第33話 受験勉強その1
教育熱心な親じゃなかった私の両親だが、私が大学受験したいといえば、塾やら予備校やら、どこへでも行かせてくれるような親だった。しかし私といえば、できれば塾へは行きたくない派だった。なんというか、指名されて、前に出て解答したりするのが、恥ずかしくて嫌だったのだ。中学の時はそれがあって、いわゆる進学塾には行かなかった。代わりに近所のおじいちゃんが教えてくるような個人の人が開いている塾には行った。
そういえば、全然関係ないが、そこで教えてくれていたおじいちゃん先生に、私は将来海外に行っていろんなものを見て知りたいのだ、だからどうしても海外に行かなくちゃいけないみたいなことを言っていたのだが、そこのおじいちゃん先生に別に海外に行かなくても雑誌や本や写真で知ることはできるよと言われたのだ。その時の私は、ただただ、えーっと思っていたが、今の私ならその意味が分かる。もちろん、行かないよりかは行った方がいいかもしれないが、雑誌や本や写真、ネットでも十分知ることはできるのだ。あの当時で十分なお年だったので、戦争を体験され物のない時代で生活された人だったからこそ、出た言葉だったのではないかと思う。と、実際の勉強とは関係ないことまで教えてくださったような先生だった。
と、話が逸れたので話を戻すと、とにかく進学塾には行きたくなかったのである。そういうことから、高校1年で最初にやったことは、進研ゼミだった。なんだかいろんなシールやら、キャラクターやらがあったのだが、目がいったのは、そればっかりで、肝心の勉強はちっとも進まなかった。もともと三日坊主の血の持ち主である、ためるだけためると、結局すぐに止めてしまった。そのあとやったのが、名前は忘れてしまったが、全教科がセットで揃っているやたらに冊数の多い教材だった。
確か家にまで売り込みにきて、なんとなくその気になり、またやっぱり親に「あんたやるの?」ってきかれて、「うん、やる!」と威勢良く答えたのはいいが、実際きてみると、とにかく分厚くて、やる気をなくしたのである。それだってかなりの高額だったはずである。親には本当に申し訳ないなあと思うわけである。
それで私の気が済むかというとそうじゃないのだ。とりあえず世界史で受験しようと思っていた私だが、高校2年の授業では世界史がなくしかたなく日本史で受けるかと思っていたが、例のその冊数の多い教材に世界史が入っていたので、一応それで独自に勉強はした。学校では日本史を勉強し、家では世界史という、なんだか分からん勉強をしていた。なので、こっちをかじり、あっちをかじりと、ねずみみたいな勉強法だったので、受験に対応できるものでもなかった。そもそも西洋史で受験しようと思っていた私だが、学校の授業でやってくれていない世界史を独学で習得するというのは、とてもじゃないが無理だった。でも私の夢はエジプト文明とかやりたいんだけどなあと、あらぬ願いばかり考えていた。
そう考えると少しはその教材が役に立ったのかなあとも思うが、結局最後の最後まで悩んだ末、私は日本史で受けることにしたのだ。しかしその前に史学部の受験倍率というのが半端なかった。今もきっとこれくらいなのかもしれないが、60倍、70倍がざらだった。そもそもその倍率を考えたら、受かるわけないだろと思うのが普通なんだが、夢みる夢子ちゃんだったので、ひょっとしたら受かるかもしれない!いや、絶対受かるんだあ!と勝手に思い込んでいた。
しかしそんなに自分の偏差値よかったのかというと、全然である。中堅どころの大学ですら届かなそうな感じである。その一方で学校の成績だけはよかったので、推薦で受けることはできそうな感じではあった。
そういうこともあって、ちょっとがんばれば自分の行きたいところ行けるのではないかと、錯覚していたので高校三年の時は少しだけ予備校に行きたいと親に言って(予備校だったら、そうそう指名されることはないだろうと思って)行かせてもらった。行けばきっといい点とれるだろうと思っていたが、からっきし駄目だった。というか、予備校の講習というのはポイントをおさえるのが目的であって、もともと基礎のない人にとってみれば、ポイント言われてもなんだか分からないのである。行っても無駄といえば、無駄だったのだが、まあ受験生の気分は味わえたぐらいである。というか、費用出してる親にしてみれば、迷惑な話である。
しかし今にして思えば、親がお金がないから行かせられないとか、この教材を買ってあげられないとか、そういうのがあったら、自分は学習に費用を出してもらえなかったから、大学に行けるだけの学力が備わらず、それで失敗してしまったのだと、自分のせいではなく他人のせいにしてしまったかもしれないと思うのである。その点そういったことがなかった分、学力がないのは自分の学習時間が足りなかったり、理解度が足りなかったり、ねずみみたいな勉強の仕方をとったりと、中途半端がいけなかったのだと自分の勉強法に後悔することはあっても、親に文句を言うことは絶対ないわけである。むしろ、ここまでやってくださり、ありがとうございましたと感謝だけがあるばかりである。
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