第36話 短大

短大に受かった私はとても憂鬱だった。どこも受からなかったら、更に憂鬱だったのは確かだったが、やっぱり大学に行きたかったなあと、ため息をつきながら、空をぼんやりとながめることが多かった。


そうはいっても短大の入学式を迎え、友達もなんとなくでき、順風満帆であった。

大学、短大といえば、サークルに入るのが一般的であったが、私はどうもそんな気にならなかった。やっぱり4年大に行くことを考えた方がいいんじゃないだろうかと、そればかり気にしていて、のんきにサークル活動を楽しもうという気にはどうしてもなれなかった。

それでも乗馬サークルというものがあって、ちょっとのぞきに行ったりもしたが、あまりにもお金がかかりそうだったので、入るのをやめてしまった。


それもあったが、ミミのことも気になった。サークルやクラブに入ってしまうと、家に帰るのも遅いし、誰がミミの散歩をするのだろうと思ったのだ。私しかいないじゃないかということで、私はサークルに入るのをやめた。

しかし、少しは実のありそうなクラブに入った方がいいんじゃないかと思い、活動自体が少ししかないライブラリークラブというものに入った。何をするかというと、図書館司書の勉強をするという地味なクラブである。


『図書館司書』とは図書館のカウンターで本の貸し出し等の仕事をしている人達のことである。この短大を選んだのも図書館司書の資格がとれるからである。小説家になることが第一目標であったが、図書館司書になることは、大学を落ちた時点で第二目標ぐらいになっていた。ということで、実質的に為になりそうなライブラリークラブに入ったわけである。サークルみたいになんか楽しい行事があるわけでなく、ただひたすら勉強するクラブで、楽しいものとは縁遠かった。


じゃあ、その一方であんなに思いっきり書きたかった小説を書いていたのかというと、それもしていなかった。なんというか、4年に編入すべきかどうか迷っていて、ちっとも手につかなかったのだ。それもあったが、自分はやっぱり文章うまくないじゃんないかということにもぶち当たっていた。

それは高3の卒業間近だった時、今まで一度も人に作品を見せたことない私が、なぜか一人の友人に見せたのである。その時初めて感想をもらった。「えっ、この結末はないんじゃない」と。そう言われて、う~んとうなってしまった私。それは例のダークファンタジーであった。それで私は最初主人公を少女にしていたものを、少年へと変えたのである。そこから先、どう書こうか迷っていたが、やっぱり私小説書いても駄目なんじゃないかなあと、その友人の言葉を考えて立ち止まってしまったのである。


大学も落ち、小説家の夢も、有耶無耶になり、私はただなんとなく短大に通っていた。まさに腑抜けである。短大での授業を終えると、とっとと家に帰り、ミミと一緒に散歩する毎日だった。



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