概要
ディストピア飯、サイバーパンク、ファム・ファタル
23世紀。人口爆発に対処できなくなった人類は、効率的な食料供給を追い求めるあまり、食事という文化を解体した。料理という言葉の意味は、供給される栄養価を調整された無味無臭のキャンバス素材の味を決定するプログラムの選択を意味するようになった。そんな未来のスリランカで生まれたときからスレイヴ階級として育ったアイザックは、スリランカの田舎のゴミ山町で、恋人のリンダと暮らしていた。それなりに満たされていた生活はしかし、リンダが「ホンモノの味を食べたい」と言い始めたことで破綻へと向かい始める。アイザックは破綻を予期しながらも、リンダを満足させるため、法律を犯してでも「ホンモノの味」を手に入れようと奔走する。
おすすめレビュー
新着おすすめレビュー
- ★★★ Excellent!!!僕達がまだホンモノを味わえるうちに。
寿司は魚を食べているのではなく、醤油を食べているのだと誰かが言った。
焼き肉は肉ではなくタレを食べているのだと言ったら暴論だろうか。暴論かもしれない。忘れてくれ。
どうやら味覚というものは僕達が考えているよりもずっと曖昧で適当なものらしい。10000個あるという味蕾は甘味、辛味、塩味、苦味、うま味を感知する程度で、出汁の風味や肉の美味しさを味わっているのは、口内の触覚や口と繋がる嗅覚、視覚というものに依存している。僕達の脳は食事ひとつに複数の知覚を動員している。そういう意味では、僕達の食事は最初から合成食品なのだ。
複数の知覚に支えられているということは、それだけ脳を騙しやすいとい…続きを読む