第41話 公務員試験勉強

図書館司書を目指すことにした私はとりあえず受けてみた。結果は惨敗だった。まあ、そりゃそうである。公務員試験の勉強なんぞ、ほとんど何もしてないのだしと、その時の私は思った。それもあったが、公務員試験の倍率も半端なく高かった。だからといって民間企業を受けようとしても、そもそもその試験を受けることすらできなかったりするわけだから、それなら誰でも受けることができる公務員試験の方がいいだろうと思っていた。万一受かれば採用されるわけだしと、倍率のことをあまり考えずに私は、ぼんやりと公務員試験の勉強をしていた。


そうこうしているうちに、短大もそろそろ卒業式を迎えようとしている頃、私はなぜか、あのダークファンタジーを持って行き、短大の友人に見せた。そもそもそのダークファンタジーのせいで、小説書きが止まっていたわけだが、出だしはいいと思うんだけどなあと、自分の中でまだあきらめられない自分がいた。それでなんとなく一人の友人に出だしだけ見せたのだが、脇キャラの描写の箇所を読みその友人は「なんだか本当に想像できるような描写だね」と言ってくれたのだ。ただそれだけの言葉だったが、私の中では十分すぎる言葉だった。一瞬ぱっと光が見えたような気がして、私はまだ書けるんじゃないだろうかと思い出したのだ。


そもそも小説家になるために図書館司書を目指そうとしている自分が、文章書けないとか言ってる自体おかしいのだが、そういう矛盾もその友人の言葉で解消されたわけである。こうして私は無事に短大を卒業すると、公務員試験の勉強をするために一年間だけ公務員の専門学校へと通った。


ある意味大学受験よりも勉強したと思う。母が後から言っていたが、私の様子について勉強しすぎで青白い顔をしていて、心配だと思ってたらしい。公務員の専門学校に行って一年勉強したが、結局落ちてしまった。だからといって、今更やめることなんてできないぞと思った私はあと一年がんばって受けることにした。専門学校自体は一年で終わりだったので、私はスーパーの品出しのバイトをしながら独学で勉強することにした。そうして一年、図書館司書の試験は全滅だった。が、滑り止めで受けた郵便局だけが、かろうじて受かった。


受かったとはいえ、図書館司書ではなかったことで、私はまた悩むことになった。とりあえず受かったことはありがたかったが、思いっきり客商売となる仕事に就くのはどうなのだろうと思っていた。もともとお金を扱うバイトもしたことがなく、自分にとってどんな意味を持つ仕事になるか皆目見当がつかなかった。迷いに迷ったが、このまま受け続けたところで図書館司書になれる保障もない。しかも今は就職難。公務員に受かるだけでもラッキーなのだ。そう考えたら、蹴るなんてことはできなかった。そもそもいいかげん、働かなくてはと、ここでようやく働く意義について考えるようになるのである。

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