第8話 ミミとベッド

ミミは家の中で飼っていたので、夜は兄のベッドか私のベッドかどちらかで寝ていた。私はミミと一緒に寝たいなあと思っていたので、ミミがどっちのベッドで寝ようとするのか、最初のうちは興味津々だった。ミミは私よりも兄が好きみたいで、兄のベッドで寝るのを好んだ。なので、あ、今日はミミはこっちに来ないなあとか思って、恨めしそうに兄のベッドを見たりしていた。

しかしそのうち異変が起きた。寝ている時にミミが、兄のベッドから落ちたのだ。兄のベッドには柵がないので、ふわふわしたベッドからそのままずり落ちてしまったらしい。その点私のベッドは、昔兄と使っていた二段ベッドのうちの下段のベッドだったので、柵がついていた。

それ以来ミミは安全さをとって、私のベッドで寝るようになった。さすがにミミもベッドから落ちるのは嫌だったらしい。


で、しめしめと思った私は、ミミと一緒に寝るようになった。ミミの寝る定位置は私の足下の辺りだった。ミミはそこに丸くなって眠るのだ。眠っているミミをなでたり、耳をいじったりすると、ミミは面白くなさそうな顔をしていたが、私は全然気にしなかった。

まあ、私も当時は子供だったので、ミミが気に入らないこともやったりしていたなあと思うわけで。ちょっとミミには謝らないといけないと思うのである。


けれども年月を経ると、さらなる変化が起きた。ミミが仔犬からデブ犬に変わってしまったのだ。そうなるとベッド事情も変わってくる。以前と同じようにミミは私のベッドで寝ていたが、ミミの体は巨体へと変わり、ベッドの半分を占領するようになったのだ。で、私がベッドに入るとミミがその上に寝るのだが、ミミが重すぎて、私のお腹が苦しいのだ。

「お、重い」

ミミの体が重すぎて、なんだか寝苦しいのだ。でもミミにしてもそれは同じことらしく、一匹と一人はいつもなんだか窮屈なベッドで寝るようになったのだ。それでも冬の時期はミミの体温であったかかった。

ミミとのつき合いはある意味濃かったと思う。何しろベッドを共にする仲だったのだから。寝苦しかったけど、姉妹のように育った分、情は深かったと思う。よかったような悪かったような、そんなベッド事情だった。

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