第39話 ミミがいなくなって

ミミがいなくなって、私はしばらくの間、ミミのことを思い出しては泣いて暮らしていた。ミミのいなくなった生活はがらんどうだった。ミミの座っていた畳を見ながら、ミミの大きな体がそこにはもうないのが、なんともいえなかった。


年が明けて短大に行くと私は短大でミミのことをふと思い出し、思わず泣いてしまった。今まで人前で泣くことなど一切なかった私だったが、泣かずにはいられなかったのだ。友人に「○○が泣いたところって初めて見た。よっぽど辛いんだねえ」と慰められた。


まだミミが亡くなったことが信じられずにぼんやりしているうちに自然界ではミミの存在は確実に無になったことを痛感する出来事があった。

それはうちの庭に猫が堂々と入り込むようになったことだ。ミミがいた時も庭をさっと通りすぎることがあったが、ミミの吠え声をきくとすぐさまいなくなった。けれどもミミがいなくなったことが分かると悠々とうちの庭を歩いて行くようになったのだ、しかもかなり頻繁にだ。


その時私はミミが無の存在へと変わっていくのを感じた。ミミの生きていた証はどんどん消えていって、何も残らないのだ。さーっと風が吹いてその風にのってミミは消えてしまったように思えた。それでも家の中にはミミの茶色の毛が残っていて、ミミのぬくもりがまだそこかしこにあるような気がした。


それでも二ヶ月も過ぎないうちに、ミミの毛を見かけることもなくなり、ミミの生きていた証はあっというまに消えていった。


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