第7話 くもん

私には兄がいるのだが、その兄がくもんに通っていた。それでなんとなく私も一緒に行くと言いだし、小学1年の頃から通い出した。


算数や数字は昔から大嫌いなのだが、簡単な計算ぐらいなら、まあなんとか学校の授業でもついてはいけたので、くもんも小学6年までは続けていた。ただピアノ同様毎日こつこつやるというのが、やっぱり苦手で、くもんで家でやるように渡されたプリントの問題は、いつも行く直前の前日にやっていた。そんなことでは計算力がつくわけもなく、ある意味無駄だったのではと思うのだが、実はそうでもない面もあった。

それは何かというと、私の通っているくもんのお宅には、なぜか本がずらりと置いてある部屋があったのだ。私は兄と一緒に行っていたので、自分の分が終わると、兄を待っている間、そそくさとその部屋に入り、本を勝手に読んでいた。

母はくもんの先生から注意を受けたらしい。

「○○ちゃんは、とっても本が読むのが好きみたいで、それはいいんだけど、読む声が大きくてねえ、もっと小さい声で読んでくれないですかねえ」と。


言われれば、小学1年だった私は黙読なんてできないので、でかい声で読んでた記憶がある。先生が迷惑と言ってたぐらいだから、くもんを受けにきてたよその子供達にしてみれば、大迷惑だったのではと思う。

しかしそのおかげで私の読書量は飛躍的に伸びた。


そんなこんなで算数の成績は伸びなかったが、なぜか国語の成績だけは伸びた。そして本好きがますます本好きになったのは間違いなかった。お習いごとというのは、きっと何かしら意味があるのだ。たとえそれが違った方向でも。

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