この作品は5,300字弱の短編で、気軽に読める。
誰もが感じる事、誰もが考える事、誰もが通る道を、子供の目線から描いており、子供らしさを表現するために漢字をひらく(ひらがなで書く)などの工夫が見られる。それが返って読みにくさに繋がっている面もあるが、短編なので我慢して読み進めた。
現代劇の中にほんのりファンタジーやらミステリーっぽい雰囲気を醸し出し、正直な所、半分ぐらいでオチが読めた。
けれども、おそらくそれも作者の想定内では無いだろうか。
創作には「予定調和」とか「様式美」というものがある。とりわけ、日本人はコレが好きだったりする。水戸黄門などはこの最たるモノだろう。誰も「有るべき展開」以外のオチを期待したりしない。
要は、ゴールに至る過程や流れの美しさを見ているのだ。
この作品も、そういうモノだと思う。
個人的に、小説で重要なのは読後感だと思っている。作品や章、話などでのまとまりというか、オチというか。
小説で特に重要なのは、最後の締めの文。コレが素晴らしければ、凡作も秀作になり得る。逆に言うと締めが平凡だと名作も読後感がスッキリしない。
本作はおそらく、最後の一文は割と早い段階で決まっていたのではないだろうか。そこに至るストーリーが、過不足なく展開されていく。
思った通りに話が展開し、予想通りのオチで、最後の一文でほっこりする。
布団の中で読めば、暖かな気持ちで眠りにつく事が出来るだろう。
ただし、内容が内容なので、可能であれば12月の1日~24日に読むことをお勧めする。