第40話 図書館司書

ミミがいなくなって、私はますます腑抜けになっていった。進路も就職も何も考えられない状態だった。しかし周りの短大の友人達は、しっかりと就職活動を始めていた。超氷河期の時代だったので、すごく真剣に取り組んでいる友人でも百社近く企業に資料を送っても、なんの返事もないことがざらだった。


私はというと、どこにも資料請求を出さなかった。まだやっぱり4大に編入することを思い描いていた。それで調べてみたら、第一外国語が英語の授業を選択していないといけないことに気づいたのだ。私はせっかく短大に入れたのだから、英語以外を選択した方がいいんじゃないかと思って、ドイツ語を選択していたのだ。その事実を短大に入った時に知っていれば、私は英語を間違いなく選択していたはずなのだが、オリエンテーションでは、そんな話は全くでなかったのだ。しかしまあ、私がもっと真剣に編入にすることに意欲的であったならば、もっと早い段階で調べてその事実に気づいたはずだった。自分のやる気のなさが裏目に出た瞬間だった。


この瞬間から私の選択肢は就職しかなくなったのである。就職…。編入のことしか考えてなかった私には未知の領域だった。もうとっくに就活で動き回っている友人達をみていると、どうみても出遅れてるし、資料請求したところで、無理だろうと思った。そもそも就職といっても、いろんな職種もあるわけだ。どんな仕事に就きたいかと自分に問うても小説家になりたいしか考えられなかった。なら、小説家になっている人はどんな職業に就いていただろうかと考えた。


まず考えたのは、出版社に勤めることだった。しかし出版社はほとんどが東京にある。体力的に、自分は東京までは通えないだろうと、その当時の私は思っていた。ということで、選択肢からはずした。そして残るのは図書館司書ぐらいだった。本好きの人なら、一度は憧れる職種である。図書館司書というと、市立図書館とか県立図書館をまっさきに連想した。それってやっぱり公務員だよねということになり、自分の性格を考えると、おとなしい、地味、融通きかなそう、とかが思い当たり、民間よりかは公務員向きかもしれないと、その点でも自分的に納得がいったのである。ということで、私は図書館司書を目指すことになったのだ。

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