第11話「秘密の花園」

小学4年から小学6年の間、私は本の虫と化していた。学校の図書室の本はあらかた読んでしまっていた。何冊読んだかまでは記憶してないが、貸し出しカードが4枚ぐらいになったのは覚えている。本をたくさん読んでいると、頭がよくなったような気がして、私はちょっと得意だった。貸し出しカードが増えると大人になったような気がした。


少し高慢ちきになりつつあった時に出会った本が「秘密の花園」である。主人公はかわいげのないやせっぽっちの女の子、メアリ・レノックスだ。彼女はいつも不機嫌で、すべてが自分の思い通りになってないとかんしゃくを怒すような女の子だ。外に出て他の子と遊んだこともない女の子で顔色は常に悪く、ちっとも子どもっぽくないのだ。

そんな女の子に私は自分を重ね合わせた。ああ、これって私みたいな子じゃない?いっつも一人で家にとじこもって本ばかり読んでる私は、まさにこの女の子みたいじゃない?と、かなり共感したのだ。


そうして読んでみると、彼女が住むことになったお屋敷には訳ありの十年も前から閉ざされた秘密のお庭があるという。その秘密のお庭に入ってみたいと思ったメアリは、熱心にお庭へ通じる扉と鍵を探し、ついにその秘密の花園へと足を踏み入れるのだ。十年も放置された庭は枯れていたが、彼女は庭仕事の得意なディコンという少年とその庭を蘇らせるのだ。外に出て、庭仕事にいそしむうちに、彼女は健康な身体へと変わっていく。そしてディコンやコリンといった少年達との交流から子供らしさを取り戻していく様がいきいきと描かれているのだ。


私も彼女のようにどちらかというと、不健康だったので、彼女の変わっていく様を読んで、自分もそうなれるかなあ?といった期待感があった。ちょっと庭仕事をやってみようか。そんな気分になったものである。でも結局庭仕事はせずに、私は夢想ばかりしていたが…。それでも外に行くと、何かが落ちていないかと探してみたりしたこともあった。そう、どこかへ通じる秘密の鍵が落ちていないかなあ?と思ったりしたものだ。そしてこの本を読んで、私は悟った。人は変われるのだということを。

 コマドリを見つけたら、それは自分だけの秘密の庭が開かれる合図かもしれない。えっ、コマドリって何?って思ったそこのあなた。秘密はこの「秘密の花園」の中に書かれています。是非読んでその秘密を解き明かしてください。

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