七紙野くに

今年になってから結構な数の作品を読んで回ったが、この様な話は初めてだ。いくつかの部分に区切ってみると、物語として成り立っているような気がする。あくまで気がする、だ。で、全体を通すと…続きを読む

ある画家を取り巻く二人の女性のストーリー。美しく繊細な情景描写により画家が筆を取るシーンなどが目に浮かぶ。しかし、それに心地好く溺れていると良い意味での罠にかかる。その罠の表現がま…続きを読む

描かれるのは抗うことを許されない現実。あぁ、なんだかありそうだな、私もそうだな、と感じるところが怖くもあり優しくもあるストーリーです。ある程度、冷静さを保って紡がれる文章も良い。イ…続きを読む

「少女」と老人の軽妙な会話で物語が展開されます。その会話が柔らかで、どこか暖かく、春の風を運んできそう。風は桜の葉の香りを含んでいます。仄かな優しさを連れてくるストーリー、如何です…続きを読む

希薄な人間関係を好む主人公が老人と組む。二人の出会いまでは若干、硬い印象を醸すストーリーは後半、ダイナミックに「娯楽」に切り替わります。全体を通して硬軟、押し引き、強弱、等のブレン…続きを読む

年の差カップルのどこか暖かく優しい粋な会話がメイン。「僕」目線で語られるが僕の瞳にはいつも安心が映っている。小さな幸せ、微笑みが欲しい方、短時間のトリップをどうぞ。

ライトな感覚のブラックです。途中、伝説を語る部分で文体が優しく丁寧になるのですが、それが、かえって黒い香りを増します。良い意味で恐ろしいというほどでもないので、ちょっとしたブレーク…続きを読む

一人の命を取り巻き、残される者、残された者の心理を追うストーリーです。私は以前、老人が亡くなる話を書いたことがあり、その際、ある人から「人、殺したらあかんわー」と言われました。簡単…続きを読む

森の中で湧いた水が雨の都会に流れる。ちょっと直線的に流れすぎな気もしないではないが透き通っていて美しいせせらぎ。そのせせらぎが奏でる音を紡いだストーリー。かなり比喩的になりましたが…続きを読む

ストーリーはタイトル通りコールドスリープから覚めた主人公の家路。途中、スピード感あるエンターテインメントとなっているのだが気になったのはエンディングだ。ネタバレになるので詳しくは書…続きを読む

清々しいほど単純で馬鹿らしい。勿論とても良い意味で。因みにもっと馬鹿な私はこの話で男女を入れ換えてみたらどうだろう、と、想像した。無理。絶対無理。というわけで、巧く状況、配役を利用…続きを読む

現代、現在のSFとして突拍子もない設定から始まるストーリー。だがその内容はスペクタクルでもなければ感動的でもない。では面白くないのか、というと違う。常識ではあり得ない状況で「日常」…続きを読む

タイトルに惹かれ軽い気持ちで開きました。期待通りライトなタッチで軽妙な会話が続きます。が、メインキャラクターの二人、面白い。センパイをなんとか会話に引き込もうとする後輩と、その後輩…続きを読む

ストーリーはどこか詩的で優しさを伴った文章で描かれています。読み終わるまでずっと心を揺さぶられ続けたように思いますが、その揺れを具体的に表現できません。最後は希望に満ちているように…続きを読む

軽いタッチの文章がマシンガンの如く流れ込んできて非常に速く読めます。それでいて内容はしっかりと伝わり残ります。これはもう作者の才能というほかありません。そのライトな雰囲気から序盤は…続きを読む

コンテストに落ち続けるアマチュア小説家への逆の立場の「ファン」からのメッセージがメイン。なのだが、そのメッセージが自分に対して発せられているように感じる。作者は誰とは特定しない読者…続きを読む

読んでいる間ずっと、舞台の工場によくある廃墟の写真を重ねていた。そして生産、捌く、初期化といった表現が重くのしかかるような気がした。結末もヘビーだ。もしかしたら私はこのストーリーを…続きを読む

主人公はある日、いつからか庭にある蓋を開ける。そこにはどこまでも深い穴が有り、穴の反対側は青空だった。当然、欲求に駆られる。何か落としたい、この穴に投げ入れたい。誰もが持つような心…続きを読む

黒猫と男がチェスを指す。男が負ける度に黒猫はアッサリと盤面を戻す。しかも男が戻したいと言った場面まで。繰り返される勝負。男が勝つ時は訪れるのか。ネタバレになるのでこれ以上、書けませ…続きを読む

サーバという仮想空間で生まれた生命、人工知能が現実の世界へ踏み出す。リアルに嫌気が差し仮想空間へ逃避、移住した者の身体を借りて。非常に細かく丁寧に設定、描写されているので結末に期待…続きを読む

事故で耳が聞こえなくなった語り手によって話は進行する。その描写はある種、淡々としていて取り乱す様子も激しい感情の起伏もなく、少しだけ変わった自分を取り巻く日常を楽しんでいるようにさ…続きを読む

深夜に女の子が肉まんを買いにいくだけの話。なのだが、その描き方が絶妙である。いくつかの小さな出来事、風景の連続が少女、女子高生目線で語られる。それは変に感情的にならず、淡々としてい…続きを読む

「僕」が淡々とある日の時間を語るストーリーなのだが、抑えられた感情が紡ぐ距離感が切なく心地好い。軽妙な会話を楽しむのもいい。行間に隠された想いに浸るのもいい。どちらにしても最後には…続きを読む

マスクを装着することにより僅かな自信を得た主人公。だが、いきなり異性に声をかけられるほどの勇気はなかった。そんな彼が気になるも毎朝、擦れ違うマスクの娘。そして訪れたある朝、自信も勇…続きを読む

味気ない人工肉にデータが「本物」の彩りを与える世界。その中で女を繋ぎ止めるために彩りではない本物の肉を追う男。手を尽くした彼が見た最後のリアルとは。 若干、長いですが、情景描写が巧…続きを読む

売れないストリートミュージシャンは雪の日に天使の歌声を聞いた。ミュージシャンの「彼」と天使の「彼女」の儚くも美しいストーリー。優しさを伴った少しぶっきらぼうな文体、表現がよい。この…続きを読む

皆さん、いつの夢でもいい、今でも細部まで覚えていて文章で描写することが出来る夢を見たことはあるでしょうか? 私は数は少ないですがあります。ありますが言葉で表現するのが難しい独特の感…続きを読む

読み手の網膜を焼くのは黒と赤だけで塗り潰された絵。その絵の主は、ありのままで接してくれる「友」を得て変わる。ネタバレになるのでこれ以上は書けませんが、ちょっと特殊な環境、生い立ちに…続きを読む

確かにな、と俺は思った。 そしてウィットという言葉が気になったのでネットで探してみた。 気が利いた文章や会話を紡ぎ出す才能らしい。 それから何度かマックで彼女に逢った。 逢ったとい…続きを読む

淡々と語られる、異国に雪が降る日の情景、僕の世界、僕の周りの世界。どれも小さなものかも知れないが、ほんのりと暖かく大切なものの集まり。少しの時間があるなら手に取ってみてはどうでしょ…続きを読む

荒廃した戦場での奇跡の一夜を描いたストーリー。読む者を惹き込む情景描写が素晴らしい。短く美しい人間の世界をどうぞ。

少し粋で優しい雰囲気で始まって、素直な感情が言葉となっていく短いハートウォーミングストーリー。三分、時間があるならホットは如何でしょう。

物語を語るぼく。それはサンタクロースの存在に疑問を持つこどもだった。その疑問をストレートにぶつけられた父親は「ぼく」の前では決して開けてはならない封筒を取り出す。そこに書かれいたの…続きを読む

番外編を除いたレビューになります。核戦争の中で生物兵器として造られ、仕立て上げられた者を中心に回るストーリーで若干、センシティブな描写もあります。良く言えば飾りのない、悪く言えば配…続きを読む

ストレートな正統派ホラーです。とにかく表現がリアルで怖い。短いので内容については触れません。その目で確かめてください。次の通勤、通学、お出かけ時には思い出さないでくださいね。

告白したら「昔は好きだったが今は付き合っている人がいる」と断られた主人公。気が付くと十年前に戻っていたので、この時点なら俺のことが好きで付き合っている彼もいないだろうと告白すること…続きを読む

暗殺者として育った娘が会ったこともない高位の者と意図せず結婚する、という設定に、最初は些か無理があるのはないかと危惧しました。しかし、それは無用の心配で、非常に緻密に作り込まれハイ…続きを読む

流れるような美しい文章に主人公の葛藤などの想いが落とし込まれています。各話が丁度よい文字数で歯切れ良くリズムを刻むので心地好く読めます。時折、音楽用語も挟まれますが知らなくても全体…続きを読む

声を失った主人公を中心として登場人物の微妙な心の揺れ、想いが作者独特の優しく軽いタッチの文体で描かれます。タッチは軽いのですが、時に内容は重くなり、そこも読者としては見逃せない部分…続きを読む

人は個々に違う。そこに流れる感情も時間も。ここには平坦な心も激情もあるが、全てが公平に描かれる。そしてそれは短い言葉では表現できない魅力を持つ。登場するキャラクターは作者が手掛ける…続きを読む

人生の終局に差し掛かったメンバー達が楽器、片手に駆け抜けるストーリー。短く表現すると年寄りがバンドを組む話なのだが、序盤から、ぶっ飛ばし、読んでいる者の心を鷲掴みにする。またセンス…続きを読む

音楽の道で折れ、それでもピアノに関わり続ける男性。そんな彼が何気なく弾いたブラームスに魅了された小学生がいた。束の間の師弟関係が紡ぎ出す終幕は多分、現実では夢なんだろう。でも、あっ…続きを読む

作者は主人公二人が持つ繊細な心理、そしてその動きを丁寧に描写する。 そこには優しさがあり、読者をも柔らかく包む。 何かに疲れたら、ここを訪れると良いかもしれない。 劇的な展開など無…続きを読む

人により創られ人を管理、支配するようになった人工知能。 そのスーパーAIの「企み」を知り立ち向かう独りの人類。 トラップにトラップを仕掛けるようなストーリー展開が「巧い」と感じさ…続きを読む