第42話 郵便局員
郵便局員になった私だったが、初日から窓口に立たされ、私は緊張の面もちでお客様をお出迎えしなければならなかった。そもそも人というものに慣れていなかった私は(もともと社交的ではなかったので)心臓がばくばくいって、落ち着いた対応ができなかった。それもあったが、計算が苦手というのは間違いなく致命的だった。郵便の窓口ぐらいなら、まだ小銭単位なのだが、貯金の窓口は高額単位で、間違えるととんでもないことになった。
それで間違えないように札束の数える練習とかもしてはいたが、元来手先が不器用なせいか、これがまたちっともうまくならなかった。他の人からいえば、練習不足。もっと真剣に練習しなさいということだったのだと思うが、私は私なりにがんばったつもりではあった。それでも結果はついてこなかった。
郵便局に入ったとはいえ、私はとある地域の特定郵便局に配属されていた。しかし空きのある郵便局がなかったので、その地域の何箇所かある特定郵便局を週ごとに回って働いていた。まあ、いわゆるお手伝いさんみたいな感じである。固定の郵便局に配属されてないせいか、責任度合いも、どちらかといえば、それほど重くはなかった。それでも私的には大変だった。お金を間違えることはしょっちゅうあるし、ハガキの枚数だって、一枚変だったりとか、いろいろ間違えまくりであった。そのうち私の中ではやっぱり図書館司書になりたいという思いが強くなっていった。
もともとなんとなく入ってしまった仕事であったせいか、そこでやっぱり後悔し出した私がいた。それでもせっかく受かって入ったわけだし、今も公務員に受かりたくて勉強している人もいるわけだし、そう考えるとがんばらないといけないという思いもあった。
しかし決定的になったのは、郵便局に空きができ、私もいよいよ固定の郵便局に決まった時だった。とりあえずがんばろうとそう思った私だったが、もともと仕事で失敗ばかりしている私である。そのほかにも保険の勧誘という仕事も増え、なんだか分からないうちに、怒られっぱなしであった。貯金のお金は合わないし、保険の勧誘もできないし、そんなんでいいのかと、その当時の上司に散々言われ、そのうちその説教も、そんなに間違えてばかりいるんじゃ、仕事が向いてないんじゃないのと、ことあるごとに言われた。
私は心の中で思っていた。私だってこの仕事向いてるなんて思ってないよ。もともとこの仕事に入りたくて入ったわけじゃないし……。そもそも私、図書館司書になりたかったんだし!と、とにかくネガティブないい訳ばかり考えていた。
しかし何度も何度も上司から仕事向いてないんじゃないの的発言をずっと受け続け、私も心を決めた。もういい、辞めよう。辞めて図書館司書をもう一度目指そう!そう思ったのだ。
それで上司に辞めますと言って、家に帰って家族に伝えると、ものすごく怒られた。でももう辞めると言ってきたしと。それ以後親からは、あの時郵便局を辞めなければと散々言われることになる。
まあ、確かに普通に考えれば、公務員の仕事辞める人って、そうそういないと思われる。(今では郵便局も一応民間ですが)じゃあ、私は辞めてしまって後悔しているのかと問われればそうじゃない。今では辞めて正解だったと思っている。辞めたことにより、この後私は様々な職に就くことになるのだ。それはある意味貴重な経験であったといえる。
でもやっぱり親不幸なのかもしれないなとは思うのである。
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