第13話「天空の城ラピュタ」

初めて天空の城ラピュタの映画放映の広告を見た時は、なんともいえない不思議な気持ちになった。それはシータが空から降ってくるあの有名なシーンだった。

映画の宣伝文句は読まずにそのシーンの情景を見た瞬間、素敵なことが始まりそうな映画だと思った。ともかく少女が空から降りてくるワンシーンだけで、私の胸はどきどきして、この映画観たい!と思ったのだ。


じゃあ、映画館に観に行ったのかというと、実はそうではない。当時私は小学5年生だったが、アニメ映画を観に行きたいなんて言うのは、まだ幼い子供の言うことだと思っていたのだ。観たいけど、アニメ映画を観に行きたいなんて親に言うのは、なんだか恥ずかしくて恥ずかしくて言えなかったのだ。結局そのせいで、ラピュタを映画館で観るという貴重な体験を逃してしまった。今思えば、やはり一番最初の鑑賞は映画館で観るべきだったなあと思う。


そのあとラピュタを本当に目の当たりにするのは、ナウシカがTV放映されたあとだった。ということで小学6年の時よりもあとだったと思う。ナウシカは、あの天空の城ラピュタを作った人と同じ監督なのだということを知った私は、興味をそそられた。それもあったが、友達にものすごいナウシカ好きな子がいて、アニメージュという雑誌(ナウシカが連載されていた雑誌)を持ってきたりしていたので、知っていた。しかし実際読んだことはなかったので、ストーリー自体全然知らなかった。ただあのラピュタを作った人というのは、他にはどんな作品を作っているのだろうかと思ったのだ。


で、ナウシカをTV放映で観た時、私は衝撃が走った。なんだこの映画は!と。とにかく虫が巨大でしかも動き方がまるで生きているみたいだ。ものすごいい迫力と、鮮やかな色使いに圧倒され、アニメと言わずに私は映画といった。今までのアニメとは明らかに違い、これはアニメと呼んじゃいけない、映画なのだと思った。ストーリーも感動的なラストだったし、これはすごいものを観てしまったあ~と武者震いしたのを覚えている。


そんなナウシカのTV放映後から1年ぐらい経ってからだと思う。あのラピュタがTVで放映されたのだ。私は気合いを入れて冒頭から観た。最初の出だしから始まる冒険活劇。そしてあのシータが空から降ってきたシーンは息が止まるかと思うほど食い入るように見つめた。飛行石っていったいなんなんだ。まさにウキウキするようなファンタジー要素が組み込まれた冒険物語は、私の心を高鳴らせた。ナウシカと比べると一般的なアニメに近い話だったが、しかしその王道を行くファンタジー冒険活劇が、私にはとても身近に感じられたのだ。そしてラピュタに根付いた巨大な木々の様子を見て、鳥肌が立った。もう本当にぶるぶるしてしまうぐらいの大きさと細やかな自然の描き方に私は目を奪われた。

そしてラストでシータが言う土を離れてはいけない!という言葉がずしんとくるのだ。私は本当にそうだ、そうだ!と思いつつ、映画の最後に流れる君をのせてが流れると、感動して涙を流した。

そして心底残念がった。このスケールの映画ならば、やっぱり映画館で見るべきだったと。


そんなわけで、それ以降ジブリ映画はほとんど必ず映画館で観るようになった。ゲド戦記に関してだけは評判が悪かったので、(ことのほか、ゲド戦記の原作本は大好きな私としてはイメージ壊されたくなかったので)観に行かなかったが、逃してはいけないと観に行くようになった。


けれども私の中では、ジブリ映画と言えば、天空の城ラピュタなのだ。

胸躍るような冒険活劇と、おとぎ話のような不思議さが入り交じった天空の城ラピュタは今でも私の中では飛行石のように輝いている。

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