第37話 ミミの足
ミミとの時間はこのままゆっくりと流れていくものと思っていた。何も変わらず、このまま延々と平穏に過ぎていくものだと私は思っていた。
短大1年の冬、それは起こった。ミミが玄関先の段差のところに足をひっかけてしまい、後ろ足が動かなくなってしまったのだ。最初はただの骨折じゃないかと思って、すぐに治るだろうと思っていた。けれどもミミの足は治らなかった。もう一人では歩けなくなってしまったのだ。
あんなに散歩が大好きだったのに、ミミは歩けなくなってしまったのだ。
散歩どころか、トイレに行くこともできず、私達がミミを抱き抱えて、トイレのところまで連れて行って用を足すのを手伝ってやった。トイレは外にあったので、一緒に外に出て、夜の空を眺めながら、ミミが用を足すのを待った。冬の空に瞬く星を見ながら、私はこの状態がいつまで続くのだろうかと思った。ミミの辛い姿を見るのは忍びなかった。
ミミと一緒に歩くことができなくなったけど、たまに母が車にミミをのせて近くの草原へと連れて行ってくれた。もちろん、ミミは歩けないけど、草原にミミをおいてやって、のんびりさせてやると、外に出れたことが嬉しいのだろう、なんだかとても嬉しそうだった。
ミミは人間みたいに足が痛いとは言わなかったけど、本当はとっても痛かったのだろうと思う。でもミミはいつも通りきょとんとしていた。何も言わず、穏やかな表情を浮かべていた。ミミの足が動かなくなってもミミはミミのままだった。おろおろしていたのは、むしろ私の方だったかもしれない。
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