音を失った主人公が淡々と日常を語る

事故で耳が聞こえなくなった語り手によって話は進行する。その描写はある種、淡々としていて取り乱す様子も激しい感情の起伏もなく、少しだけ変わった自分を取り巻く日常を楽しんでいるようにさえ思わせる。これが良い。筆者のセンスと力量を感じる。最後に飛んでもない謎というか、オチが仕掛けられるのだが、それもまた一興である。紙の小説を読みたい方に薦めたい一品。