第28話 高校生活その3

高校生活といえば、普通はめくるめく恋の話とかあるべきなのかもしれないが、私の場合は全くそれがなかった。というか、本人もそれを求めていなかったので、そうなっているといっていいだろう。まあ、あの男の子かっこいいぐらいはあったけれども、じゃあ、その子に告白してみようとか、つきあってみたいとかそういう気持ちはこれっぽっちもなかった。

普通の女の子だったら、好きな男の子とデートしてみたいとか思うものらしいが、デート?デートっていったい何をするの?何のためにそんなに会うのとか?そこらへんが疑問だったので、男の子とつき合うことはなかった。


そもそも恋にうつつを抜かしている暇があったら、小説家になるために創作に打ち込んでいる方がいいに決まっていると思っていた。というか、一生独身でもいいから、小説家になりたいと思っていたのである。しかも学生のうちに小説家になりたいと真剣に思っていた。なぜなら、私はきっとそんなに長生きできないだろうと思っていたからだ。何かそんなに病気を抱えていたのかという、全くそんなことはない。いたって健康体である。


それなのに私は、自分はきっと早死にするに違いないと思い込んでいた。なんというか、若い頃の自分の命というものは、とても危ういものに思えたのだ。身体つきもそうだし、精神的なもろさもそうだし、ちょっと押せば崩れてしまいそうなはかなさをまとっているような気がしていたのだ。自分でありながら、自分でないようなそんな感覚が常につきまとい、私は自分はそんなに長く生きられないような気がしていたのだ。そのせいで、私は早く小説家にならなければいけないと思っていた。


しかしいまだに健康体だし、気がつけばもう中年である。早死にというのは、なかったなあと思うわけである。どこが早死になんだとつっこみたくなるし、いまだに小説家になれてないし、若い頃の思い込みって怖いなあと思うわけである。


そんなこんなで、私の高校生活は、勉強以外は小説書くことに費やされていったわけである。他人から見るとどうみても味気ない高校生活のはずなんだが、同級生達とは、結構楽しくやっていたので、まあそれなりの高校生活送れてよかったなあと思うわけである。

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