第16話 ミミと雷と花火

ミミは雷の音が大嫌いだった。仔犬の時期を過ぎて、巨大な肥満体になってからも、それは同じだった。雷がごろごろ鳴り出すと、それまで私の方に見向きもしなかったミミがささっと私の方に来て、ぴったりと体ごと寄り添ってくるのだ。よほど怖いのか怯えた表情をしている。


いつもだったら、私がミミのそばに行って、ミミの耳をいじったりして遊ぶのだが、ミミはまたおまえかと言わんばかりの表情をして、知らんふりを決め込み、見向きもしないのだ。

しかし雷が鳴り出すと、私が動くと一緒に動くし、とにかくひっついてくるのだ。ミミには悪いが、思わず笑ってしまうのである。まあでも、ミミにとっては心底不安だったのだろうと思う。


雷もそんなだったが、打ち上げ花火は更にミミの恐怖をあおった。地元で花火大会があるのだが、毎年毎年ミミは怖がっていた。腹の底から鳴り響くような、あのドーン!という音が不気味に聞こえたのだろう。ミミはしっぽを垂れて怯えているのだ。ミミにはなぜ音が鳴っているのか分からないから、余計怖かったに違いない。


家の側に歩道橋があり、そこから花火が見えて、ミミも連れて家族で花火を見に行ったりしたが、ミミの目にはこの鮮やかな花火の色は見えないのだなあと思った。見えていたら、ミミは少しは違った反応を示したかもしれないが、やっぱり理解できないんだろうなあと思った。

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