたげにしていたけれど、ミアが平気な顔で心配を拒絶すると黙り込んだ。


「行こう」


 気まずさを嫌うようにマティアスが口を開いた。各々うなずいてついていく。




 廃屋にも鍵がかかっていた。


「これ、魔術でも鍵がかかってるぞ。割と複雑なやつ……」


 マティアスが唸る。

 ボロボロの扉だというのに、意外な厳重さに一気に疑いが深まる。


「どうするの?」


 こういう時には知恵で解決だろうか。ヘンリックを見ると、彼は考え込む。


「使用者はまだわからないけど、鍵は開けてくれないだろうな、きっと。それなら強行突破しかないけど……」


 ヘンリックはちらりとフェリックスを見た。すると、フェリックスがにやりと笑った。


「そこでおれの出番だな」


(え?)


 ここでフェリックスが出てくるとは。どううするのだろうと思っていると、彼はマティアスに「やるぞ」と声を掛ける。マティアスはうなずくと、緊張した様子で呪文を唱えた。


「ウォカーレ・サルファティオ・ヴェントス・フルーメ。シンティウム・プリンキピウム!」


 ぴいいん、と耳に栓がされるような感覚が広がり、それが魔法だと気がついた。

 とたん、フェリックスが扉から離れる。そしてミアたちに「ちょっと離れて」と下がらせると、軽く助走をつけ、扉を蹴り飛ばす。音は消されているはずなのに、バキン、とすごい音がした――ように見えた。ぐらり、と扉が揺れたかと思うと、大きな振動と共に向こう側に倒れた。

 ミアはフェリックスの足の骨の無事を疑う。


「フェリックス!?」

「しーっ! 扉周辺にしか防音してない!」


 顔を硬らせたマティアスが言う。ハラハラと見つめると、フェリックスは全く平気そうに足を下ろした。ほっとすると同時にどれだけ丈夫にできているのだろうと驚いてしまう。


(あんな持病があるなんて、信じられない……)


 脆いのは心だけなのかもしれないと思うと、なんだか守ってあげなければいけないと思ってしまう。



 マティアスの防音処理が効いたのか、警備員は駆けつけることはなかった。

 ごそごそと何か物音がする。そろりそろりと近くと、そこにはずらりとウサギの入ったケージが並んでいた。

 マティアスが小さく呟くと杖の先が明るくなった。


「赤い、目」


 ケージの中のウサギは全て目が赤かった。ウサギは明かりに反応したかと思うと、ぎりと歯を剥き出した。ルナと同じようだとミアは思う。

 ケージには番号が振られている。

 そして投与量という文字と数値がラベルに走り書きされている。


「投与?」


 一体何を? 

 ぐるりと見回すと金属の大きな作業台の上には注射器が置いてある。

 その隣にはノートがあった。恐る恐る覗き込む。

 数字や計算式に埋もれている一つの単語がミアの網膜に焼き付いた。

『注入魔力』

 まさか。


「……魔力を注入してる、の?」


 畏怖と同時に湧き上がる感情がある。だがそれは、あまりにも非人道的な感情で、ミアは戸惑った挙句に胸の奥に押し込めた。


「たぶん間違いないな。予防医学の正体だよ、これが」


 ヘンリックの呟きに、三人は同時に聞き返す。


「予防?」


 ヘンリックが指差す先を見てミアはめまいがした。開かれたノートには『限界値』と書かれていて、隣には×印が記されていた。その非情な記号が眼裏に焼き付く。


「論文を調べたときにさ、気になったんだ。あるときを境にぐんと患者数が減ってただろ。新薬が開発されたのかと思うくらいの効果だった。だけどこうやって動物実験で魔力の投与量を割り出してたんだ」

「なんて事するんだ!」


 マティアスが叫び、フェリックスが青ざめてぐっと胸を抑える。その背を撫でながらミアは涙が滲むのをぐっと堪える。

 ヘンリックが険しい顔で呟いた。


「ところで……この魔力ってどこから手に入れたんだ? そしてどうやって注入した?」


 ふとフェリックスがつぶやき、ミアは目を瞬かせた。


(そういえば、そうだ)


 人間の場合を思い浮かべる。《天使の涙》の患者は、魔力を他の人間から提供される。

 ひどく嫌な予感がした。胸がむかむかし始める。

 ミアたちは奥へと足を向ける。するとそこにはガラスのケースがあり、中でウサギが飼われていた。

 ウサギは弱っているのか、痩せ細っていた。餌と水は置いてあるけれど、まったく手がつけられていない。

 ケースには『供給源』と書かれている。その下には供給日という日付が三つ。その意味に気がついたミアは腹の底から怒りが湧くのがわかった。

 つまり、このウサギから魔力を搾り取って、そして他のウサギに与えている。ここのウサギたちは、そうやって《天使の涙》と《悪魔の爪》に罹患させられている。

 怒りでぶるりと体が震えた。


「わたし、――許せない」


 そう言った時だった。


「やっぱり君たちだったのか」


 冷たい声が入り口から響いた。ミアたちはギョッとして振り向く。夢中で人の気配などまったく気がつかなかった。

 その人物はゆっくりと部屋に入ってくる。そして厳しい表情でミアたちを睨んだ。


「あなただったんですね、ブラル教授」


 ヘンリックが前に一歩出て、睨み合う。

 そこにいたのはブラル教授だった。犯人の予想が当たっていたことを残念に思いながらミアも一歩足を進めた。するとフェリックスもマティアスも続いた。

 一列に並びブラルに向かい合う。


「動物実験を調べたり、こそこそと何か嗅ぎ回っているとは思っていたが、ここまでするとは思わなかった。どうやら君たちのことをみくびっていたようだな」

 ブラルは呆れたように言う。


「僕たちもあなたがここまでするとは思っていませんでしたよ」


 ヘンリックが皮肉で返す。


「いくら病気を治したいからといって、勝手な動物実験など、退学処分を考えねばならないな」

「……勝手な動物実験?」


 ミアは言われている意味が捉えきれずに、首を傾げた。


「君たちは命をなんだと思っているのかね。まだ二年とはいえ、医科と薬科の人間だろうに」


 やれやれといった様子でブラルは奥のウサギを憐むような目で見た。その言葉と表情にミアが違和感を覚えたときだった。


「おまえたち……!」


 闇に染まった廊下からそんな声が響いた。ブラルが目を見開くと後ろを振り返る。そしてミアたちを見て首を傾げた。


「どういうことだ? あぁ、私は勘違いをしていたのか。なんだ。みくびってはいなかった、ということか」


 彼は一人呟いたあと、いつもの冷たい笑みを浮かべる。


「ブラル教授!? あなたがどうして……! あなたもこいつらと一緒にこの扉を破ったというのですか? まさか」

「え、トラウト先生?」


 マティアスが呆然と呟く。入ってきたのは魔術科のトラウト助教だった。

 あまりにも意外な人物の登場に、皆で顔を見合わせた。


「おや、私がここにいるのがそんなにおかしいでしょうか?」


 ブラルがまったく悪びれる様子もなくいつもの調子で返す。


「どうやって入ったんだ。ここの鍵は何重もの魔術をかけてある。そこのヴァイスでも決して破れないはずだ!」


 トラウトはたぎるような眼差しでマティアスをぎりと睨みつける。だがブラルは軽く肩を竦めた。


「あなたの悪いところは――いえ、魔術師全般に言えますが、魔力を過信しすぎているところです。この扉は物理的に破ることは可能のようですよ。まぁそうとうな馬鹿力でないと無理のようですけど」


 ミアは思わずフェリックスを見る。フェリックスは褒められたと思ったのか少し嬉しそうだ。


「敷地にウサギが入っていったので、うちのウサギかと思って追いかけたんですが……ここのウサギは一体なんですか? 申請書は出ていないようですが」

「…………」


 トラウトは黙り込む。


「そもそも魔術科で動物実験など聞いたことがなかったのですがね?」

「…………」

「話せない、というわけですか。それでこのように厳重に、侵入者を阻むような魔法までかけてあった」


 トラウトは答えないままに苦しげに反論をする。


「この場所は魔術科の管轄だ。あなたにあれこれ口出しする権利はないと思うのですが?」

「口出しも何も、動物実験の適正利用の調査は私の仕事です。お忘れですか? たとえウサギ一匹でも、命を無駄にすることは医者として許せない」


 ブラルは毅然と言い放つ。


「ここのことは教授会にかけます。このような不穏な使い方をしているのならば、ここが廃墟となった事故のことも洗い直したほうがいいかもしれませんね。覚悟をしてください」


 するとトラウトは開き直ったのか、尊大に言い返した。


「私の後ろに何がついているかはわかったはずだが?」


 ブラルはぐるりと実験室を見回した。


「そうですね。あなたが虎の威を借っていることは知っていますよ。一人で――しかも助教でしかないあなたにこれだけの設備を用意できるわけがないですし、これだけの投資をしてくれるような組織といえば一つしかないはずだ」


 ブラルの皮肉にトラウトは一瞬凶悪な殺気を纏う。思わずミアは後ずさる。フェリックスとマティアスがすぐに動けるように体勢を整える。そんな中、ブラルは全く怯まない。


「だからこそ、そろそろ癒着を切り離さねば。この学院は軍部のための実験場ではない。そもそも学院の始まりは魔術師だけがかかる《天使の涙》という患者を救うためでした。医科も薬科も、志変わらず、ただ患者のために研究を続けているのです。新たな魔術師を作るためではない。だというのに、あなたは魔術師を作るための実験を手伝った。新たな患者を生み出した! 学院の方針から逸れてしまったあなたに対して、教授陣は私と同じように処罰を求めるでしょうね」


 きっぱりと正論で追い詰められたトラウトは静かになった。だがやがてにやりと笑った。


「だがあなただって科学者なら、そして医者なら欲しいはずだ。このウサギが」


 ブラルは反論しなかった。


「そしてそこのおまえらもだ。綺麗事を言っていても心の底ではこのウサギが喉から手が出るほど欲しいはずだ。そうだろう?」


 指差されたミアも反論できなかった。心が鉛のように重くなっていく。

 ミアの実験にはこのウサギがどうしても必要だった。


「そして罹患方法はもっと知りたいはずだ。ミア=バウマン。おまえの母親を助けるためには、絶対に必要なんだからな」


 ミアは身を乗り出す。それがいかに非人道的なことだとしても。それはミアの母を本当の意味で救う唯一の手段だ。


「教えてください……! あなたはどうやって魔力の移動を行ったんですか!?」


 そのとき、ヘンリックが素早くノートに飛びつく。


(そうだ! あれに全部書いてあるはず!)


 だがトラウトは胸元からすぐに杖を取り出した。

 フェリックスがトラウトに飛びかかり押さえつけようとするが、トラウトはそんな彼に向かって杖を向けた。


「フェリックス! あぶねえ! ウォカーレ・スケープトス・フォリウム、ヴェントス・フルーメ!」


 マティアスが叫び、部屋の中を突風が吹き荒れる。トラウトの杖が吹き飛び、ホッとしたのもつかの間だった。

 トラウトはニヤリと笑って胸元からもう一本の杖を取り出したのだ。


(予備!?)


 そして彼が素早く杖をふるいながら「ウォカーレ・フラムマ・エールプティオ!」と呪文のような言葉を呟くと、ぼん、とヘンリックの胸元のノートが爆ぜた。


「ヘンリック! 大丈夫!?」


 ヘンリックが衝撃で後ろに尻餅をつく。ミアは思わず彼に駆け寄る。ヘンリックは青ざめたまま空中を睨んでいた。


「大丈夫……だけど、ノートが」


 灰がふわふわと舞い落ちる。ミアは呆然とトラウトを見た。


(……うそでしょ!?)


 実験データなど、研究者にとっては命と同じくらいに大事なものだ。青くなるミアを見てトラウトは自分の頭を指差した。

 全部ここに入っている、とでも言いたげに高笑いをする。


「教えろだと? 甘えるな。だれが教えてやるか。私がどれだけ苦労してこの情報を得たと思っている? 私はおまえらみたいな恵まれた人間とは違うからな。地を這いつくばって汚泥に塗れていた私は、生き残るために多大な犠牲を払ってこの地位を手に入れたんだ。そうして今ここで、さらなる力を手に入れようとしている。おまえらも生き残りたいのなら、それなりの犠牲を払うことだな」

「力? 力って一体――」


 言っていることの意味がわからない。だがわかるのは、この男を逃してはならないということ。


「今に空に手が届くぞ」


 トラウトは高笑いをすると窓から飛び降りる。ミアは悲鳴を上げる。


「待て!」


 フェリックスが彼に飛びつこうとするが、すんでのところでトラウトはひらりとそれを避けた。落ちそうになるフェリックスをマティアスが捕まえる。

 ミアも窓に駆け寄るが、トラウトはすでに空を泳いで学外へと逃れていた。




 ミアはしばし呆然としていた。頭の中がぐちゃぐちゃで正気を保つのが難しいとさえ思った。

 トラウトが言った言葉が胸に大きな傷跡を残していたのだ。


「あの男に感謝しているのかな、君は」


 ブラルがポツリと言う。ミアはぎくりとした。


(このウサギたちを……欲しいって、わたし思った)


 母の病を治したかった。だけどウサギを罹患させるのはひどいと思っていた。だけどトラウトが言うように、だれかがやらなければ前に進めなかった。ミアは悩むことから逃げた。こうして偶然に手に入ったウサギを『幸いだ』と思う甘さに吐き気がする。可哀想なウサギが生まれたという残酷な事実には変わりないのに。

 打ちひしがれるミアの前で、ブラルがガラスケースに近づいた。


「私は彼に決して感謝しない。だが痛いところは突かれたな。《天使の涙》の新しい治療法を望むのならば、《天使の涙》の動物が必要だ」


 そして《悪魔の爪》の治療法を望むためには、《悪魔の爪》の動物が必要だった。

 ブラルはガラスケースの中のウサギを見つめた。ウサギは弱々しく寝そべっている。見ているだけで胸が刺されるようだった。


「私たちにできるのは、犠牲を忘れずに結果を出すことだけだ」


 彼はミアを見た。ミアはただうなずいた。吐き気がするほどの葛藤はあった。けれど今度は逃げないと誓う。命に対して、責任を持つ。

 ヘンリックを見ると、彼はただ小さくうなずいた。


「命は決して無駄にしません」


 ブラルは微かに笑う。その柔らかい笑顔を見て、ミアはリューガーの言葉を思い出した。――誤解されやすいというやつだ。

 そしてヘンリックを見た。


「ヴィーガント、君は冬休みに帰省したらしいが、何か収穫はあったのかね? 君の父上は偉大だ。きっと何か策をくれたのではないかね」

「……えぇ」


 ヘンリックはなんだか悔しそうに、だが、しっかりとうなずいた。そしてブラルを挑むように見つめた。


「そのウサギ、僕たちに預けていただけませんか。決してその命、無駄にはしませんから」


 もう一度宣言するようにヘンリックが言うと、ブラルはわずかに眉を上げる。そしてミアを見る。フェリックスを見る。マティアスを見る。

 四人が同じ目で見つめると、ブラルは満足したようにうなずいた。

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