第27話 ミミのお出迎え
小学生、中学生の頃はミミもまだまだ若く元気いっぱいだったが、高校に入るとミミもすっかり年をとり、以前のように部屋の中を走り回るということもなくなった。日がな一日寝て過ごしていることが多く、頭をなでたりすると少し迷惑そうにぱちりと目を開けるが、私だと分かるとまたすぐ眠りに落ちていった。
ミミのまゆげの部分も黒かった部分が真っ白になり、まつげもひげも白くなっていった。母と二人でミミも年とったねえと語ったものである。
特に顕著だったのが、ミミのお出迎えである。私が子供の頃は私が学校から帰ってくると、ミミがタタタッと部屋の中から走ってきて玄関先に置いてあるスリッパをさっとくわえ、ものすごい勢いでしっぽを振り、ぐるぐるぐるぐる嬉しそうに私の周りを歩き回るのである。なぜスリッパをくわえるのか、よくは分からなかったが、ミミなりの帰ってきてくれて嬉しいという表現だったのだろうと思う。しかしそのあと、ミミからスリッパを回収するのが大変だった。「ミミ、ありがとね」と言って、スリッパをミミの口から離そうとするのだが、なかなか離してくれなかった。まあミミはスリッパが大好きだったので、よくかじられたスリッパが転がっていることもしばしばであった。
しかし高校になるとミミのお出迎えは変わってくる。私が家に帰っても、
ミミは玄関先に出てこなくなった。家のリビングに入るとソファがあり、ミミはそこで寝ているのである。そして私が帰ってきたことに気づくと、私の方に目をやり、しっぽだけ、ぱたぱた振っているのである。なんだかとってものんきそうにしっぽを振っているミミを見る度に穏やかな気持ちになった。
お出迎えの仕方は変わったといえ、ミミの気持ちに変わりはないのである。とはいうものの、ミミもまた確実に年をとったのである。
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