第6話 「王さまレストラン」

「ニールスのふしぎな旅」で、文庫本初体験をした私だったが、だからといって、小学1年生の頃から文庫本を読みあさっていたわけではない。ちゃんと小学1年生でも読める童話だってしっかり読んでいた。いろいろあるけれど、寺村輝男が書いたぼくは王さまシリーズが大好きだった。

主人公はわがままで、いばっている王さまだけど、たまご料理がとっても大好きで、いつも無理難題をみんなにふっかけて、なんでも思い通りにさせようとするけれど、王さまの思い通りにならずに思わず笑ってしまう結末を迎えるナンセンス童話だ。


大人なんだけど子供みたいな王さまのキャラクターが、子供心に共感できて、何度も何度も読んだけれども、このシリーズの魅力はやっぱり『たまご』なのだ。お話のタイトルを見てるだけでも、ぞくぞくするのだ。

「ぞうのたまごのたまごやき」「おしゃべりなたまごやき」「くじらのオムレツ」

ぞうのたまごのたまごやきって、どんなだろうとか、くじらのオムレツってどれくらい大きいのとか、そんなタイトルが目白押しなのだ。読み出しみると、王さまが大きなたまごやきを作らせようとしたり、王さま自身でオムレツをつくってみたりとか、とにかくたまごのオンパレードだ。お話を読んでいると、たまごがとっても美味しいことを連想させるのだ。あまくて美味しいたまごやき、ふんわりとしたオムレツ、本物のたまご料理よりも、美味しく思えて、私は何度も読み返したのだ。


そのシリーズの中でも私が持っていた本は「王さまレストラン」だ。

その「王さまレストラン」の中の1編に「くじらのオムレツ」という話がある。

王さまがオムレツを作ろうとするのだが、何度も失敗してしまい、たまごが足りなくなる。そこで王さまは大きなたまご、くじらのたまごを取り寄せるのだ。で、届いたくじらのたまごの中身は黄身じゃなくて、青いたまご水だったりするのだ。そこで王さまは言う。「くじらは海にいるんだ。だからたまごも青いにきまっている。そんなこと、しらないのか」と。よく分からないけど、すごい説得力があるし、ほんとにくじらのたまごなるものがあるなら、青っぽいと思ってしまうのは私だけだろうか。

それから王さまはそのくじらのたまごを使ってオムレツを作るのだが、オムレツの味ではなく、やわらかなビフテキな味だったりするのだ。更に調味料をいろいろ変えて入れると、空色のマヨネーズになったり、みどりの色のワインになったりと変化するが、どれも美味しいときている。う~む。その黄身ならぬ、青いたまご水、私も是非とも食べてみたいのだ!と、私は子供心に強烈に思ったものだった。それと同時に常識ではない想像力をかきたてられた。まさにナンセンス童話の醍醐味はここにある。こういったナンセンス童話ってなかなかないと思われる。是非皆様も、機会があれば『たまご』を堪能して欲しいと思うのである。

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